ここ数年、年末になるとふと思い出してしまうことのひとつに、SMAPがある。彼らが解散したのが、2016年12月31日だったからだ。

 解散後の彼らは、一時全員がジャニーズのソロタレントとして活動したものの、木村拓哉と中居正広のみジャニーズ事務所に残り、草なぎ剛と稲垣吾郎と香取慎吾はSMAPの元チーフ・マネージャー飯島三智氏が設立した「CULEN」(カレン)に移籍。中居正広も2020年3月いっぱいでジャニーズを退所し、4月から個人事務所「のんびりなかい」の代表取締役を務めている。

 5人はそれぞれの形で活動を続けているが、ファンの間ではいまだにSMAP再結成を望む声も少なくない。もちろん、彼ら一人ひとりを支持する声もあるものの、“5人のSMAP”には、何ものにも代えがたい魅力があった。

 そんなSMAPの歴史のなかで伝説と化しているのが、2013年4月に2週にわたって放送された『SMAP×SMAP SMAPはじめての5人旅スペシャル』(フジテレビ系)だろう。同番組では、SMAPの5人が結成25周年を記念した番組からのプレゼント企画として、1泊2日で大阪を旅する様子が放送された。マネージャーの同行もなく、できる限りプライベートに近い形で行われた旅行では、5人のさまざまな素顔を垣間見ることができた。

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木村拓哉が撮影許可を得るためユニバに直接電話、「信じてもらえないよ」と中居正広

 ある日の『BISTRO SMAP』収録後に、結成25周年の記念として1泊2日の旅行に行くことを知らされた5人。突然の知らせにメンバーは困惑気味で、決して楽しそうではなかった。メンバーには事前に旅行日程なども伝えられず、当日は歌の収録という偽のスケジュールでスタッフに呼び出され、いきなり「今から旅行に行ってほしい」と告げられるという形だった。もちろんメンバーは戸惑うばかりで、木村は「ちょっとした迷惑だから」と、中居も「理解に苦しむね」「いい度胸してるね」とこぼしていた。

 否応なしに大阪・伊丹空港に集合することになり、5人でレンタカーに乗って旅がスタート。

ノープランの旅だったために、まずはガイドブックと飲み物を調達することになり、コンビニに到着。全員で入店するのはさすがにやめたほうがいいだろうとのことで、木村が一人で入店し、中居に促される形で稲垣も木村の後を追った。突然のスター来店にコンビニ店内がざわつく一方、香取は車内で「50%は楽しそうでのんびりできそう。50%はめんどくさそう」と旅行の行く末について期待や不安をにじませていた。

 ガイドブックをもとに、5人は大阪市にある「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」に行こうという話に。撮影許可を撮るために木村がUSJに電話すると、「(USJ側は木村本人だって)信じないんじゃない?」と心配する中居。確かに、撮影を申し込まれることには慣れているであろうUSJも、まさかSMAPから直々に電話が来るとは夢にも思わないだろう。案の定、対応したUSJの広報担当者は「アイドルのSMAP様でお間違いないでしょうか?」と確認しつつ、安全面の確保のために2時間後に来てほしいと伝えていた。続けて、今夜の宿を確保するために、稲垣が兵庫県の有馬温泉にある老舗旅館・兵衛向陽閣に電話。当日は空いている部屋が1部屋しかなく、5人全員で1部屋に泊まることになった。

 USJに向かう道中でお好み焼き店に入った5人は、お好み焼きやとん平焼き、生姜焼き定食などを堪能。木村は「ここ美味くない? (大阪に)ライブ来た時、いいんじゃない?」とたいそう気に入った様子であった。

番組放送後、5人が訪れたこのお好み焼き店は、ファンの間で聖地化したという。

デビュー直後に、中居正広が稲垣吾郎をぶん殴ったワケ「おれたちはこれをやらないとダメなんだ」

 その後、念願のUSJを訪れたSMAPの5人(放送当時、USJを訪れた5人の様子は「特別編」として2週目に放送されたが、ここでは時系列に沿って紹介)。国民的アイドル・SMAPの登場に、当然ながらギャラリーは大興奮。入園後の5人は、テーマパークによく売られているキャラクターのカチューシャを購入し、スヌーピーやマリリン・モンローといったパーク内のキャラクターと記念撮影するなど、和気あいあいとした様子であった。

 そして、この日のお目当てでもあったローラーコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」に乗車。このコースターは、5曲のなかから好きなBGMを選択できるオーディオシステムを搭載しており、当時はSMAPの「Battery」がラインナップに入っていた。木村、香取、草なぎの3人はノリノリだったが、稲垣と中居は乗車を拒んでスターターを担当。コースターが出発し、クライマックスの急降下に突入すると、テンションが最高潮になった3人は「Battery」を熱唱。乗車後、興奮冷めやらぬ木村が「おかわり!」とリクエストしてふたたびコースターを楽しんでいた。

 そんな3人の様子を見ていた中居は、「あいつら楽しそうでよかったね」「『フー!』だって。日頃『フー!』って言わねえだろ」「これ、5人の画欲しいだろうね」と冷静にコメントしており、普段からメンバーの様子をしっかり見ていることがよくわかる。一方、絶叫マシーンが苦手で絶対に乗れないという稲垣は「(5人の画が撮れなくて)申し訳ない」と恐縮していた。

 ちなみに、2011年9月9日に行われたSMAPのデビュー20周年イベント『SMAP AID SPECIAL FAN MEETING 2011』では、稲垣がデビュー直後に出演したバラエティ番組で、絶叫マシーンに乗る企画を拒んだ挙げ句に手鏡を壁に投げつけ割ってしまい、中居に殴られたというエピソードが明かされている。香取は「中居くんが近寄って、吾郎ちゃんをぶん殴って『おれたちはこんなこともやってかなきゃいけないんだ! これから頑張っていくにはジェットコースターも乗らなきゃいけないんだよ!』って叫んだよね」と当時を回想。すっかり国民的アイドルとなったことで、稲垣のジェットコースター乗車拒否も許されるようになったのかもしれない。

“撮れ高”がなくても断固拒否、稲垣吾郎の「筋金入りのアトラクション嫌い」

 3Dアトラクション「スパイダーマン・ザ・ライド」には全員で乗車。同アトラクションはさほど激しい動きはなく、スパイダーマンの世界観を3D映像で楽しめるというものだが、それでもアトラクションが苦手な稲垣は、時折頭をかばったりと怯えるばかり。乗車中の様子を撮影した写真には、恐怖のあまり背もたれにしがみつく稲垣が写っていた。

「スパイダーマン・ザ・ライド」ですっかりまいってしまった稲垣は、メンバーに急流すべりのアトラクション「ジュラシック・パーク・ザ・ライド」に乗ろうと誘われたが「本当ごめん。ない、マジで」と完全拒否。後のスタジオトークで、稲垣はこの時について「記憶にない」と明かしており、「あと4回生まれ変わっても無理だね」と筋金入りの絶叫系アトラクション嫌いであることを強調した。

 当初は旅行に乗り気ではなかった5人。しかし、お好み焼き店ではまるで部活後の男子高校生のように高カロリーメニューにがっつき、USJでは木村、香取、草なぎの3人がアトラクションに大はしゃぎし、それを見た中居がリーダーらしく冷静にコメント。さらに稲垣が“撮れ高”を考慮できないほどの大の絶叫系アトラクション嫌いを発揮するなど、それぞれが自然体かつリラックスした様子で旅行を満喫していた。

中居正広が語った「SMAPが4人と1人に分かれるのは絶対ダメ」

 ただ、気になったのは、絶叫マシン嫌いな稲垣のみならず、中居までローラーコースターに乗らなかったことだ。その理由について、後に中居は冠ラジオ番組『中居正広のSome girl’ SMAP』(ニッポン放送)の2013年6月1日放送回でこう明かしている。

「基本的に4対1の構図っていうのが僕は好きじゃなくて、SMAPが。昔から僕は必ず4対1の構図はやめようと。『SMAP×SMAP』のコーナーでも『4人のコーナーをやろうと思う』(という案があっても)『だ~め、4人は』って。4人だと誰一人浮かばれない」

「その4人にとっても『SMAPの1人足りないじゃん』って思われる感と、その人だけなんか仲間はずれに思われるってのと、その一人が『嫌われてるんじゃないかなぁ?』とか。結局どんなケースでも4人はないんです。僕のなかで」

 確かに、5人旅でメンバーは基本的に5人全員で行動しており、状況に合わせて3人と2人に分かれていた。ローラーコースターのシーンでは木村、香取、草なぎが乗車し、中居と稲垣がスターターを担当。また、コンビニでガイドブックや飲み物を購入するシーンでは、木村が一人で入店した後、中居がすぐ稲垣に木村と一緒に買い物をしてくるよう促していた。中居は誰かが一人にならないよう、常に気を配っていたのだろう。

 SMAP解散後、草なぎ、香取、稲垣の3人は1年を待たずに移籍したが、木村と中居はジャニーズ事務所に残り、2020年4月に中居が独立。

解散騒動の発端は、元チーフマネージャーとSMAPが水面下で進めていた独立計画を木村一人が裏切ったことにあるといわれているため、中居も草なぎら3人とともに元チーフマネージャーが設立した事務所に移籍してもおかしくはなかった。

 しかし、中居は最終的に個人事務所を立ち上げるという形に至っている。<結局どんなケースでも4人はない>と語っていた中居らしい選択だったといえるのではなかろうか。

(文=編集部)

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