
「テレビから干される覚悟で書いた」と話すのは民主党参議院議員の鈴木寛氏だ。そういった覚悟があるだけに、本書に出てくるエピソードは考えさせられる。
例えば、2011年3月の福島第一原発事故直後に文部科学省で副大臣をしていた鈴木氏は、テレビメディアにとある要望をする。
福島第一原発事故直後から、文科省は福島県を中心とした放射線量のモニタリングの数値を、最高値のほかに中間値、最低値も公表していた。ところが、テレビメディアが取り上げるのは水素爆発の映像と最高値のみ。これでは「福島には近寄らないほうがいい」という風評被害が広がってしまう。燃料を運ぶタンクローリーも薬を運ぶMRも福島県内を避けるようになり、物流がストップ。二次被害を生み出してしまうという懸念から、鈴木氏はテレビメディアに対して、風評被害を加速させる映像ばかり流さないようにしてほしい。せめてデータを公表する際には高い数値ばかりではなく、安全な数値も出してほしいという要望を出したのだ。
しかし、あるテレビ局のプロデューサーからは耳を疑うような返事が返ってきたのだ。
「水素爆発の映像のほうが数字(視聴率)が取れる。繰り返し流していても数字が取れる」といい、テレビは最高値だけの放送を継続し、燃料や薬品が行き渡らないために二次被害が続出した。