「一応、アプリについて説明はしますが、無料だからとさらっと話して終わり。きちんと了解を得てはいませんでした」(同)
実は、以前にも同じことを行い、客からクレームを受けたことがあったという。それからしばらくはアプリを店側でインストールすることはしていなかったが、ほとぼりが冷めた頃にまた復活したというのだ。勝手にアプリをインストールすることは、プライバシーの観点からも問題だろう。そのためAさんはたびたび、社員に疑問を呈したという。その結果、ますますAさんへの風当たりは強まり、職場を追われることとなった。
「今思えば、社員も悪気があったわけじゃないと思います。しかし店舗ごとのノルマも達成しなければいけない、そのためには少々のことには目をつぶらなければいけないし、ストレスもたまっていたのでしょう。その時、ちょうど怒鳴りやすい場所に私がいた、ということだったのかもしれません」(同)
そう言うと、Aさんは弱く笑った。
会社の経営方針や事業戦略が当たり、シェアを伸ばしたソフトバンク。しかし実際に店頭に立ち、スマホを販売する一人ひとりのスタッフは、常にプレッシャーにさらされ続けている。そのしわ寄せが派遣社員のように社会的立場の弱いところに行くとすれば、見逃してはならない問題だ。
電波状況の改善なども急務だろう。しかし携帯電話販売の前線に立つスタッフの労働状況の改善こそ、早急に行わなければならない課題ではないだろうか。
(文=斉藤永幸)