年明け早々に各メディアで報じられた、タレント・ベッキーとロックバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル・川谷絵音の不倫騒動。昨年10月頃から親交を深めた2人は、今年元日に長崎県の川谷の実家を訪れたという。

川谷は既婚者だが、2人が離婚届を「卒論」と呼び、離婚を心待ちにしているようなLINEの内容も報じられた。

 ベッキーは謝罪会見で「お付き合いということはなく、友人関係であることは間違いありません」と不倫を否定したが、先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)に再び2人のLINEのやり取りが掲載された。それによると、ベッキーは会見前に「友達で押し通す予定!」と発言、川谷も「逆に堂々と(交際)できるキッカケになるかも」と書いており、2人は週刊誌の報道に感謝するような発言もしている。

 仮にこのやり取りが事実であれば、ベッキーの「ただの友達であって、不倫ではない」という弁解は少々苦しいものといわざるを得ない。会見という公の場で嘘をついたことにもなりかねない事態に、インターネット上の一部では「嘘つきベッキー」「ゲスすぎる」「これで認めないほうが不自然」という声も上がっている。

 仮にベッキーが会見で嘘をついていた場合、法的責任を問われることはないのだろうか。弁護士法人ALG&Associatesの榎本啓祐弁護士は、以下のように解説する。

「嘘をつくことで他人にお金を払わせたり、損害を与えたりした場合は、嘘をついた人に法的責任が生じる可能性があります。しかし、法廷での証言など例外的な場合を除き、嘘をつくこと自体で犯罪が成立することはありません。また、嘘をつくことで直ちに民事上の違法性が認められるわけでもありません。

 ベッキーさんの会見での発言が不倫関係を完全に否定したものかどうかは微妙なところですが、仮に芸能人が公の場で嘘をついても、それにより直ちに犯罪行為が成立したり、違法性が認められたりすることはないのです。

 しかし、川谷氏の妻の心情としては、2人が最初から不倫関係を認めて真摯に反省の態度を示した場合よりも、不倫関係を隠し続けていたにもかかわらず、後に証拠が出てきたことなどにより関係が明らかになった場合のほうが、『納得できない』という思いが強くなることが考えられます。


 このような思いは、法的には精神的損害として考慮される可能性があります。そのため、今後裁判などにおいて、川谷氏の妻が夫の不貞行為を理由に慰謝料を請求することになった場合は、ベッキーさんが不倫関係を否定していたことによって、その金額が大きくなる可能性もあります」

●LINE掲載の出版社は名誉毀損に該当の可能性も

 また、このLINEのやり取りは、通常であれば2人しか知り得ないもののため、その流出経路をめぐってさまざまな臆測を呼んでいる。第三者が情報を流出させた場合、その人物の法的責任については、1月12日付記事『ベッキー不倫騒動、LINE流出させた人物は懲役や多額損害賠償の可能性』で榎本弁護士が解説しているが、今回、それを掲載した週刊誌および出版社の法的責任についても聞いた。

「不倫報道に関する出版社の法的責任については、民事上と刑事上に分けて考える必要があります。まず、刑事上の責任としては、名誉毀損などの犯罪が成立する可能性が考えられます。

 名誉毀損罪は、人の社会的評価を低下させるような事実を適示する行為について成立します。週刊誌が不倫の事実を公表する行為は、人の社会的評価を低下させることになり得るため、同罪が成立する可能性があります。

 ただし、名誉毀損罪は被害者などからの告訴がなければ公訴が提起されない親告罪にあたります。したがって、名誉を毀損されたベッキーさんや川谷氏側から告訴されなければ、出版社に対する刑事裁判は行われず、刑事罰は科されないことになります。

 一方、今回の不倫報道は、私人のプライバシーの範囲内に属する事情になり得るため、これを公表することはプライバシーを侵害するものとして、民法上の違法と判断される可能性があります。

 また、前述のとおり、不倫の事実を公表する行為は名誉毀損罪に該当し得る行為になるため、人の名誉を毀損するものとして、民事上も違法と判断される可能性があります。

 民事上の違法と判断されれば不法行為が成立し、出版社に損害賠償義務などが生じる可能性があります。
ただし、芸能人のプライバシーについては『芸能活動をしている以上、私生活について、ある程度公表されることも承諾していたはず』といった考えから、プライバシー侵害について法的責任を追及できる範囲が狭くなる可能性があります。過去の裁判例においても、芸能人の写真を無断で雑誌に掲載した行為について、同じような趣旨の判断をしたものがあります」(榎本弁護士)

 この騒動がどんな決着を見せるのか、注目したいところだ。
(文=編集部、協力=弁護士法人ALG&Associates・榎本啓祐弁護士)

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