飛ぶ鳥を落とす勢いのフリーマーケットアプリ「メルカリ」。
わずか3分程度で出品できるシンプルな仕組みをはじめ、出品者と購入者がお互い匿名のまま、住所も知らせることなく配送できるシステム、質問や値下げ交渉も簡単にできるコメント機能、金銭のやりとりは運営側が間に入り行うエスクロー(仲介)取引システムを採用するなど、手軽さや使い勝手のよさが若い世代を中心に受け、2016年12月現在、アプリのダウンロード数は日米合算で6000万ダウンロードを突破している。
1日当たりの出品数は100万件以上、月間の購入金額は100億円以上というモンスターアプリへと急成長しており、オークションとフリーマーケットという形態の違いはあるものの、インターネットを介する個人間売買として国内最大規模の「ヤフオク!」を脅かす存在となっている。
特に10代後半から20代前半までの若年層で人気が高く、実際に中高生のユーザーも急増しているようだが、それに伴ってかトラブルも増えているという。ネット上では、メルカリでトラブルが起きたとの情報が多い。
●一般常識が欠如しているユーザーが多い?
たとえば、出品されていた写真と実際に届いた現物が違う、もしくは商品状態が著しく悪いといったトラブルは、個人売買では多々あることなので致し方ないことなのかもしれないが、それだけではなくユーザーのマナーの悪さからトラブルに発展するケースも多いようだ。
メルカリユーザーに取材したところ、次のような体験談が出てきた。
「購入した服が出品時の写真よりもずっと使い古されたような状態で、商品説明にあった付属品もついていなかったんです。そこで出品者に説明を求めるコメントを送ったのですが2回無視され、3回目でようやく返事が来たと思ったら『もうあなたとは取引しません』とひと言のみ。こっちのセリフだと思っちゃいました」(女性/20代前半)
「私が出品者の場合、出品額の半額ぐらいの値引きを要求してくる人はしょっちゅういます。しかも、そういう人は5000円で出品していたものを『2500円なら即買いします』といった感じの“上から目線”の発言が多くてイラッとします。相手の年齢はわかりませんが、言葉遣いが幼稚で、一般常識が欠けた言動を平気でとるユーザーが、ここ1年ぐらいですごく増えてきている印象です」(女性/20代後半)
「以前、出品していたものを値切りに値切られて、結局根負けして最終的に半額で売ることにしたんです。だから、経費や労力を省こうとシンプルな梱包で発送しました。そうしたら、購入者から『梱包が雑だった』との理由で悪い評価を付けられました。
もちろん、快適に利用できているユーザーも多いとは思うが、こういった不満の声が多く噴出しているのも事実である。
●メルカリに直撃
そこで、実際に運営側はどのような対応をしているのか、株式会社メルカリの広報担当・中澤理香氏に話を聞いた。
――メルカリは18歳未満であってもスマートフォンなどを所持していれば誰でも利用できるのでしょうか?
中澤理香氏(以下、中澤) はい、基本的にはご利用いただけます。ただし、メルカリをご利用いただく前に、必ず利用規約に同意していただく必要があり、その規約の中には親権者の同意が必要である旨を記載してあります。
――規約への同意だけでOKなのでしょうか。たとえば、18歳未満の場合は、親権者がサインした同意書の提出を義務付けるといったことはしないのですか。
中澤 いえ、特にそういった対応は取っておりません。ただ、メルカリは電話番号で認証してアカウントを作成していただくので、そういう意味できちんと身元のわかる電話番号が必要ですし、スマホ1台につきひとつのアカウントしか作成できないようになっております。
――個人間売買の場を提供するアプリですので、どうしてもユーザー同士のトラブルは避けられないと思いますが、運営側が把握しているトラブルとしては、どのような事例が多いのでしょうか。
中澤 やはり、購入したユーザー様からの『届いた商品が出品されていたものと違う』『壊れていた』『汚れやシミが付いていた』といった報告事例が多いです。ただ、メルカリは運営側がエスクローしていますので、商品到着後に購入したユーザー様が“受取評価”をしてからでなければ、出品したユーザー様に購入代金が支払われない仕組みとなっています。つまり、商品未着や商品状態の不備によるトラブルは起きにくいシステムとなっています。
●トラブル時には運営側の“神対応”も
――それでもトラブルが発生してしまった際は、どのように対応されるのでしょうか。
中澤 お客様同士で解決していただくのが一番望ましい方法ですから、まずはお客様同士で話し合っていただきます。しかし、当事者同士では収まらないケースもありますので、その際には弊社のカスタマーサポートにご連絡をいただき、スタッフが間に入ってなんらかの対応をさせていただいております。こういった仲裁に関してのマニュアルは特にありませんので、個別の案件に各担当者が臨機応変に対応します。たとえば、返金・返品をするのはどうですかと提案することもありますし、場合によっては弊社が代金の一部を負担するといった対応を取らせていただくこともあります。
――それは端的に言うと、トラブルを収めるために運営側の資金が投じられることもあるということでしょうか。
中澤 はい、その通りです。こういった処置は、2015年後半から行っております。ユーザー様への補償を手厚くするための一環として、ユーザー様が損をしたといった感想を抱かれないように、トラブル解決のために弊社側が、ケース・バイ・ケースで送料や購入代金の一部を負担できるような制度を導入しているのです。この制度の導入によって、カスタマーサポートとしても柔軟な対応ができるようになり、ユーザー様からは『運営が返金してくれた』『対応がよかった』といった声をたくさん頂けるようになりました。
――トラブル解決のための資金を計上しているというのはユーザーにはありがたいことだと思いますが、単純に1日100万件以上の出品がある個人間売買の場で、個別案件にも対応していくのはかなり大変なのではないでしょうか。
中澤 確かにその通りですが、実は、弊社は社員の半数以上に当たる約200人がカスタマーサポートのスタッフとなっており、365日24時間体制で対応しています。
――ありがとうございました。
メルカリは、中高生を含む10代、20代のユーザーがメインとのことで、ネットリテラシーや社会常識が欠如しているユーザーの割合も少なくないかもしれない。しかし、運営側は社員の半数をカスタマーサポートスタッフとしているなど、真摯に対応している様子がうかがえた。
今後も順調にユーザー数や出品数の規模が右肩上がりで推移していけば、それに伴って別の問題が浮上してくることもあり得る。その際に、メルカリ運営がどのように対応するのか、注視したい。
(文=昌谷大介、増田理穂子/A4studio)