2021年は新興企業の新規株式公開(IPO)が急増した。125社が新規上場し、20年の93社より32社も増加した。
IPOのピークは12月24日。一挙に7社が上場した。公開価格に対する初値の騰落状況では「4勝2敗1分」となった。不動産管理・賃貸の長栄は東証2部へのIPOだったが、公開価格(1800円)比8%安の1656円の初値を形成した。ニフティ子会社で12月27日の最大案件だった不動産検索サイト、ニフティライフスタイル(東証マザーズ)は公開価格(2000円)の10%安の1800円の初値を付けた。
21年最後のIPOは12月29日上場の人工知能(AI)を活用した人材評価プラットフォームのInstitution for a Global Society(IGS、東証マザーズ)。公開価格(1720円)を16.4%上回る2002円で初値を記録した。偶然の一致だが、2が続き2022年を連想するような株価となったと話題になった。
12月に上場した32社のうち、12社で初値が公開価格を下回った。
21年に新規上場したなかで、初値の時価総額が最も大きかったのは、PHCホールディングス(PHCHD)。10月14日、東証1部に上場した。初値は3120円で公開価格(3250円)を4.0%下回った。初値での時価総額3836億円で21年のIPOで最大となった。
PHCHDは病院などで使う医療機器や分析機器の開発・販売を手掛ける。
PHCHDの株価はその後も下落し、21年の大納会(12月30日)の終値は2085円。終値換算の時価総額は2567億円で初値当時の時価総額と比べて33%目減りした。12月23日に1901円と上場来安値になるなど、株価は安値での底ばい状態に陥ってしまった。
10年経過後の時価総額が40億円以上新陳代謝は激しい。代わって脚光を浴びたのは、転職支援サービスのビズリーチを運営するビジョナルだ。4月22日、東証マザーズに上場した。初値は公開価格(5000円)を43%上回る7150円。初値時の時価総額は2544億円。新興企業で企業価値が10億ドル(約1100億円)を超えるユニコーン企業の上場では、18年6月上場のメルカリ以来の規模だ。
新規上場したのはDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI、IoTを主力とする企業が目立つ。近年、情報通信やサービスがIPO全体の、およそ3分の2を占めるが、この傾向は22年に一段と強まろう。
東証は4月に市場が再編される。スタートアップ企業が目指す「グロース市場」には、「上場から10年が経過した後の時価総額が40億円以上」というハードルが課せられている。上場した後も成長を続けなければ、現状維持では即脱落となる。「上場=ゴール」の安易な経営は許されなくなった。
(文=編集部)