ファミリーレストラン「ガスト」などを展開するすかいらーくが10月9日、2006年の上場廃止から8年ぶりに東京証券取引所1部に再上場した。初値は公募価格と同じ1200円だったが、終値は初値より5%安い1143円で、公募価格を割り込んだ。

時価総額も2219億円と当初想定した2400億円を下回ったものの、外食株としては日本マクドナルドホールディングスに次ぐポジションに返り咲いた。ただ、上場廃止直前の時価総額2944億円には及ばなかった。

 その後、すかいらーく株は売られ、10月24日には999円と1000円を切った。11月21日の終値で1203円をつけ、27日には1299円とようやく上場来の高値をつけたが、リクルートホールディングスの株価が上場来堅調なのに比べてかなり見劣りする。すかいらーくの12月9日の終値は1210円(4円安)だった。

●再上場までの経緯

 すかいらーく株価不調の理由を探るために、まず再上場までの経緯をたどってみよう。00年代に業績が悪化し、06年にMBO(経営陣による買収)を実施した。「5万人の株主がいたら改革は進まない。もう一度会社をつくり直すため」というのがMBOを行った理由だ。野村ホールディングス(HD)傘下の投資会社、野村プリンシパル・ファイナンス(以下、NPF)が1000億円、英系ファンドCVCキャピタルが600億円出資、みずほ銀行を中心とする銀行団19行から2200億円の融資を受け、すかいらーく株式を非公開とした。

 しかし、経営は軌道に乗らず、08年にNPFは追加出資したが出口の見えない投資案件となっていた。11年3月に発生した東日本大震災後に経営が悪化した野村HDは、すかいらーく株を売却して資金回収を急いだ。
NPFによる投資から5年後の11年秋に、負債込みの2600億円で米投資ファンドのベイン・キャピタルがすかいらーくを買収した。ベインの発表ではNPFや投資事業組合から、すかいらーくの普通株式(議決権比率98.7%)を1600億円で取得し、追加出資を含め1500億円を出資したNPFは売却益がほとんど出なかった。NPFはすかいらーくの再上場で巨額なリターンを計画していたが、期待外れに終わった。

 筆頭株主のベインは1億8584万株、発行済み株式の96.0%を保有していたが、今回の株式公開時に6481万株を売り出した。公開価格の1200円で計算すると777億円を回収したことになる。上場後も1億2073万株を持っており、1400億円強の含み益が出ている計算だ。

●巨額減損処理リスク

 すかいらーくの抱える大きな問題は「のれん代」である。「のれん」とは、買収された企業の純資産額と買収価格の差をいう。日本の会計基準では、20年以内に償却することが求められている。06年に2500億円で株式市場から自社株を買収したため、2200億円の負債と、1800億円近いのれん代が発生した。のれん代は14年6月末時点で1463億円残っており、その額は純資産787億円を大きく上回っていた。

 すかいらーくは日本会計基準を採用していた時、のれん代を毎期75億円償却してきた。
償却額は販売費及び一般管理費に計上され、営業減益の原因となった。一方、国際財務報告基準(IFRS)ではのれんの償却は不要なため、IFRSを採用したほうが見かけの営業利益は大きくなり、その分、純利益も膨らむ。そのため同社は13年12月期連結決算からIFRSを採用し、同期118億円の当期純利益を計上した。日本会計基準を採用していたら、のれん代を75億円償却する必要があるため、純利益は43億円に激減する。

 しかしIFRSにはこのようなメリットがある一方、減損リスクもある。IFRSでは毎年のれん代の減損テストを実施しなければならず、買収した会社の業績が悪化すれば買収額の回収が危うくなるので、資産の減損処理をしなければならない。レストランチェーンが営業不振になりのれん代が減損したら、一気に債務超過に陥る。

 1463億円ののれん代は、あまりにも巨額。これが、新生すかいらーくが抱える時限爆弾として、株価上昇の重石となっている。
(文=編集部)

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