毎年年末恒例のテレビ番組『NHK紅白歌合戦』が、2016年大みそかに放送され、平均視聴率は第1部が35.1%、第2部は40.2%だったことが発表された(共にビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)。特に第2部は、2部制に以降した1989年以降としては“歴代最低”の39.2%を記録した前年(15年)を辛うじて1.0%上回り、第1部は前年より0.3%の上昇となった。
視聴率的にはなんとか「前年超え」を達成した一方、その演出をめぐっては早くも「謎が多い」と話題になっており、インターネットニュースなどでも数多くの指摘がなされている。実際に今回の『紅白』を視た視聴者たちからは、次のような疑問の声が聞こえてくる。
「司会の有村架純と嵐の相葉雅紀が拙すぎて、さらに“噛みすぎ”で、視ていてイライラした。ムードや進行をぶち壊していた」(40代男性)
「若い視聴者を増やすために演歌歌手を減らして若者受けする歌手を増やしたという事情はわかるけど、『なんでこの歌手が?』と意味不明に感じる人選が多かった。たとえば、PUFFYやX JAPAN、イエモン(THE YELLOW MONKEY)とか、『なんで今さら』と思ってしまった」(40代男性)
「ジャニーズグループが5組も出ている意味が、よくわからない。単純計算で10組に1組がジャニーズというのは異常だと思う。V6とかTOKIOとか見せられても、困惑してしまう」(50代女性)
「嵐が大トリというのが、軽すぎて、ふさわしくないと感じた。メドレーだったけど、多くの人は知らない曲ばかりだと思う。大トリが大御所の歌手である必要はないと思うけど、少なくとも多くの日本人の心に響く曲、感動する曲にするべきではないか。そういう意味では、大竹しのぶ(『愛の讃歌』)やゆず(『見上げてごらん夜の星を ~ぼくらのうた~』のほうが大トリにふさわしかったのではないか」(60代男性)
「番組の途中途中で、ピコ太郎とオリエンタルラジオ(ユニットのRADIO FISHとして出場)のコント風のシーンや、タモリとマツコ・デラックスの寸劇、平野ノラのギャグなど、小ネタが挟み込まれていたが、前後の曲と無関係で、そのたびに『ん?』と思ってしまい、番組の流れが止まって、非常に違和感を感じた」(50代女性)
●進行全体の不自然さ
こうした一般視聴者の感想について、テレビ局関係者が語る。
「番組全体の演出や進行の面からいえば、各パートが前後との関連性が考えられていないため“ブツ切れ”で、全体としてチグハグになってしまっていた。さらに司会の2人が台詞をつっかえたり、しゃべりも進行も下手で変な“間”が空いてしまう場面も多数あり、放送事故レベルにひどかったことも、進行全体の不自然さを強調させる結果になっていました」
また、別のテレビ局関係者は語る。
「15年放送回で歴代最低視聴率をマークして危機感を抱いたNHKは今回、挽回のために若い視聴者の獲得を狙って、出演者選びの抜本的な見直しを図りました。その象徴が和田アキ子や伍代夏子、藤あや子など常連組だった大物歌手の落選です。番組に貢献もせず、過去の実績や知名度、事務所とのしがらみで出続けていたような歌手は容赦なく落選させるという方針でした。ただ、そもそも『紅白』のメイン視聴者層は50代より上の世代で、それより下の世代は年々『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!絶対に笑ってはいけない』シリーズ(日本テレビ系)に奪われているという分析もあり、いくら40代以下の視聴者を意識した番組づくりをしても、視聴率の大幅な改善には結びつかないのではないでしょうか。今回の『紅白』視聴率が、それを物語っています」
国民的テレビ番組は、大きな岐路を迎えているといえよう。
(文=編集部)