2020年に「東京事変」としての活動を8年ぶりに“再生”した椎名林檎。1月1日に「選ばれざる国民」、2月29日に「永遠の不在証明」、8月12日に「赤の同盟」、11月6日に「青のID」、11月13日に「命の帳」と、配信シングルをコンスタントにリリースし、4月8日にはミニアルバム『ニュース』も発売。

また、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、2月26日に政府からイベント自粛要請が出されるなか、同29日と3月1日の東京国際フォーラム公演を決行し、ネット上で賛否を巻き起こした。

 この12月には、9日放送の『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)や25日放送の『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE2020』(テレビ朝日系)で圧巻のパフォーマンスを披露し、ソロアーティストとしては通算7度出場している大みそかの『NHK紅白歌合戦』にも、東京事変として初出場する。

 椎名といえば、楽曲にロック、ジャズ、ムード歌謡などさまざまなテイストを取り入れて、どこか退廃的で儚い色気を醸し出しながら歌い上げる、独特の存在感を放つアーティストでもある。

1999年の「本能」での強烈なインパクト、セクシャルかつ大衆的な楽曲でミリオンセラーを獲得

 椎名林檎は1998年、シングル「幸福論」でデビュー。同年は浜崎あゆみ、宇多田ヒカル、aiko、MISIA、モーニング娘。といった今なお活躍するアイドルやアーティストがデビューを飾ったという豊作の年でもあるが、そのなかでも椎名が放ったインパクトは強烈であった。

 例えば、1999年10月にリリースした「本能」のミュージックビデオ(MV)では、ナース姿の彼女が拡声器を手に歌い、ピンヒールパンプスでの蹴りや肘打ちでガラスを打ち破っている。さらには、ベッドに横たわる女性患者に椎名が覆いかぶさり、首元に舌を這わせるというセクシャルなシーンも。

 歌詞には「もっと中迄入って」「あたしの衝動を突き動かしてよ」といった意味深なワードが並び、賛否が分かれそうな楽曲であるにもかかわらず、大衆ウケ抜群でミリオンセラーを記録した。MVのビジュアルや歌詞に含まれた情感で、誰しも一度は感じたことがあるような独占欲や支配欲、衝動性や開放性をむき出しにする彼女の表現力は、世間から羨望の的となっていった。

デビュー当時の「水着を着てきてほしい」との要望に泣いた過去を激白

 2000年1月リリース「ギブス」のMVでは胸の谷間をあらわにしながらギターをかき鳴らし、2003年2月に発売したサード・アルバムには『加爾基 精液 栗ノ花』(カルキ ザーメン クリノハナ)というタイトルを付けるなど、セクシャルなアプローチが目立っていた椎名。ただ、それは彼女にとって自己表現のひとつでしかなく、決して異性への媚びではない。

むしろ男性への反発心を持っているようだ。
 
 2019年5月25日放送の『COUNT DOWN TV』(TBS系)に出演した椎名は、デビュー当時にプロモーション活動をしていた際のエピソードを明かした。

「明日のどこどこのキャンペーンの局の方が『たまたまプールサイドでの収録なんで、水着をなるべく着てきてほしい』みたいなことをおっしゃってるっていうのをメーカーの人から聞いたときに、なんかまあ悲しさなんでしょうね、すごく。怒りなのか悲しさからなのか、泣いたことがあって」

 アーティストとしてではなく、女性として、しかも軽んじて扱われたことに屈辱を感じた経験から、楽曲やビジュアル面では過激で強い女を演出をするようになったという。

「とにかく強い。バカにされない。『バカにすんなよ!』っていうのがまず第一に。その癖はもうなんかとれなくて。どうしてもアー写がスタンガン持ってたりとか、欠かせなくなっちゃって」(同じく『COUNT DOWN TV』より)

ZAZEN BOYS向井秀徳に「美人やね」と褒められ照れ笑い

 そんな彼女も、憧れの男性を目の前にしてデレデレになるという、かわいらしい一面を持っている。2005年7月8日に放送された『僕らの音楽』(フジテレビ系)にて、憧れの人物・ZAZEN BOYSの向井秀徳と共演した椎名は、向井に「あんた、美人やね」と唐突に褒められ、うれしそうに照れる様子をみせていた。

 また、ステージでは2人が向かい合ってコラボ曲「KIMOCHI」を歌い上げた後、向井が「今夜のお客様は、椎名林檎ちゃま」と紹介したのだが、その時にも椎名は照れ笑いを浮かべ、手で口を覆うしぐさを見せていた。向井を目の前に、アーティストとして活動している時とはまったく違う表情を見せた椎名について、視聴者は「メスの顔になってる」「史上最高に椎名林檎がエロい」とリアクションしていた。

エレカシ宮本浩次と椎名林檎の“動”と“静”がネットで話題に

 椎名と男性アーティストのコラボといえば、2018年11月9日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)での、エレファントカシマシ・宮本浩次とのパフォーマンスが記憶に残っている人も多いのではないだろうか。

 同番組で椎名と宮本はコラボ曲「獣ゆく細道」を披露。トークで椎名は「(宮本の歌は)楽器としてすごいので、残さないといけない」と独特の表現で宮本を称賛していたが、ステージではありあまるほどの熱量で歌い、終盤では本能のまま踊り狂っていた宮本に対して、椎名は軽くリズムをとりながらそつなく歌唱。2人の対照的な“動”と“静”はネットで、「これこそ神回」「色気とセンスのぶつかり合い」と絶賛されていた。

 芸能界では、加藤ミリヤ、池田エライザ、白石麻衣、堂本剛など多くの著名人が椎名林檎のファンだと公言し、カバーしたりもしている。2021年も、彼女らしい独創的な作品を生み出してくれることに期待したいものだ。

(文=編集部)

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