ジャスダック上場企業のソーシャル・エコロジー・プロジェクト(以下、SEP)は、静岡県伊東市にある人気テーマパーク、伊豆シャボテン公園などいくつかのレジャー施設を展開するサボテンパークアンドリゾートの持ち株会社だ。伊豆シャボテン公園は、露天風呂に入るカピバラが特に有名で、テレビなどでも取り上げられている。

年間30万人以上が訪れる静岡県有数の観光施設だ。

 そのSEPが今、経営権争奪の舞台となっている。仕掛けているのは、レジャー施設の運営とはまったく縁がない大株主である東拓観光とロイヤル観光の2社と個人株主。

 大株主2社には、2001年に死者44名を出した歌舞伎町ビル火災について、08年に執行猶予判決を受け有罪が確定した瀬川重雄氏が深く関与している。また同氏は、伊豆シャボテン公園の土地と建物に根抵当権を持つと主張して競売申し立てをしているケプラムの株主であり、SEPの大株主グループによる経営への関与と併せて、2面作戦をここ数年にわたり展開、「東日本のカピバラの聖地」奪取を目指している。同氏は相当程度票固めを進めていると目されており、11月29日に臨時株主総会を開催させるところまでこぎつけた。この総会では、資本の論理により現経営陣の解任を求めている。

 すでに敗色濃厚とも目されている現経営陣だが、ここに来て業績回復は顕著だ。SEPは前々期決算で7年ぶりの営業利益の黒字化、前期決算では13年ぶりの2期連続営業利益の黒字化および3期連続当期純利益の黒字化を達成した。また、同社は14年7月度から月次業績の公表をしているが、同8月度には、伊豆シャボテン公園において過去10年間で最高の入園者数を達成し、同じく同社が運営する伊豆ぐらんぱる公園に関しては、過去20年間で最高の入園者数を達成するなど、バブル期以来の活況を呈している。さらに、11月13日発表の15年3月期第2四半期決算では、いわゆる「継続企業の前提に関する注記」が解消され、財務上の経営危機は脱したかたちだ。

 厳しい戦いを強いられているSEPの小松裕介社長は、「年間30万人以上の方々が来園され、カピバラを見て喜んでくれている子供たちが年々増えてきている。
こうした子供たちに夢を与えるレジャー施設をなんとか存続させたい」と思いを語る半面、どのような手段であれ、資本と司法の原則には従わざるを得ないと苦渋の表情を浮かべる。

●騒動の経緯と、株主総会における争点

 小松社長に、騒動の経緯と今後の見通しなどについて話を聞いた。

--大株主の東拓観光とロイヤル観光は、どのような改革案を示し、何を問題視しているのですか?

小松裕介社長(以下、小松) われわれ経営陣は、経営改善を達成してきています。従って、経営能力が問われているのではないと認識しています。また、東拓観光とロイヤル観光の両社から具体的に、レジャー施設の運営や経営改善に関する提案を受けたことはありません。

--伊豆シャボテン公園の不動産は、競売が申し立てられており係争中です。申し立てをしているケプラムについては、裁判の中で瀬川氏自身が関与を証言しています。このような事態になった経緯と、根抵当権に関する御社の見解をお聞かせください。

小松 臨時株主総会の開催を求める株主から、「伊豆シャボテン公園の不動産の競売申し立てに対して有効な対応をしていない」と指摘されているのは事実です。しかしながら、競売を申し立てている会社と実質的に同一のグループにある株主がそのような主張をすること自体に著しい不当性を感じております。

 根抵当権をめぐる裁判は現在係争中ですので詳細は控えますが、当社としては、先方が主張する根抵当権は消滅していると考えています。来年2月頃には判決が出ると思われるので、裁判所の判決を目前に不当な理由で現経営陣の解任を求める臨時株主総会が開催されることは誠に遺憾です。


--大株主側は、元有力政治家が御社の経営に介在していると指摘しています。なぜ、このような混乱する事態になっているのでしょうか?

小松 原因は、過去の当社の経営の混乱に起因していると思います。しかし、現経営体制になって以降、会社は確実に立ち直っています。巷間で言われているような元政治家が当社を支配している事実はありません。すでに「継続企業の前提に関する注記」も解消され、経営が大幅に改善しつつあるなかで経営陣が排除され、伊豆シャボテン公園の存続が危ぶまれるような事態になるのは非常に心苦しい限りです。

--11月29日には臨時株主総会が開催されるとのことですが、総会が開催されるに至った経緯、そこでは何が争われるのか、またその見通しを教えてください。

小松 事の発端は、ケプラムによる伊豆シャボテン公園の土地と建物の競売申し立てで、その後、同グループによる経営権取得に向けた画策が始まったというのが簡単な経緯です。さらに紐解けば、当社の元経営者が根抵当権の被担保債権をグループ会社間で売買し、元経営者が当社から去っていった後、それが巡り巡ってケプラムに取得されてしまった経緯もありますが、当社としては、この根抵当権は明らかに消滅しているとの立場です。

 今回の臨時株主総会においては、現経営陣の排除と大株主側が推薦する取締役の選任が争われます。当社としての考えは、現経営陣はこれまでの経営陣がなしえなかった業績回復を達成し、実績をお示ししているので、その点を株主の方々には是非ご理解いただきたいと考えております。1万4000人を超える大勢の個人株主がいらっしゃいますが、しっかりと現在の経営状況と、中長期的な企業価値・株主価値向上にとって何がベストであるかをご判断の上で投票していただきたいと思います。

--ありがとうございました。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

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