現在開催されている第88回選抜高校野球大会で優勝候補にも挙がっている野球の名門、大阪桐蔭(とういん)高校。23日に行われた1回戦では土佐高校を9対0の大差で下し、格の違いを見せつけた。

同校の西谷浩一監督は「名将」として高校野球ファンであれば誰でも知っているが、別の「素顔」があることはあまり知られていない。大阪桐蔭を経営している学校法人・大阪産業大学の幹部は「西谷氏のあだ名は『運転手』。元大阪桐蔭校長で学校法人の副理事長を務めた森山信一氏の側近であり、よく森山氏の運転手役を務めていた」と語る。

 大阪桐蔭は中高一貫の文武両道の私学で、学校法人・大阪産業大学の傘下にある。森山氏は1988年から25年間、大阪桐蔭中高の校長を務め、同校を関西では有力な私学に育てた実力者といわれる。

 しかし、森山氏は昨年春に刑事告発された。
その内容は、保護者から集めた教材費や模試受験料の一部を裏金として約5億円プールし、約1億2000万円が不正使用されていたとされるものだ。裏金づくりと不正使用の中心にいたとされるのが森山氏だ。裏金の使途は高級バッグやスカーフ、ゴルフ代、飲食代など。裏金から森山氏と娘の口座に毎月多額の現金も振り込まれていたという。

 裏金づくり以外でも、森山氏には金にまつわる不祥事がある。副理事長時代、法人の資産運用のために「仕組債」と呼ばれる博打まがいの金融商品に手を出し、リーマンショックの影響で大損してしまったのだ。
法人側は金融商品を売り込んだ野村證券と裁判を起こす事態となった。結局、この責任を取るかたちで副理事長職は降りたものの、大阪桐蔭の校長には居座り続け、法人の「影のドン」として人事などにも口を挟んできた。

 こんな指摘もある。

「学校に出入りしている警備業者や大阪桐蔭の野球部に出入りしている業者から寄付などの名目で金を集め、飲み食いの費用に充てていた。さらには、優秀な学生を大阪桐蔭中高に誘導してもらうために、学習塾経営者の接待を盛んに行っていた」(大阪産業大元幹部)

●実態を知り過ぎた人物

 また、森山氏は短期間で大阪桐蔭を野球で有名にして生徒を集め、同時に進学校化も推進した。このため、学校運営を会社経営に見立て、ブランド戦略や教員育成などにも力を入れた。
これはこれで一定の業績を認めてもよいのだろうが、裏金づくりはいただけない。

 こうした金まみれの森山氏の側近が西谷氏なのである。西谷氏は同校の社会科教諭も務めており、教員としても森山氏の支配下に置かれていた。汚職などの不正を働く大物政治家の秘書や運転手は、政治家の行状をすべて知っているケースが多い。ロッキード事件で田中角栄氏の運転手も怪死しており、当時は、「知り過ぎていたので暗殺された」との噂も出回ったほどだ。同様に西谷氏も「森山氏の金まみれの実態を知り過ぎた人物」と校内では囁かれている。


 西谷氏は「名将」とはいえ、こうした人物が教育の一環である高校野球に携わることに違和感を覚える関係者もさぞ多いことだろう。
(文=編集部)