食べ合わせには、以下のようにいくつかのタイプがあります。
(1)足りない栄養を補い合う食べ合わせ
(2)合わせることで、それ以上の効果が出る食べ合わせ
(3)悪い要素を打ち消してくれる食べ合わせ
(4)口をさっぱりさせて、さらにたくさんおいしく食べられる食べ合わせ
本当の意味での良い食べ合わせとは、(2)と(3)です。
(1)足りない栄養を補い合う食べ合わせ
1.5+0.5が2になるものです。単に欠点を補う食べ合わせで、以下などが当てはまります。
・集中力低下の改善:クルミと牛乳
・貧血予防:柿(ビタミンC)と牛乳(鉄分)
・ストレス低減:にら(ビタミンC)とサバ(良質な蛋白質)
・疲労回復:蜂蜜(糖質)とレモン(クエン酸)
ただ、現実問題として2種類の食材だけしか食べないということはあり得ません。一食で5~10種類の食材を食べるのですから、この食べ合わせはあまり意味がありません。
(2)合わせることで、それ以上の効果が出る食べ合わせ
こちらは、1+1が3になるもので、相乗効果をもたらす理想の食べ合わせです。例を挙げると以下のとおりです。
・アリシン硫化アリルがビタミンB1の吸収を高める
ねぎと納豆、にらとレバー(ニラレバ)、にらと豚肉(餃子)、らっきょとポークカレー
・クエン酸が唾液胃液の分泌を高め消化を促進
から揚げにレモン
・ナイアシンが二日酔い予防
キムチとマッコリ
・タンニンがアルコールを分解
柿とお酒
・ビタミンDがカルシウムの吸収をアップ
鰹節と冷奴
・オリゴ糖が乳酸菌のえさになる
オリゴ糖とヨーグルト
(3)悪い要素を打ち消してくれる食べ合わせ
これは食材の欠点を補ってくれるお助け食べ合わせです。
・とんかつとキャベツ
キャベツの繊維が豚の脂の吸収を抑える
・刺身とわさび
わさびの殺菌力が食中毒を抑える
・寿司としょうが
生姜の殺菌力が食中毒を抑える
・生ハムとメロン
メロンのカリウムが生ハムの塩分の排泄を助ける
・魚の干物と大根おろし
干物の発がん物質を大根が分解する
(4)口をさっぱりさせて、さらにたくさんおいしく食べられる食べ合わせ
これは口直し効果で、さっぱりしてさらにたくさん食べられるという食べ合わせです。たとえば、カレーと福神漬け、サンドイッチとピクルス、鰻と奈良漬、鰻と梅干のような組み合わせです。
●マイナスの食べ合わせ
これとは別に、一緒に食べるとマイナスになる食べ合わせもあります。
・ビタミンC(大根など)とアスコルビナーゼ(きゅうり、人参)
一緒に食べるとビタミンCが壊される
・ひじきと牡蠣
ひじきが牡蠣の亜鉛の吸収を阻害する
・しらすおろし
シラスのリジンというアミノ酸の吸収が大根の抗体で阻害される
・天ぷらとビール
ビールや氷水、西瓜などは胃腸を冷やし、天ぷらの脂分の消化を邪魔する
・ドリアンとビール
胃の中で異常発酵が起きて胃がパンクする
●悪い食生活
さらに、現代人の病気や体調不良などを引き起こしていると思われる、悪い食生活の例も挙げてみましょう。
・早食い…胃に負担がかかり腸のバランスもよくない
・食べ放題、バイキング…体が欲している量以上に食べてしまう
・冷たい飲み物を飲みすぎる…冷酒や酎ハイ、生ビールは胃腸を冷やし免疫力を低下させる
・情報に惑わされ体に良いからと、1種類のものばかり食べ続ける…万が一情報が訂正されて害があるとわかったら被害甚大
結論として言わせていただくと、みなさん食事の内容に無頓着すぎます。
食事とは栄養補給だけではなく、人生のうるおいにとって重要なものです。気持ちが豊かで温かいムードの食事をとることがストレス改善になるし、幸せホルモンを増やしてくれるのです。
(文=秋津壽男/総合内科専門医、秋津医院院長)