夫婦で共働きすることのメリットは、言わずもがな経済的に余裕ができること。だが、それぞれが仕事を持つことで不満が噴出してしまう事例が多いのも事実であろう。



 厚生労働省発表の「共働き世帯数の推移」を見ると、1980年には「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」は1114万世帯だったのに対し、「雇用者の共働き世帯」は614万世帯で、共働きする夫婦よりも妻が専業主婦という家庭が倍近くだったことがわかる。

 ところが、2012年の同データでは、「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」は805万世帯、「雇用者の共働き世帯」は1068万世帯となっており、この30余年で共働き世帯が上回る結果となっているのだ。

 年々、共働き世帯の増加に比例するように離婚率も上昇しており、いまや結婚した夫婦の3組に1組の割合で離婚するとのデータもある。忙しい夫婦間で、ケンカや揉め事も増えてきたであろうことは想像に難くない。

 そこで今回、20~60代で共働き経験のある既婚男女にアンケートを実施し、相手に対してどのような不満があるか、またどのように解決してきたかを調査した。

●妻側は「家事を手伝っても不満」?

 まずは妻側の不満の声を紹介しよう。

「家事や育児に、まったく協力してくれないこと。私も週に5日パートに出ているのに、料理に洗濯に掃除をして、小学2年生の子どもの面倒も見ています。不公平だと思ってしまいます」(35歳・結婚歴9年)

「平日は働きに出ていて家事は最小限しかできない分、土日にたまった家事を一気に片付けるというライフスタイルです。しかし、休日に私が全力で家事をしているとき、ソファに寝転がりながらゲームをしている夫を見ると蹴飛ばしたくなる」(44歳・結婚歴10年)

「我が家は2人とも正社員なので、財布は別々です。基本的に生活費は8万円ずつ出し合って、その中で私がやりくりしています。しかし、家事も育児も8割方、私の担当になっています。
生活費を折半にするなら家事も育児も半分にするべきで、そうでなければ生活費を多く出してくれないと割に合いません」(33歳・結婚歴7年)

「主人は自称『家事・育児を分担している夫』。たまに早く帰ってきた日に子どもをお風呂に入れてくれたり、休みの日の朝に簡単な料理を作ってくれたりして、もちろんその行為自体はありがたいし助かるのですが、たったそれだけで共通の知人たちに『俺は妻の家事を助けている』と大きい顔をされるのには違和感があります。ちなみに、朝食は作るだけ作って、使い終わった食器などを洗うまではしません」(33歳・結婚歴10年)

「夫はゴミ出しを担当してくれたり、週に2回ぐらいお風呂掃除をしてくれたり、洗濯物干しを手伝ってくれたりします。しかし、夫と同じぐらいの時間働いている私からすると、それでも家事分担の割合は全然足りないです」(50歳・結婚歴18年)

 “家事をまったくしない夫に対して不満を爆発させる妻”という構図は、ある意味予想通りだったが、家事を手伝ってくれる夫に対して不満がたまっている女性も少なくないようだ。

●夫側は「総合的に男のほうが忙しい」

 ではもう一方、夫側の不満の声には、どのようなものがあるのだろうか?

「うちの奥さんはよく働いてくれていて頭が下がる思いですが、一般論として『共働きなのに、夫が家事や育児を手伝ってくれない』という女性の不満には、疑問に思うこともあります。一口に共働きといってもスタイルはさまざまでしょうが、夫が正社員で毎日遅くまで働いていて、妻はパートというケースが多いと思います。その場合、妻側の働きに出ている時間+家事+育児の総時間よりも、夫側が会社で身を粉にして働いている総時間のほうが長かったら、夫は『家事を手伝う理由はない』と思いますよ。さらに言うなら、仮に家事+育児全般の月給を20万円ぐらいと仮定して、妻が外で働いた分の給料+20万円よりも夫の月給が高かったら、『会社の仕事に専念させてくれよ』とも思うでしょう」(62歳・結婚歴30余年)

「うちの嫁は週に4回、昼間6時間程度働いていますが、仕事と家事と子育てをこなすのが大変なのはわかります。ただ、それでも毎日終電近くまで働いて帰宅する私より、平均して毎日2~3時間多く寝ています。それなのに外で『うちの人は、家事も育児も全然手伝わない』などと、私をおとしめるようなことを言っているのは承服できない」(40歳・結婚歴8年)

「以前は、積極的に家事を手伝おうとしていた時期もありました。しかし、例えば夕食にチャーハンを作れば『これしかレパートリーがないの?』と嘲笑され、食器を洗えば『洗い残しがあって雑』と罵られ、洗濯物を干したら『もっとシワを伸ばしてから干して』とダメ出しされるなど、けなされ続けたので手伝う気が失せました」(28歳・結婚歴2年)

 実際の忙しさを比較した際の不満や、家事を手伝っても、感謝どころかいわゆる「家事労働ハラスメント」(妻による、家事に対するダメ出し)を受けたなど、夫には夫なりの言い分があることがわかる。

 では、どうすれば、このような共働き夫婦間のケンカや不満が解消されるのだろうか?

●お互いに思いやりと感謝の言葉が大事

 共働きであっても、関係が良好な夫婦の話も紹介しよう。


「うちの旦那さんは、以前はほぼ家事を手伝ってくれなかったのですが、ある時、料理を作ってくれた日がありました。その料理は正直なところ、別に特段おいしかったわけではなかったのですが、オーバーに『すごくおいしいよ』と褒めました。そうしたら、それからちょくちょく料理を作ってくれるようになり、そのたびにべた褒めしていたら、今では夕食に関しては週の半分ぐらい担当してくれるようになりました」(45歳・結婚歴20年)

「自分は仕事が忙しいのを理由に、ほぼ家事は手伝えていません。しかし、それについてはすごく申し訳なく思っており、仕事と家事を両立してくれている妻には感謝しかないので、意識的に頻繁に『ありがとう』という言葉をきちんと伝えるようにしています。妻が実際、僕に対してどう思っているかはわかりませんが、妻も僕に対して『いつもお仕事ご苦労さま。あんまりがんばりすぎないでね』などと言ってくれるので、僕ら夫婦は仲良しでいられるのだと思います」(35歳・結婚歴9年)

 “共働き夫婦”と一括りにしてしまいがちだが、夫側の会社での仕事がどれだけ忙しいか、稼ぎはどれだけあるか、一方の妻側の会社での仕事はどれだけ忙しいか、稼ぎはどれだけあるかなど、各家庭の状況はそれぞれに大きく異なるので、「家事や育児を手伝わない夫は悪い」「夫は全体の何割ぐらい家事や育児を手伝うべき」などと言い切れるものではない。

 しかし、夫婦仲が良好だという方々の声に共通しているのは、パートナーへの思いやりがあり、感謝の言葉をしっかり伝えているということだ。家事や育児をどれぐらいの割合で分担するかなどの具体的な対策ももちろん大事だろうが、それ以上に夫婦お互いがパートナーの気持ちをおもんぱかることが不可欠なのではないだろうか。
(文=昌谷大介/A4studio)

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