世界経済はすさまじいスピードで変化している。特に中国経済の変化は世界の経済や産業に大きな影響を与えている。
中国政府の考えは、各国企業の戦略に無視できない影響を与える。近年、世界各国の主要自動車メーカーが電気自動車(EV)の開発を重視してきた。その背景には、“新エネルギー車”の普及を目指す中国の考えがあった。ただ、EVの普及には課題が多い。中国政府は現実路線に回帰し、環境への負担を抑えつつ、自動車販売台数を伸ばして消費を活性化しようとしている。これはトヨタにとって大きな追い風になるだろう。
中国市場で同社がシェアを高めることができれば、各国企業にとってトヨタの意向は無視できないものとなるだろう。トヨタが磨いてきたハイブリッド・システムを基礎に、環境への配慮と新しい移動(モビリティー)のコンセプトを社会に示し、ヒットを実現することを期待したい。
中国で絶好調を維持するトヨタもともと、トヨタは国内外のライバル企業に比べて中国市場への進出が遅れてきた。ただ、2018年頃からトヨタは中国市場で急速に人気を獲得している。
中国の自動車販売市場が急速に減速するなか、上半期、トヨタの販売台数は12%増加した。特に、高級車ブランドのレクサスが好調だ。この背景には、かなり興味深い変化がある。レクサスへの人気が上昇している最も重要な点は、日本製であることだ。レクサスは米国で高級車としての地位(ブランド・イメージ)を確立した。それに加え、中国の消費者は、ハイブリッド・システムによる燃費効率の良さや、わが国の精巧なすり合わせ技術に支えられた故障のしにくさをはじめとするトヨタのモノづくりを評価した。
その上、昨年7月に中国政府が輸入乗用車に賦課してきた関税を25%から15%に引き下げたことも大きかった。その結果、レクサスを中心にトヨタ車への人気が急速に高まっている。状況としては、これまで手に入れたかったレクサスが身近になったと感じる消費者が増え、我先に手に入れようとするほどの勢いが感じられる。
これは、トヨタにとってとても大きな変化だ。
価格帯の高いレクサスの販売が好調であるということは、中国におけるトヨタの競争力が着実に高まっていることを意味する。米中摩擦や債務問題の深刻化による中国経済の減速懸念が高まるなかでのトヨタ車の販売増加は、同社が他の企業よりも消費者の信頼を得ていることの裏返しだ。
ハイブリッド車への政策転換する中国政府2016年頃から、中国政府はEVをはじめとする“新エネルギー車”の普及を重視した。その理由は大気汚染対策だ。中国政府は2019年の目標として、ガソリン車およびハイブリット車を100万台生産・販売する企業には、2万台のEVを生産するように求めた。当初、中国政府はハイブリッド車を新エネルギー車として認めなかった。中国は補助金政策を導入し、EVという新しいモノの普及によって大気汚染対策と消費刺激の一石二鳥を狙ったのである。
中国のEV重視姿勢を受けて、世界各国の自動車メーカーがEV開発に大きく舵を切った。特に、ディーゼル排気ガスの不正によって信頼感を失った独フォルクスワーゲンにとって、中国のEV重視は起死回生のチャンスだった。
ただ、EVの普及には時間がかかる。特に、各地に充電設備を設置するなどインフラ整備には多くの時間と資金が必要だ。債務問題が深刻化するなか、中国の地方政府が、借り入れを通してEV普及に必要なインフラ投資を進めることは容易ではない。EVの普及は重要だが、技術的な課題をクリアするのは一朝一夕にはいかない。
中国政府は現実路線への回帰を検討し始めた。政府が検討中の新しいルールでは、ガソリン車の生産に関する規制は強化される。その一方、ハイブリッド車は低燃費車として優遇されるようだ。これは、トヨタにとって非常に重大な変化だ。街中を走る車を見ていると、いまだに欧州メーカーの多くがディーゼルエンジンを搭載している。一方、ハイブリッド車となると、レクサスをはじめトヨタ車が多い。
中国政府は補助金政策を強化して新エネルギー車の普及を重視しつつ、ハイブリッド車の販売促進にも力を入れていくだろう。
すでに独ダイムラーは、中国市場はまともにビジネスが行える状況ではないとの見解を示した。同社の第2四半期の業績は赤字に陥る見通しだ。想定以上に欧州勢の業況は厳しい。米中摩擦により世界のサプライチェーンは混乱している。ドイツを中心に自動車メーカーを取り巻く環境は一段と厳しくなる恐れがある。欧州を中心に、ライバル企業との経営統合など、規模の経済効果を追求する自動車企業は増えそうだ。
そのなかでトヨタは、世界の自動車業界をリードする、大きなチャンスを手に入れつつある。すでにトヨタはハイブリッド特許を無償開放することを決めた。中国においてトヨタのハイブリッド車の販売台数が増えれば、同社のテクノロジーを活用したい企業も増えるはずだ。
それは、トヨタがより有利にEVやコネクテッドカー、および自動運転に関するテクノロジーを開発するために欠かせない。先行きは不確実だが、中国政府の方針修正をうまく使うことで、トヨタはより有利に世界の自動車業界における覇権を強化できるだろう。
トヨタには、さらなる革新を期待したい。それが、人工知能(AI)の活用だ。自動車は多くのセンサーやカメラを搭載した“動くITデバイス”として扱われ始めている。センサーを通してリアルなデータを収集し、それをAIで分析した情報が複数の車両で共有されれば、渋滞の緩和による大気汚染の改善や物流の効率化など、さまざまなベネフィット=便益が見込める。
わたしたちの認知能力には限りがある。気づきづらい実際の変化を瞬時にとらえることは、より良い意思決定を支える。それが経済の効率性を高め、より多くの付加価値を生み出すことにつながる。リアルなデータを分析できるAIが実装されれば、自動車の常識は大きく変わるはずだ。
そうした発想が、新しいモビリティーのコンセプトを具体化し、普及させるために欠かせない。トヨタが中国市場で得たチャンスを生かして、イノベーションを発揮していくことを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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