ロックバンド・ゲスの極み乙女。の川谷絵音とベッキーに始まり、最近では『五体不満足』(講談社)で知られる乙武洋匡氏など、2016年は数々の不倫スキャンダルが世間を賑わせている。



 多くの批判やバッシングを受けるものの、現在の日本では、不倫によって厳しい刑罰を受けることはない。タレントの場合は番組降板や一時的な休業、一般の会社員であれば、悪くても左遷される程度で済むだろう。

 しかし、時代や国が違ったらどうだろうか。不倫が発覚した有名人たちには、「姦通罪」が適用されていたかもしれない。姦通罪とは、婚姻して配偶者のある者が、配偶者以外の者と性的関係を持つことによる犯罪である。日本では、夫のある女性に対して規定されており、かつては禁錮刑などの対象だったが、1947年に刑法から姦通罪を禁じる条文が削除された。

●“自宅不倫”の矢口真里は、その場で切り捨てられていた?

 日本では古くから不倫は重罪とされており、罪が認められれば死罪になることもあった。また、当事者のみならず、協力者も厳罰の対象とされた。

 例えば、「夫=家の主」という封建制が色濃かった江戸時代においては、妻の不義密通を目撃した場合、夫はその場で妻と間男を切り捨ててもかまわなかったという。

 13年にタレントの矢口真里がモデルの梅田賢三との“自宅不倫”を当時の夫・中村昌也に目撃されるという騒動が起きたが、世が世なら、矢口は中村に切り捨てられていたかもしれないのだ。

 ただし、不倫しているのが夫の場合、事情が少々変わってくる。戦前の日本では、側室や妾を持つことが男の甲斐性とされ、人妻が相手でなければ、いくら不倫をしてもお咎めなしだった。


 かつての姦通罪も、あくまで妻の不倫が対象であり、夫の告訴によって妻は6カ月以上2年以下の禁錮刑に処された。ただし、人妻と不倫した場合は男側も無傷では済まず、相手の男に対しても姦通罪が適用された。江戸時代から戦前までの日本では、不倫という「罪」は「夫=家の主」を守るという意味合いがあったのである。

●いまだに姦通罪が成立するアメリカや中国

 諸外国でも、姦通罪で問題とされるのは妻側だが、例外は韓国だ。韓国の姦通罪は、妻が夫を訴えることができるという世界的にも珍しいもので、妻の主張が認められると、不倫した夫に2年以下の懲役が科せられていた。

 そのため、人気歌手などの有名人が妻から姦通罪で告訴されることがよくあり、1982年には現職の国会議員が姦通罪の容疑で拘束され、辞職する事件も起きている。

 とはいえ、世界的に姦通罪は時代遅れとされ、ほとんどの先進国では20世紀に入る頃に廃止された。韓国の姦通罪も15年にようやく廃止され、現在では不倫現場に警察が踏み込むこともない。

 そんな中、いまだに姦通罪が存在する国や地域があるのも事実だ。アメリカの東部や南部のいくつかの州では姦通を犯罪と定めている地域があり、さらに中国でも14年、政府や党、企業幹部の10人が姦通を理由に身柄を拘束される事件があった。

 これは習近平国家主席による「腐敗撲滅キャンペーン」の一環だったとされるが、宮崎謙介元衆議院議員の“ゲス不倫”も、中国であれば当局に身柄を拘束されていたかもしれないわけだ。

●ブルネイでは姦通罪で石打ちの刑に!

 一方、パキスタンやアフガニスタン、ソマリアなど、イスラム諸国の多くでは、現在も姦通罪が当然のように存在している。
イスラム諸国では女性の性的自由が厳しく制限されているが、姦通罪においても、罪に問われるのは女性のみで、最悪の場合は「石打ちの刑」に処される。

 石打ちとは、古代から伝わる処刑法で、下半身を生き埋めにして動けない状態の罪人に大勢の者が石を投げつけて死に至らしめるという、残忍極まりないものだ。

 石打ちは人権擁護団体などの批判を受けて廃止する動きもあるが、東南アジアのイスラム教国のブルネイでは、14年に姦通罪の刑罰として石打ちを導入することを発表。廃止どころか、今後は不倫した人妻を石打ちにすると発表したために、世界中を驚かせた。

 時代や国が違えば、不倫は時に死に至る行為だったわけだ。そのデメリットは想像を絶するほど大きいため、欲望に負けて不倫に手を染めようとしている人は、思い直したほうがよさそうだ。
(文=中村未来/清談社)

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