新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、10日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅続落した。下げ幅は一時800円を超えて1万9000円を下回り、「リーマンショック級」の不況の到来が危険視され始めた。
千葉県内の服飾雑貨店に勤務する派遣社員女性(38)は、次のように話す。
「今年の1月時点で、派遣元の上司は『先方の幹部が政府の就職氷河期行動計画で、うまく助成と現在措置とか受けられるようだったら、君を直接雇用して正社員にしたいそうだ』と言われていたのですが、先週の面談で『やっぱりだめだった』と言われました。『契約も新年度は更新できない』と。この1カ月、新型コロナの影響で客足が伸び悩み、売り上げの減少も著しく『申し訳ないけれど』ということです。
リーマンショックの時は、東北の精密機器工場で働いていて派遣切りに遭いました。地元にはもう仕事はなく、首都圏に出てきました。前の職場の同年代の男性も、神奈川の工場で先週、派遣切りに遭いました。結局、私たちの世代が割を食うんだなという思いです。私は独身ですから守るものはなにもないですけど、もう、どうにでもなれという気持ちです」
本来であれば、こうした労働者を救うために立ち上げられた政府の就職氷河期対策だったが、コロナウイルスの感染者増加で完全に出鼻をくじかれたかたちになっている。安倍晋三首相は昨年12月、同支援対策に2019年度補正予算を含め、22年度までの3年間で約650億円の予算を確保する方針を示した。
計画では相談窓口の充実や、民間のノウハウを活用した職業訓練、採用企業側の環境整備が図られるという。特に発表当時、注目されていたのは氷河期世代を採用しようとする企業に対し「助成金などのインセンティブを強化する」ことだった。前出の派遣社員の女性のように、企業側も氷河期世代の雇用に対して前向きな姿勢を示す事例も少なくなかったようだ。
「コロナで、うちの会社も派遣切りが」だが、もはや政府の施策が実地に移されるよりも早く、経済状態の悪化は進んでいる。Twitter上では次のような嘆きが溢れている。
「来月から同一労働同一賃金が始まれば、正社員と非正規雇用が同じ仕事を行っていれば同じ給与を払わないといけないし、ボーナスも同じ仕事なら最低7,8割やらないとまずいらしいから、去年の暮あたりから派遣切りとか雇止めやって企業は人件費を削ろうとしている」(原文ママ、以下同)
「安倍さんへ 学校休みで休職中の人達の給与補償するのはいいことだけど、今さ、コロナウィルスの影響で会社や店の都合で派遣切りやバイトのシフト減らされたりして苦しんでる人達も助けてあげて。 マジでヤバいからさ」
「コロナで、うちの会社も派遣切りが始まりました。お客さん来ないしね、私も職場移動の時期かもしれない」
新型コロナウイルス感染症に罹った労働者に対する休業補償と同じように、今回の問題で職を失うことになりかねない人々に対する救済策の立案は急務に思える。
政府に新たな対策はあるのだろうか。内閣官房就職氷河期世代支援推進室の担当者は「まだそういう情報が入っていないので何とも言えません。私たちとしては、従前どおり、昨年末に定めた行動計画に則り、各種施策を進めていく方針です」と困惑したように話した。
季節は春を迎えつつあるが、氷河期世代の長い冬は終わりそうにない。
(文=編集部)

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