今月発生した熊本地震は、電機業界と自動車業界を直撃した。熊本には半導体関連工場が多く、業界への影響は小さくない。
東日本大震災(2011年)やタイ洪水(同)で企業はサプライチェーンの確保を学習したが、それでも今回の熊本地震ではトヨタ自動車が一時的に全国的な生産停止に追い込まれた。本稿では、改めて熊本地震の業界大手に与えた影響とその復旧状況の一部を採り上げ、文末に電機・エレクトロニクス業界における熊本進出企業一覧をまとめた。
熊本に進出するメーカーの復旧は急速に進んでいる。4月下旬の段階で、すでに再開を始めた工場も少なくない。業界最大の関心だったルネサス エレクトロニクスの生産拠点、ルネサスセミコンダクタ マニュファクチュアリング(茨城県ひたちなか市)川尻工場(熊本県熊本市南区)も、操業が止まった前震から1週間後の22日には稼働再開にこぎつけた。しかし、フル生産のメドは立っておらず、どの程度の供給量がこれから確保していけるかはなお未知数だ。ルネサス川尻工場は従業員900人を抱え、自動車用マイコンの前工程などを手がけている。
またルネサスの下請け工場も被害を受けており、これら工場の中には再開がかなり遅れそうなところもある。下請工場の生産停止が仮に1カ月、2カ月と伸びると体力的に会社の維持が難しくなる会社が現れないとも限らない。
またソニーは、子会社であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(熊本県菊池郡菊陽町)の工場があり、CMOSセンサーなど最先端の映像デバイスおよびカメラモジュールなどを生産しているが、4月下旬の段階ではまだ再開のメドが立っておらず、その影響も精査できていない。このためソニーは、地震による工場停止の影響を精査するという理由で17年3月期の決算予想発表を延期した。
ソニーは本来ならばゴールデンウィーク前の4月28日には決算と予想を公表することになっていたが、決算予想については5月まで延期した。
【熊本に工場を持つ電機・エレクトロニクス業界の企業一覧】
※クリアリーフ総研調べ・五十音順・同社ホームページ上では各工場の稼働再開状況なども随時報道
アーレスティ熊本、愛三熊本、アイシン九州、青山製作所、井関熊本製造所、イノアックコーポレーション、インターアクション、インターテック、エイティー九州、エヌ.エフ.ティ、NOK、荏原製作所、エム・エス・ディ、エム・テクニック、応用電機、オジックテクノロジーズ、オムロン阿蘇、オムロンリレーアンドデバイス、加賀コンポーネント、神田工業、九州エバーロイ、九州エフ・シー・シー、九州エフテック、九州三永金属工業、九州三和鉄軌、九州ショーワ、九州精鍛、九州テイ・エス、九州電子、九州トリックス、九州日誠電氣、九州丸一鋼管、九州武蔵精密、京写、熊本アイディーエム、熊本テクノ、熊本ニチアス、熊本ファイン、熊本マランツ、クリスタル光学、江東電気、コスミック、サン・エレクトロニクス、三幸九州TEC、サンテック、サンユー工業、サンワ ハイテック、JNC、JNC開発、ジェイデバイス、信越石英、新興製機、新日本ステンレス工業、新菱、伸和コントロールズ、SCREENホールディングス、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、タチバナ化成、中央電子工業、テクノフレックス、テセック、テラダイン、テラプローブ、東海カーボン、東京エレクトロン九州、東京応化工業、東邦電子、トッパンエレクトロニクスプロダクツ、内外エレクトロニクス、ナカヤマ精密、二進製作所、日精電子、ニフコ熊本、日本合成工業、日本精密電子、日本電子材料、日本ピラー工業、野毛電気工業、パナソニックプレシジョンデバイス、濱田重工、平井精密工業、平田機工、フジクラプレシジョン、富士精工、富士フイルム九州、ブリヂストン、プレテックAT、HOYA、堀場エステック、本田技研工業、マシン・アイランドグループ、三井ハイテック、三菱電機、ミライアル、吉野電子工業、ランドコンピュータ、理化電子、ルネサス セミコンダクタ パッケージ&テストソリューションズ、ルネサスセミコンダクタ マニュファクチュアリング、ローツェ、ワイエイシイ
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)