■違いは製法
「湯波」と「湯葉」の違いは文字だけじゃなかった!の画像はこちら >>
 

 豆乳を加熱すると、表面に薄い膜ができる。これが精進料理などに用いられる「ゆば」だ。

天台宗の開祖である最澄が、中国から仏教とともに伝えたという説がある。滋味あふれる味わいで、近年では外国人観光客からの評価も高い。

 このゆばを漢字にすると、「湯葉」と表記するのが一般的だ。京都をはじめとするかつての門前町では名物として提供することが多く、看板に湯葉という文字が掲げられているのを目にしたことがあるのではないだろうか。しかし、栃木県日光市では「湯波」と書く。この2つに違いはあるのか。

 どちらも豆乳から作られるが、違いは製法にある。湯葉は端から一重にすくい上げるので、繊細な食感を楽しめる。一方、湯波は中央に串などを通し、二重になるように引き上げるのが特徴だ。湯葉と比べると厚みと弾力があり、食べ応えがある。一見しただけではわかりにくいが、食べ比べるとその違いが明らかになるだろう。

 現在では、湯葉は高級食材として定着しているが、日光では家庭でも食すことが多い。

刺身で食べる生ゆばは一般的ではなく、スーパーでも購入できる揚巻湯波が食卓に並んでいたものだ。

 この揚巻湯波は、生ゆばを重ねながら棒状に巻き、輪切りにして揚げたものだ。食べる前にはお湯で煮ることで油抜きし、甘辛いダシで煮る。野菜などと一緒に煮ることもある。ダシの旨みが湯波に入り、噛むほどに旨みが広がっていく。

 

 日光で育った筆者は、「ゆば」といえばこの揚巻湯波のことだと思っていた。日光にも生ゆばなどはあるが、家庭で食べる機会はないため、恥ずかしながらテレビ番組で見るまで知らなかったのだ。それでも、ゆば=湯波と認識していたため、修学旅行で京都を訪れた際に湯葉という表記に違和感を覚えた。さらに、湯葉のほうが一般的だと知ったときはショックを受けた。

 全国的にいえば、「湯波」はマイナーな存在かもしれないが、豆腐の旨みがたっぷり感じられ、添え物ではなく主役としての存在感がある。ぜひ当地でその味を実感してほしい。

 本誌10月号では、「鉄道って、おもしろい」という特集を展開。

東京から日光へ向かう際に便利な東武鉄道のスペーシアも掲載している。これから紅葉が見ごろを迎える日光へは、浅草から2時間弱。日帰りも可能なので、ぜひ多くの人に訪れてほしいと、元地元民としては思うのであった。

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