デリバリーヘルス、いわゆるデリヘルについては、この種の営業への賛否はともかく、存在自体を知らない人はいないだろう。
いわゆる風俗業全般を毛嫌いする人も多くいるが、街のファッションヘルス(店舗型)に行くよりは気軽に、自宅やホテルに女性を呼んで欲求を満たせるために、利用する人は多い。
筆者は自身で利用はしないが、必要悪として存在を認める立場だ。このデリヘル、法律上どうなのかというと、風営法上は無店舗型性風俗特殊営業とされ、「人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」と定義された合法な営業である。
「性的好奇心に応じてその客に接客する」という回りくどい表現といい、突っ込みどころ満載であるが、いずれにせよ都道府県公安委員会(警察)に届ければ、過去5年に一定の犯罪を犯していないなど欠格事由に該当しなければ、店舗を構える必要がないため誰でも手軽に始められる商売ともいえる。仕入れは必要なく、掛かるのはほとんど人件費だけなので、悪徳業者が入り込みやすい業種ではある。
●示談書
実はここに、ある「示談書」の写しが2通ある。本来は、この2通でひとつの示談書を構成するはずなのだが、これらは地方の中核都市から東京出張でホテル滞在中のA氏から提供されたものだ。
A氏が知り合いの勧めで都内のデリヘルBにデリヘル嬢を派遣してもらったものの、デリヘル嬢とトラブルになった際に作成されたものだそうだ。A氏によると、酔った勢いでついついデリヘル嬢に強引に本番を迫ってしまった。デリヘル嬢が即座に店に電話したところ、副店長なる者(C)が飛んできて、デリヘル嬢を帰したうえで、「規約違反だ。どう責任を取るんだ」とA氏を脅し始めた。
A氏は「このままでは翌日帰れなくなるのではないか」「家族に知られたら格好悪い」など悩んだ末、示談書を書くことになる。
まず、「C氏個人の口座に」というのが明らかにおかしい。もし恐喝で警察沙汰になったとしても、C氏個人がやったことと主張するためにマニュアル化しているのだろう。
一方、もうひとつの「示談書」には、C氏が「本日起きた件については、示談金を受け取ることで、一切の申し出はしない。A氏の個人情報はすべて消し、自宅及び会社に行かない。携帯に電話したり、新たな金額の要求もしたりしない。この約束を破った場合は、A氏から100万円を要求してもらっても構わないし、被害届を出してもいい」旨を書き、署名している。
「分割払いが滞ったら、家や会社に押しかけるぞ」という脅迫状であることは確かである。
A氏は警察関係者に相談しつつ、Bを勧めた知り合いに話したところ、その知り合いがBと手打ちをしたようである。正当な要求なら堂々とやればよいので、手打ちにしたこと自体、A氏が10万円の恐喝被害にあったことの証拠といえそうだ。
●運営側の実態
ではA氏は、たまたまたちの悪いCにやられたのだろうか? いや、そうではないようだ。実際、警視庁にはBの客からの110番が相次いでいるらしく、組織的にやっているのは明らかだと思われる。
このBは、どういう業者だろうか。飲食店なども経営しており、一部で人気が高いデリヘルのようである。しかし、経営には反社会的勢力も関与しているといわれ、関係者同士が一緒にいる場面が目撃されている。こんな組織に個人情報を掴まれたら、一生落ち着いて生活できないであろう。
他社のデリヘル店でも、何かと理由をつけては客から金を巻き上げたり、同業者への支払いも誤魔化したり違法行為や脱税を行っている店など、数え上げたらキリがない。
では、どの店なら大丈夫なのか。
残念ながら、筆者は利用しないのでよくわからない。反社会的勢力と無関係な業者もいるのを筆者は確認しているが、そこを推薦するのは本稿の目的ではないので控えておく。Bなどは、インターネットで検索すれば、今回紹介したような情報はなかなか出てこない(悪い情報は専門業者に頼んで消したりして、それなりに対策をしているのであろう)が、悪評については色々出てくるので、参考にはなる。
以上にみてきたような特徴を持つデリヘルを運営している側に、あなたの個人情報を掴まれることの危険性は計り知れない。
(文=関村泰久/ジャーナリスト)