1985年に、 NTT が国内初のポータブル電話機「ショルダーフォン」を発売。ショルダーフォンは現在の携帯電話とは似ても似つかぬ形状で、鞄のように肩からかける必要があった。重量は3キロもあり、「携帯」というよりは「運搬可能な」電話機という位置付けだったようだ。
そして1987年4月に携帯電話サービスが開始される。その携帯電話1号機「TZ-802型」でもまだ重量は900グラムあり、手軽なものではなかった。
1991年4月には、超小型携帯電話「ムーバ」が発売し、携帯電話は徐々に小型化していく。1998年には「小さい」「軽い」「長時間使用が可能」を特徴とするPHSが登場。「ピッチ」の愛称で、学生を中心に人気を博した。
2000年台になると携帯電話は、一気にわたしたちの身近なものとなっていく。
そして2000年代後半からは大きな転機を迎える。それまで主流であった折りたたみ式の「ガラケー」から、大型ディスプレイとタッチパネルを備えた「スマートフォン」への進化だ。2016年には、世界市場に出回っている携帯電話の55%以上がスマートフォンであるとの調査結果が出ている。国内でも既に、従来のガラケーを製造するメーカーはほとんどなくなっている。

画像はXperia (クリエイティブ・コモンズ)
「スマートフォン」はWebの閲覧、SNS の利用、カメラ、無線通信用ルーター(テザリング)、小型ゲーム機など電話以外の用途で活躍するシーンが急増していることも見逃せない。端末自体の処理能力も年々上がっており、一昔前のPC上の処理能力を持つ端末が増えている。今やITを使ったコミュニケーションの主役は、スマートフォンと言っても過言ではない。
■固定電話やファクシミリは意外に変化がない? 携帯電話は激変
ここまで、固定電話、ファクシミリ、携帯電話の進化の歴史を見てきた。将来的にはどうなるのだろうか。
NTT東西が提唱する固定電話網のIP化は、2020年度を目処に開始されると言われている。
既に海外の企業では、Eメールやビジネスチャットの利用が一般的であり、固定電話やファクシミリでのコミュニケーションは少数派になっている。 ただし日本では印鑑の文化が強いため、引き続きファクシミリに対する需要は続くのではないだろうか。
一方、携帯電話は処理性能やデータ通信の速度が飛躍的に向上し、さらに小型化していくと考えられる。特にスマートフォンは、頭脳にあたるARM系CPUが急速に進化しており、AIやIoTと言った新興分野との親和性も高い。今後スマートフォンは、単なるコミュニケーション機器から、人間の思考や行動をサポートするアシスタントへと進化していくのではないだろうか。
形状も徐々にウェアラブル化(身に着けるタイプ)していくことが予想され、 肉体の一部のように身にまとうタイプが主流になるかもしれない。
通信機器は、人間の根源的な欲求である「他者とのコミュニケーション」を支えるもの。固定電話やファクシミリといった比較的アナログな技術も、引き続き「設備」として使用されていくだろう。
一方、スマートフォンは、AI・IoTといった先端技術と融和しながら小型高性能化が進み、徐々に「肉体の一部」に近づいている。通信機器が二極化する中で、人間が場所や時間といった制約から完全に解放される日もそう遠くはないのかもしれない。