久々の復活を遂げた宇多田ヒカルのアルバム『Fantome』(UNIVERSAL MUSIC)が、初週売上25万3,000枚を記録し、10月10日付オリコン週間アルバムランキングで初登場1位を獲得した。

 iTunesアルバム総合ランキングでは、全米3位を記録。

アジア各国においても、香港、台湾、シンガポールで1位になったほか、ヨーロッパでも多くの国で軒並み上位になるなど一時世界的なムーヴメントを巻き起こし、宇多田本人も驚いたようだ。

 その影で、世間的に苦渋を舐めたと見られているのがEXILEだ。宇多田のアルバムの前日に発売された『EXTREME BEST』(rhythm zone)が17万8,000枚で2位を獲得。こちらも近年のCDアルバムとしてはかなりすごいのだが……。

 「CDのみ」「CD+DVD」「CD+Blu-ray」をリリースし、購入特典として、ポスターや、オリジナルパスケース&ステッカーが付いてくるといった特典商法を用いて売上を上げようとした手法での2位に、「CD勝負の宇多田に負けた」「姑息な手では正攻法に勝てない」などという声が上がっている。

 実際のところ、かつてファーストアルバムが800万枚を売り上げた史上最高クラスの歌姫が相手というのは、EXILEとしても相手が悪かったとしか言いようがない。そもそも対決姿勢だったわけでもないのだろうが。

 ただ、これだけセールスに差がついたのには、いくつか明確な理由があると、記者が語る。

「宇多田ヒカルの楽曲が支持されるのは当然として、あえて『無特典』を選択したことで、よりネット上を中心に情報が拡散され、宣伝になったという面はあるでしょう。近年の音楽業界の真逆をいったわけですからね。EXILEのベストアルバムもCMなどは多くうっていましたが、復活に加え販売手法なども話題になった宇多田のアルバムには拡散力で大きな差が出た。テレビ局もこぞって宇多田を取り上げ、出演させていましたしね。
実質的なプロモーションは、EXILEのほうがよほど地味だったと言えます。それにしても、宇多田の周囲にいるプロモーターなどは本当に売り方が上手だなと」(記者)

 本質としては、結果的に宇多田のほうが広くアルバムの存在を認識させていた、ということか。拡散力がそもそも強いというあたりは、注目度がなせる業か。記者はさらに、EXILEという「形態」がアルバム売上のブレーキになったとも語っている。

「三代目 J Soul BrothersにEXILEにEXILE THE SECOND、E-girlsと、姉妹グループが非常に多いEXILEグループですが、本家の存在感が最近は薄く、一般人の中にはどれがどのグループなのか認識していない人も多い。そんな中で『ベストアルバム』と言われても、何がなんちゃらわからないという声もあります。まあ、グループ全体で見れば映画なども好調ですし、今回も十分満足しているのではないでしょうか」(同)

 宇多田ヒカルという「大型台風」に飲み込まれただけで、グループとしては今回も「ホクホク」だったのかもしれない。

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