今年10月から、人気アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)の磯野フネを担当する声優が、麻生美代子氏から寺内よりえ氏に交代したことが話題になった。馴染み深い“初代フネ”の声を聞こうと、麻生氏の最後の出演となった9月27日の放送を見た人も多いかもしれない。
一方、最近の『サザエさん』は、異質な存在感を放つ1人のキャラクターによって、違う意味で注目を集めている。それも含めて、「普通のストーリー展開のアニメや漫画では物足りない」という人のために、有名作品のカオスな展開が繰り広げられた回を紹介しよう。
●『サザエさん』に登場する「堀川くん」
『サザエさん』の異質なキャラとは、アニメ版のみに登場する「堀川くん」だ。例えば、「ホリカワくんの卵」(2014年7月20日放送)という回では、1羽のヒヨコに「わかめ」と名付け、卵が生まれたら「真っ先に人間のワカメちゃんに食べてもらいます!」などと言い出す。
さらに、そのヒヨコが雄だとわかると「堀川二世」と改名、イラストを披露するのだが、そのトゲトゲしいヒヨコの姿は前衛アートさながらだ。びっくりして、猫のタマも逃げ出したほどである。しかも、彼は真顔でこんなことを言って、視聴者をドン引きさせる。
カツオ「すごいよ、堀川くんの絵。タマが逃げていくんだから」
堀川「そんなにほめないでくださいよ」
半端ではない勘違いぶりを発揮する堀川くんが活躍する回は、まだまだ存在する。
壁のしみを弟だと思い込んでカツオに紹介したり、磯野家に不法侵入したあげく、それをとがめられると「ごめん、今度は見つからないようにするよ」とズレた返事をしたり……。国民的アニメに突如として現れたぶっ飛んだキャラは話題を呼び、最近は堀川くんのファンが急増中だという。
●作者が病んでお蔵入りに? 幻の『ちびまる子ちゃん』
「平成のサザエさん」とも呼ばれる『ちびまる子ちゃん』(集英社)にも、カオスな回が存在する。
同回は、洞窟の中で怪しいお面をつけた邪教徒の集団が「神よ、力を与えよ」と叫び踊る、およそあり得ないシーンから始まる。そばには、まる子のクラスメイト「小杉」の死体が転がっている上、その死体にハエがたかっているなど、少女漫画誌とは思えない展開だ。
もちろん、これは夢の中の話だが、こんなテイストの『ちびまる子ちゃん』は前代未聞といえる。夢から覚めた翌日の学校でも、まる子が「永沢くん」と「藤木くん」を邪教徒呼ばわりし、祖父の「友蔵」は節分用の豆を盗み食いする。いつもの『ちびまる子ちゃん』からは想像がつかない、支離滅裂な展開が繰り広げられているのだ。
あまりに普段からはかけ離れた内容に、「当時、作者のさくらももこが超多忙で休みがとれなかったため、精神的に病んでいた」という説まである。そのためか、同回は「りぼん」には掲載されたものの、単行本には収録されていない。“封印作品”として、今は国立国会図書館などでしか読むことのできない、幻の『ちびまる子ちゃん』となっているのだ。
●まるでホラー! あり得ない展開の『クレヨンしんちゃん』
夢をネタに、通常ならあり得ない奇妙なストーリーが展開されるという意味では『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)にも同じような回がある。しんちゃんの友達の「風間くん」が主役の「恐怖の幼稚園だゾ」(97年8月8日放送)は、その子供向けとは思えない内容から、ファンの間でレアな回として有名だ。
幼稚園に向かう朝のバスには、いつもの「よしなが先生」が乗っておらず、その日のお迎えは「まつざか先生」だった。
「夢か……」と思ったものの、手には小石が握られており、バスの中にいるのは、まつざか先生だ。夢の始まりと同じ朝がやってきて、風間くんは不安を覚える……。結末をはっきりさせないという点も、『クレヨンしんちゃん』では珍しい。
●のび太がムキムキのマッチョに! 『ドラえもん』の神回
最後に、これも国民的アニメの『ドラえもん』(テレビ朝日系)から、カオスな回を紹介しよう。「ムキムキからだねん土」(14年11月14日放送)は、「絵面がぶっ飛んでいる」と、放送直後からツイッターなどで“神回”との声が上がった。
「ムキムキからだねん土」は、粘土を使って体の一部を自由に成形できる道具だが、のび太が筋肉隆々のマッチョになったり、ドラえもんの身長がバレーボール選手並みに伸びてM字開脚を披露したりと、その絵面のインパクトで視聴者の度肝を抜いた。
今回紹介したのは、ほんの一例にすぎない。よく探せば、あなたの好きなアニメや漫画にも、カオスでレアな“神回”がきっと存在するに違いない。
(文=高橋明日香/清談社)