近頃、ホテル代わりに「ネットルーム」を利用する人が増えている。ネットカフェや漫画喫茶のようなフリードリンクや漫画本のサービスは提供されないが、そのほとんどは快適なインターネット環境に加え、完全個室。
「ネットカフェは、例えば急な出張で宿が必要になった人や、終電を逃した人などの利用も多いです。東京都内の一般的なネットカフェですと、大体8時間過ごすのに2000円も要りませんから、ホテルに泊まるより断然安い。そこで今、こうしたニーズに目をつけた企業がネットルームを展開しているようです」
こう語るのは、ネットルーム業界関係者。
「ネットカフェ大手の『マンボー』も、すでに東京都内と神奈川県に複数の『ネットルームマンボー』を展開。また、今年6月1日には、北海道で『JOY-Cafe(ジョイカフェ)』を運営するオカモトグループが、東京・池袋に『NET MARU(ネトマル)』というネットルームを新たにオープンさせました。もちろんどちらも完全個室で、シャワーやランドリーコーナーなどが備わっています。ホテルのようにフロントにルームキーを預ければ出入りも自由なので、食事や買い物の心配もいりません」
そのほかWi-Fiや喫煙所も完備されているそうで、まさに宿代わりにはもってこいのようだ。
しかし、ネットルームマンボーの口コミを調べてみると、「ドライヤーがない」「店内が派手でラブホテルみたい」など、少々気掛かりな意見も。一方、NET MARUはオープンしたばかりで口コミが少ないものの、「かなりキレイ。ホテルみたいでまた来たい」などと評価されている。そこで、筆者も実際にマンボーとNET MARUを利用してみた。
●室内でのスマホ通話OK
まずはマンボーの「ネットルーム 新大久保店」へ。店の入り口はギラギラと輝く装飾が施されており、フロントもゴールドで派手。ラブホテルとまではいわないが、カラオケ店のような印象を受けた。
受付で身分証を確認され、無料の会員登録を行った後、料金の説明。スタンダードルームが1時間300円なのに対し、レディースは1時間100円と格安なのが魅力的。しかし、残念ながらこの日はどちらも満席で、結局1時間400円のデラックスルームに通された。やはり、安い部屋は人気なのだろう。ちなみに、翌朝11時までの1DAYプランならスタンダードが2600円、レディースは2200円に設定されていた。
指定された部屋のルームキーを受け取り、さっそく室内へ。デラックスというだけあって十分な広さがあり、大柄な人にはむしろちょうどいいかもしれない。また、入り口や受付のきらびやかさとは違い、個室内は茶色と白の配色。これなら十分落ち着いて過ごせそうだ。
さらに、案内カタログを確認すると、女性専用のパウダールームではドライヤーの無料貸出が行われているとのこと。もしや客の要望を受けてドライヤーを導入したのかと思い、フロントに問い合わせたところ、「男性のお客様が使用できるドライヤーはございません」と、あくまでも女性客のみを対象としたサービスだった。
せっかくなので、10分100円のコインシャワーも体験。シャンプーやリンスなどのアメニティは自動販売機にて400円で販売されていて、バスタオルは別途400円。コンビニで一式揃えるのと変わらないと思うが、出張や旅行で長期滞在する人は持参しても良いかもしれない。
ちなみに、男性用のアメニティセットにもシャンプー類が入っていたが、それならばドライヤーも必要ではないか。シャワールーム自体は共用スペースのわりに目立った汚れもなく、脱衣所の鏡も綺麗に磨かれていた。
ついでにトイレとランドリーコーナーもチェック。トイレの清掃は行き届いているようだったが、便座用の除菌クリーナーなどがなかったのは残念。また、ランドリーコーナーは洗濯1回200円で、洗剤は50円で販売。乾燥機は15分100円で、夏場なら1回分の料金内で済みそうだ。
最後は部屋に戻り、防音の程度を体感。
●シャワースペースも清潔
続いて、オープンしたばかりの「NET MARU(ネトマル)池袋西口店」を訪問。ホームページに「池袋駅より徒歩5分。または、地下通路1a出口でてすぐ」と書かれていた通りで、雨の日でも安心だ。
受付に向かうと、店内はホームページと同じ黒と黄色の配色が印象的。こちらでも身分証確認は必須で、無料の会員登録を行った。料金の説明を受けると、スタンダードルームが1時間500円、女性専用ルームが1時間600円と、ネットルームマンボーとは逆に女性専用のほうが高額に設定されていた。この差について店員に聞いてみた。
「まず、専用エリアに入るためのセキュリティが守られていることと、備品が充実していることです。スタンダードのシャワールームにはアメニティがないので、自動販売機で購入していただけますが、女性専用には無料のシャンプーやリンスなどが備え付けられています」
マンボーのセキュリティもしっかりしていたが、今回は充実した備品につられて女性専用を選択。ちなみに1DAYプランはスタンダードが3500円、女性専用は3800円と、やはりマンボーと比べると高く感じるものの、それでもホテルに泊まるよりは安い。
指定された個室に入ると、黒と白のシックな配色。女性が寝そべる広さも十分あり、座椅子とクッションもあった。そういえば、マンボーで利用した部屋には椅子もクッションもなく、ブランケットも800円で販売されていた。NET MARUもブランケットを販売しているが、200円でレンタルすることもできる。新品を求める人でなければ、わざわざ購入しなくても良さそうだ。
こうした点も女性専用の特権かと思いきや、スタンダード利用でも同じだという。さらに、NET MARUは男女ともにドライヤーを無料貸出しているので、男性も安心してシャワーを利用できるだろう。ちなみに、自動販売機で販売されているアメニティセットは300円、バスタオルは500円で購入できる。10分100円のシャワースペースも、やはり新店なだけあって清潔だった。
NET MARUでもトイレとランドリーコーナーをチェックすると、トイレには便座用の除菌クリーナーが完備されていて好印象。また、ランドリーコーナーは洗濯1回300円で、洗剤は不要のタイプ。
部屋の防音も、マンボーと同程度。部屋によるかもしれないが、一度受付の電話が鳴る音が聞こえたので、こちらも気になる人には耳栓持参をお勧めしたい。
また、部屋を見渡して気付いたのは、ティッシュと消臭スプレーが備え付けられていたこと。消臭スプレーは女性専用の備品らしいが、ティッシュは全室に完備。実は、マンボーにはティッシュもなく、部屋で食事をするのに少々困った。こうした細かな気配りが、料金の差に表れていることがわかった。
●事前予約がお勧め
このように2店を比較したところで、前出のネットルーム関係者から次のような話を聞いた。
「マンボーを見てもわかるように、女性専用は料金やサービスの点でかなり人気がある。NET MARUも同様で、予約をお勧めします」
そんななか、マンボーが6月27日に「ネットルーム 北新宿店」をオープンさせたという情報をキャッチ。足を運んでみるとレディースに空きがあったので、数時間滞在してみた。室内は白とピンクでかわいらしく、清潔感も感じられたが、やはり座椅子やクッション、ティッシュはなかった。
「客にとっては料金と同じくらい、サービスも大事。また、このような施設が次々とオープンされている背景には、2020年の東京オリンピックで懸念される宿泊施設不足を補うという側面もあります。今後も低価格のプライベート空間の提供に乗り出す企業が増え、価格だけではなくサービスでも競う必要が出てくるでしょう」(同)
今回調査したマンボーもNET MARUも個室に鍵が付いていて安心だったが、今後競合店が増えると予想されるなかで、安全面の強化にも一層力を入れてもらいたい。
(文=編集部)