■愉快なポケモントレインの旅

 ポケモンGOの流行は一段落したけれど、横浜でポケモンイベントが今夏も開催されるなどポケモン人気は根強いものがある。JR東日本が三陸の大船渡線で震災復興支援の一環として運行しているポケモントレイン気仙沼号も、2017年に車両のリニューアルを行い、継続して一ノ関駅と気仙沼駅の間を、週末を中心に走っている。

最近、乗車する機会があったのでレポートしてみたい。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅の画像はこちら >>
気仙沼駅で発車を待つポケモントレイン

 諸般の事情から気仙沼発一ノ関行きという午後の便に乗車するため、久しぶりに気仙沼駅を訪れた。駅構内の半分はBRTというJRが運行するバス乗り場に変身していた。駅舎側の旧気仙沼線ホーム、その向かいの大船渡線の大船渡、盛方面行きもBRT乗り場になっていて線路はなく、舗装された道路と化している。賑わっているとはいえ、線路がないと寂しく感じる。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
ポケモントレインのサイドビュー.

 道路を横断して左手にかなり歩いたところに停まっていたのが、黄色を基調とした2両編成のディーゼルカー。これから乗車するポケモントレイン気仙沼号一ノ関行きである。後ろの車両から乗車、というよりも先頭の車両にはホームから直接乗車することはできなかった。なぜなら、座席はすべて後ろの車両にあり、先頭車両はこどもが車内で遊ぶためのプレイルームだからだ。発車するまでは、あらかじめ指定された席にとどまっているようにとのアナウンスがあった。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
ポケモントレインの座席■車内のいたるところにポケモンが!

 車内はいたるところにポケモン、とくにピカチュウのイラストがそこかしこに描かれている。シートや窓下の壁、荷棚脇のスペース、ドアなど様々な場所にはっきりとしたイラストから、よく見ないと分からないようなシルエットのような図柄まであり、賑やかで楽しい。

当然ながら親子連れが多いけれど、若いカップルや、男性二人連れ、おじさんの一人旅など乗客はバラエティに富んでいる。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
ポケモントレインのプレイルーム

 定刻に発車。ポケモンの音楽が流れ、愉快なアナウンスとともに旅が始まった。先頭車両のプレイルームがオープンしたとのことで、こどもたちが一斉に先頭車へ向けてかけ出した。一方、女性アテンダントさんが乗車記念品を配ってまわる。袋をあけてみると、ピカチュウの缶バッジ、乗車記念証、シールセット、それに「おもいでノート」が入っていた。「おもいでノート」には、車内の案内図、スタンプ押印欄があり、すでに気仙沼駅のものが押してあった。途中停車駅2つと終点の一ノ関駅の欄があり、それは停車時間中に押すことになる。そのため、途中駅の停車時間がかなり長く取ってあるのだ。

 とりあえず、先頭車両をのぞいてみた。すでにこどもたちが賑やかに走りまわっている。ピカチュウのぬいぐるみの小さいものを抱きかかえたり、大きなものに触ったりと、見ているだけで目が回りそうだ。

列車は、気仙沼の市街地を離れ、大川に沿って丘陵地帯を走っている。

■駅名標はピカチュウのイラスト入り

 10分少々で、最初の停車駅折壁(おりかべ)に到着し、7分停車する。駅名標はピカチュウのイラスト入りのもので、これはポケモントレインの停車駅すべてに共通だ。ホームには、西洋庭園でよく見かけるトピアリーという低木を刈り込んで造った動物が2つ並んでいる。よくみるとピカチュウとツタージャの形をしている。なかなか芸が細かい。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
折壁駅の楽しい駅名標

 発車後、10分程で次の停車駅千厩(せんまや)に到着。ここでは13分も停車する。駅舎内に置いてあるポケモンのスタンプを押しに行けるようにとの配慮からだ。列車が停車のために徐行しだすと、プレイルームで遊んでいたこどもたちは一斉に自分の席に戻り、「おもいでノート」を持ってドアの前で待機する。どうせこどもと競ったところで列をつくることになるので、駅舎内へ行くのは後回しにして、無人のプレイルームで車内のインテリアをじっくりと撮影することにした。

 停車後、車外に出て、ホームの駅名標や列車の外観を撮影してから駅舎内に向かうと、こどもたちと入れ替わりにのんびりとスタンプを押すことができた。

ただし、急に雲行きが怪しくなってきたので、小走りに車内に戻ると、突然雨が降り出して来た。何と言うタイミングだろう。

 発車時間が来て、列車はかなりの土砂降りの中を動き出した。千厩を出ると、列車は大きく右にカーブして、北へ進路を変える。その後、四角形の三辺をたどるように大回りして一ノ関をめざす。鉄道建設時に、沿線から外れそうになった町村が無理やりルートを捻じ曲げて自分たちの集落を通すようにしたため、ナベヅルのような線形になったと言われている。「我田引鉄」の悪しき例とやり玉に挙げられる区間だ。それ以外も、地形のためもあって地図を見るとごつごつした線形で、竜の背中みたいだということでドラゴンレールの愛称が付いている。これは、なかなか秀逸な命名だと思う。

■摺沢(すりさわ)駅~終点の一ノ関駅

 北上しているうちに雨はあっけなく上がり日が差してきた。10分経って摺沢(すりさわ)駅に着いたときには、何事もなかったかのようにみんなホームに降り立った。ここでも13分停まって、こどもたちは再び駅舎内へスタンプを押しに走りだしていく。

 ホームには、カラフルなピカチュウとケルディオの人形が置いてあり、その前で記念写真を撮っている親子連れが目についた。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
猊鼻渓駅に停車中のポケモントレイン

 摺沢駅あたりからは再び西へ向かい、次の猊鼻渓駅付近からは南下する。猊鼻渓駅は渓谷の最寄り駅で、この駅から観光帰りかと思われる人たちが何人も乗ってきた。アジア系の外国人も数名いた。指定券を持っていない人もいたようだが空席があったので、事なきを得たようだ。私の隣は空席のままだったが、あとはほぼ満席になったようである。大人ばかりだったので、こどもが目についた車内の雰囲気はやや変化した気もする。

 西日が車内へ入りこむようになり、すぐ次の陸中松川駅でホームに降りてみたものの、あとに続く人はいなかった。スタンプがあるわけではなく、ポケモンの置物もなく、3分停車だったので、すぐに車内へ戻った。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
ポケモントレインの配付物と購入したお菓子

 このあとは時刻表上では一ノ関まで停車駅はないのだが、一つ手前の真滝駅では列車行き違いのため何分か停車した。ドアを開けるとこどもがホーム上をうろうろして危険だからだろう。ドアを閉めたままの運転停車だった。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
ポケモントレインの配付物と購入したお菓子

 終点の一ノ関駅では東北新幹線への乗換時間が10分少々しかなかった。一ノ関駅のポケモンスタンプは2ヶ所あるとのことだったが、在来線改札付近のものは押すのを断念して、新幹線乗換改札口のものだけを押した。コンプリートできなかったのは残念だったが致し方ない。それでも最初から押印されていた気仙沼駅のものをはじめ、4駅すべては何とか押せたので良しとしよう。

駅名標にピカチュウ!愉快なポケモントレインの旅
一ノ関駅新幹線ホームからポケモントレインをお見送り

 東京行きの「はやぶさ」到着直前に、新幹線ホームからポケモントレインが車庫に引きあげていくのを見送って一ノ関駅を後にした。

編集部おすすめ