今や手放すことのできないスマホ、タブレット、PCといったIT端末。なんの気なしにそれらの画面を眺めてしまうのは、SNSをチェックするためだという人も少なくないだろう。
Facebook、Instagram(インスタ)、Twitterなど多種多様なSNSとそれを取り巻く業界の勢力図は、まさに群雄割拠の戦国時代の様相。インスタブームが巻き起こってから数年たっているため、そろそろ次にトレンドとなるSNSが登場してもいい頃合いにも思える。そこで今回は拡大し続けるSNSの種類と、それらを生み出す業界の勢力図に関して、大手企業や著名人のSNSコンサルティングを行なう、株式会社ROCの代表・坂本翔氏に話を聞いた。
今はFacebookとインスタの二強、Twitterは格落ちそもそもSNSがどういったサービスで、どのような定義付けがなされているのかについて坂本氏はこう解説する。
「SNSはソーシャル・ネットワーキング・サービスの略。ネット上で社会的ネットワークを共有できるサービスのことを指す言葉です。これは、個人や組織同士が2つ以上の関係性により結ばれた構造のことであり、これを構築できるウェブサービスであれば、広義ではなんでもSNSと呼べてしまうのです。
それはつまり、コメント返信機能などがあれば個人のブログやネット掲示板、果てはYouTubeなどもSNSと呼べます。けれど、そういった広義で解釈すると我々が普段イメージするSNSとはだいぶかけ離れてきますので、今回はSNSを「不特定多数の人と社会的ネットワークを築けるコミュニティ型の会員制ウェブサービス」と、仮に定義付けて話したいと思います。そして、その定義においてSNS業界で圧倒的なユーザー数を誇っているのが、Facebookとインスタでしょう」(坂本氏)
Facebookとインスタの名が挙がるのは納得だが、Twitterは同格ではないのだろうか。
「当たり前といえば当たり前なのですが、こうしたSNSのシェア率は日本と世界でかなりの差があります。
世界と日本で各SNSのシェアが異なるということだが、具体的な数値ではどうなっているのだろう。
「業界1位のFacebookは、世界で23億人以上のユーザーがいます。しかし日本では約2800万人。これは、2000年代の中盤から後半にかけて、日本ではmixiが先行して流行していたことと、そのmixiのクローズドな性質とFacebookのオープンな性質が逆行していたことが、一因だと考えています。
2位のインスタは世界で10億人以上のユーザー数を誇り、日本でも約3300万人いるといわれています。3位以降は世界で約3億3000万人ながら、日本では約4500万人のユーザーがいるTwitterや、画像共有サイトのPinterest(ピンタレスト)、ビジネス特化型のLinkedln(リンクトイン)が並んでいるイメージです」(坂本氏)
招待制と匿名性を併せ持ったクローズドさが日本人には心地良かったことでmixiブームが起こり、結果論的にFacebookの国内浸透の障壁になっていたということか。では、各SNSにはどのようなユーザー層がいるかを探っていこう。
「Facebookは実名登録制で、アカウントは一人一つまでというルールがビジネスシーンでの信用度を高めており、自作でホームページをつくれない人でもFacebookページはホームページ代わりに応用できる点などが人気の理由です。そのため30~40代のビジネスパーソン、特に男性がメインユーザーでしょう。
インスタは画像や映像が中心で、文章は解説程度という特徴で人気を集めています。
こうした勢力図に新風を巻き起こす次世代SNSが気になるところだろう。一昨年頃にブームが到来するといわれていたMastodon(マストドン)は、現在どうなっているのか。
「Mastodonは、いわば自分たちでSNSのサイト自体を好きにつくって楽しもう、という“分散型SNS”として2017年頃に注目を集めていたサービス。ですが、残念ながら現状は当時予想されていたほどの人気はないですね。Mastodonがムーブメントになれなかった理由は、おそらく“始めにくさ”にあったのでしょう。自分でサーバーを立ち上げられるという自由さがウリでしたが、クリエイティブな意識を強く持った人でなければハードルが高く、それゆえにユーザー数も伸びなかったのです」(坂本氏)
Mastodonの伸び悩みしかり、インスタ以降は大きなムーブメントを巻き起こすSNSが登場していない。今後のSNS業界はどのようになっていくのか、最後に坂本氏が語ってくれた。
「まずFacebookの優位は揺るがないでしょう。まさに“SNS界の帝王”といえる存在にまでなっていますからね。そして2位のインスタですが、個人的にはこれからまだユーザー数を増やし、伸びていくと予想しています。著名人の利用がかなり増えてきたことで注目度や利用者数も上がっており、ビジネスに応用したい企業が選ぶSNSでもぶっちぎりトップです。
インスタはFacebookに買収され現在は傘下となっています。Facebookがプライバシー重視のコミュニティへと舵を切っているので、Facebook社のSNSの中ではInstagramがオープンな部分を担うことになるかもしれません。いずれにしても、近い将来を考えてもFacebookとインスタの二強状態は、当面は揺るがないでしょうね」(坂本氏)
日本ではmixiから始まり、Facebook、Twitter、インスタと数年ごとにブームが移り変わっていった印象であることから、そろそろ次世代SNSブームが来るだろうと予想していた方も少なくないだろう。だが、実際はFacebookとインスタが盤石な牙城を築き上げ、新興勢力が台頭する隙がないというのが現状のようだ。大局的に考えると、SNS業界は次々に人気のサービスが登場した黎明期が終わり、現在は成熟期に入っているということなのかもしれない。
(文=A4studio)