ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第1四半期(1~3月)のアプリ利用動向をうかがう。今回は、コロナ禍で漫画や動画に押されていた「ゲーム」で久々に出たヒットタイトルについて聞いた。
「ウマ娘」がゲームアプリで久々のヒットに――21年1~3月に、アプリで何か大きな動きはありましたか?
日影耕造氏(以下、日影) この3カ月は久々にゲームで動きがありました。2月にリリースされた、実在の名馬を美少女キャラクターにした「ウマ娘 プリティーダービー」(以下、ウマ娘)の大ヒットです。
新型コロナウイルスによる最初の緊急事態宣言が発令された20年4月から20年内にかけては、ゲームにあまり大きな動きはありませんでした。巣ごもり需要で動画や漫画のアプリは大幅に伸びたのですが、それらに比べてゲームは勢いが弱かったのです。
――パズルゲームなど隙間時間に手軽にできるようなゲームならともかく、ある程度やりこむことを前提としているゲームはそういくつもできないですし、そういうゲームをもともとしない人にしてみれば、コロナだからってゲームをやるかと言われても、漫画や動画に比べれば確かにハードルは高いですね。
日影 はい。そんな中で「ウマ娘」は久々に出たヒットゲームです。内容としてはアイドル+競馬+育成+音楽など、いろいろなヒットゲームのおいしいところをうまく持ってきていますね。
「App Ape」の21年3月のゲームMAU(Manthly Active User:月に一度はアプリを起動したユーザー数)ランキングを見ても、「ウマ娘」は「ポケモンGO」「LINE:ディズニー ツムツム」など長期運営の強豪タイトルが占める中で5位に入っており、大健闘と言えます。
――美少女ゲームなので男女比は納得です。ただ、20代のユーザーが多いのですね。「競馬」という渋いコラボで、かつ「ウマ娘」に出てくるのは往年の名馬が多く、「オグリキャップ」「トウカイテイオー」などは1990年代前半が活躍期ですから、もう少し上の世代が強いのかと思いました。
日影 これはメディアミックスの影響があるかと思います。「ウマ娘」はすでに漫画やアニメなどでも展開されています。漫画は2016年、アニメは18年に第1期、21年1~3月に第2期と、ゲームのリリースと重なる形で放送されています。ここでつかんでいたコアな「ウマ娘」ファンたちが、ゲームのヒットを支えたのかもしれません。
「ウマ娘」の発表自体は16年だったので、リリースまでずいぶん期間が空きましたが、それまでメディアミックスで「種をまいておいた」形になった、とも言えますね。今回のヒットを受けて、今後は世代の幅が広がるかもしれません。
なお、今年のG1レース、桜花賞(4月11日開催)は売り上げが3割ほど伸びたそうです。ただ、これは「ウマ娘」効果というより、コロナ禍でネット投票の割合が伸びた公営ギャンブル自体が活況だから、とも言えますが。
“刀剣女子”の次は“ウマ娘男子”が急増か?――実在の刀剣を美青年、美少年にしたゲーム「刀剣乱舞」人気で、刀剣を見に美術館などを訪れる「刀剣女子」が話題となりましたが、「ウマ娘」もそのようにリアルへの影響がみられるかもしれませんね。しかも、刀剣は期間限定の展示のものも多いですが、競馬は全国各地でレースが行われていますしね。
日影 「ウマ娘」の大ヒットを受けて、今後はもしかしたらJRAとコラボして「ウマ娘杯」などが開催されるかもしれませんね。今回のヒットは、群雄割拠のアプリゲームにおいて本当に久々の快挙でした。運営するのはサイバーエージェントグループのサイゲームスですが、「ウマ娘」効果でサイバーエージェントの株価も上がっています。
――同社には14年リリースの有名ゲームタイトル「グランブルーファンタジー」がありますが、強力な2本目の柱が出てきましたね。若年層など「歴史の長いゲームに今から入るのがキツい」人にも響くかもしれませんね。
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後編では引き続き日影氏に、絶好調の「ウマ娘」とは一転、21年1、2月にかけて世間を大きく賑わせながら、どうも今はパッとしないように見える「Clubhouse(クラブハウス)」の現状についてうかがう。
(構成=石徹白未亜/ライター)