ヤマダ電機は大塚家具に43億7400万円を出資し、51.74%の株式を握り、昨年末に同社を子会社にした。大塚家具は創業者の大塚勝久氏と長女の久美子氏の対立でブランドが毀損。
それではなぜ、ヤマダは大塚家具を買収したのか。ヤマダの狙いは、住宅事業の補完だ。11年、注文住宅のエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を買収し、住宅事業に進出した。12年、住宅機器のハウステックを買収。リフォームを非家電事業の柱に据えた。
ところが、家電量販店のビジネスモデルのまま、リフォームも安売り路線で突っ走った。
ヤマダがエス・バイ・エルを買収して、15年、ヤマダ・エスバイエルホームに社名を変更。さらに18年10月、ヤマダホームズに変更して、「エス・バイ・エル」の名前を消した。ヤマダは17年6月、創業の地の群馬県前橋市で「インテリアリフォームYAMADA前橋店」をオープンしたのを皮切りに、住宅やリフォームを中心に家具や雑貨、家電製品を融合した新業態店「家電住まいる館」を展開している。
オーナーの山田昇会長は、トップに三嶋恒夫氏をスカウトした。三嶋氏は、北陸の家電量販店「100満ボルト」を運営するサンキュー(福井市、現エディオングループ)出身。サンキューのリフォーム事業の立ち上げ、エディオン傘下に入った後もリフォーム事業の拡大を担った。住宅リフォーム事業の実績を買われ、17年にヤマダに副社長として移籍。1年後の18年6月、ヤマダの社長に抜擢された。
家電量販店が住宅事業に参入するというのは昔からよくある話。
ヤマダは大塚家具を子会社にして、家具に本格的に進出する。20年2月、ヤマダの東京都内などの4店舗を改装してオープンした。ソファなどの家具とテレビや白物家電を組み合わせて展示を始めた。
だが、家具・インテリア雑貨はニトリホールディングスの牙城だ。当然、ニトリも対ヤマダ戦略を練る。ヤマダが先行するリフォーム事業に進出した。17年5月、中古住宅販売のカチタス(東証一部に再上場)に33.9%出資して、筆頭株主になった。カチタスは買い取った戸建ての中古住宅をリフォームし、再び販売する中古住宅の再生事業を手掛けている。
ニトリ、都心最大の店舗で生活家電を販売家電の王者・ヤマダ電機と家具の帝王・ニトリHDは、ここへきて業態が急接近してきた。山田昇氏と似鳥昭雄氏。
ニトリHDの似鳥昭雄会長兼CEOは17年6月、ヤマダ電機が新業態の店で家具販売に進出することについて、「家具業界にとって異業種の参入は好ましいことだ。それだけお客様にとって選択肢が増えることであり、お互いに切磋琢磨していきたい」と語った。東京・渋谷にオープンした「ニトリ渋谷公園通り店」のオープンの記者会見で、記者団の質問に、こう答えた。同店は地上9階建てのビルを借り、店舗面積は約5000平方メートル。都心部の最大の店舗で掃除機や炊飯器など生活家電を扱う。
似鳥氏は「ホームファッションを販売するにあたって(ヤマダから)相談はなかった。うちも小物家電を扱っており、小物家電をやる時に挨拶に行っていない」と静かな闘志を燃やす。20年1月に入り、ニトリのテレビコマーシャルに大きな変化がみられた。家電シリーズをきちんと告知するようになった。
さらに、似鳥氏は家具の製造小売業(SPA)のノウハウを応用できるアパレルに参入した。大手アパレルのM&Aも視野に入れているといわれる。
(文=編集部)