■手持ち花火の代表「ススキ花火」

 夜空に輝く打ち上げ花火もいいが、家族とともに手持ち花火に興じるのも趣がある。夕涼みも兼ねて庭で遊ぶ子どもの姿を見ると、久しぶりにやってみたくなるものだ。

そんな手持ち花火には、じつにたくさんの種類がある。

 一般的なタイプといえば、火薬が紙に包まれた「ススキ花火」だろう。カラフルな火花が勢いよく噴き出し、夏の夜を盛り上げてくれる。複数の色が噴出するものや、色の変化を楽しめるものなど、昔と比べるとかなり進化しているようだ。

 このススキ花火の先端には、「花びら紙」といわれるひらひらした薄紙がついている。これを着火剤として活用したくなるものだが、じつは点火前にこれをちぎっておくのが正しい遊び方だという。花びら紙をつけたままでも遊べなくはないが、途中で火が消えてしまうことがあるのだとか。

 火薬がむきだしになっているタイプは、「スパークラー(スパーク花火)」という。火花が前方に噴き出すススキ花火に対し、こちらは四方八方に飛び散るのが特徴だ。その様子は雪の結晶に例えられることが多い。煙が苦手なら、持ち手が針金になっているものを選ぶといいそうだ。

 絵形花火は、持ち手が大きく、そこにキャラクターなどが描かれたものをいう。

持ち手の形はバリエーションが豊かで、鉄砲のような形をしているものもあれば、動物の形をしたものもある。ほかの花火と比べるとすぐに終わってしまう印象だが、子どものころは特別感を覚え、いとこたちと取り合いになったものだ。 

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 ■牡丹、菊、柳…線香花火の輝きには名前がついている

 大人になると、こうした手持ち花火をやる機会はグッと減ってしまう。子どもに付き合う程度で、身近に小さな子がいないと遊ぶ機会はほとんどないかもしれない。しかし、線香花火の美しさは、大人になった今こそ実感できるのではないだろうか。

 火をつけると先端が玉のようになり、ジリジリと音を立てる。そして、勢いよく火花を散らし、最後は細い線を描くように灯をともす。途中で玉が落ちても火花を散らすことがあり、そのはかなくも必死に輝く様はまるで人生のようだといわれることも。

 線香花火の輝きには、段階に応じて名前がつけられていることをご存じだろうか。最初の玉のような状態は「牡丹」、そこから元気よく火花を散らす「松葉」となり、勢いが落ち着いてきた頃合いを「柳」、細い火花は「菊」に例えられている。日本情緒が感じられる表現を知ると、花火の観方が変わってくるはずだ。

 誰が一番長く花火を楽しめるか競争するのも、線香花火の醍醐味である。

できるだけ長持ちさせるには、火薬が詰まったところの少し上をひねってから着火。そして、真ん中より少し上を持ち、斜めに傾けるといいそうだ。この方法を教わり試したところ、安定することもあって玉が落ちることはなくなった。

 いまでは戸建て住宅でも、近隣住民に配慮して庭でも花火で遊びづらくなってきた。「花火禁止」という立札がある公園も多い。ルールやマナーを守ることは大事だけれど、花火で遊べる場所が減っているのは寂しく感じるものである。

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