前所属事務所、レプロエンタテインメントから独立する際の契約違反問題が解決しないまま、一方的に独立し、能年玲奈から改名した女優・のんの活躍が目覚ましい。これまでなら、もっとも影響力のある大手芸能事務所、バーニングプロダクションの傘下である同事務所を敵に回した場合、芸能界では“干される”のが通例だ。
芸能事務所とトラブルを起こして独立した場合、その事務所からメディアや大手スポンサーへの影響力を持つ広告代理店などへ圧力がかけられ、タレントを起用するメディアや会社がなくなってしまう状態になることが多い。しかし、のんの伸び伸びとした活動ぶりは、訴訟問題をないがしろにしているとは思えないほどで、まさに“勝者”のようだ。
その背景には、ここ最近、大手芸能事務所による不手際が相次いだことで、芸能事務所のブラック企業ぶりが広く知られるようになったことが影響していると広告代理店関係者は指摘する。
「最近は、SMAPを解散に追いやったジャニーズ事務所が典型例です。一昨年、『週刊文春』(文芸春秋)の報道で、メリー喜多川副社長の傍若無人ぶりがまかり通る、異様な“ジャニーズ帝国”上層部の構図があからさまになりました。SMAP解散によって、ある意味、ジャニーズ事務所はファンや一般視聴者を敵に回したようなものです。
のんさんについては、独立騒動が起きた当初、業界関係者の間では“世間知らずなのんさんの自分勝手なわがまま”という厳しい見方が多かったのですが、今年、同じレプロ所属の清水富美加さんが幸福の科学に突然出家し、事務所の待遇に対しての不満をブチまけたことで、レプロ側の待遇面での落ち度があったと世論を納得させる結果となった。ある意味、のんさんは清水さんのお陰で、世間のイメージが回復され救われたといえるでしょう」
●レプロは、なぜのんを干せない?
最近ののんの活躍といえば、一番は、昨年公開されたアニメ『この世界の片隅に』(東京テアトル)の主人公の声優を務めたこと。昨年のキネマ旬報ベスト・テン第1位を受賞するなど高い評価を受け、映画は今も公開中だ。3月18日に行われた「第11回声優アワード」授賞式でも特別賞を受賞。これによって、さらにテレビアニメ『鬼平』(テレビ東京系他)での声優の仕事が決まった。1話限りのゲスト出演だが、民放関係者は「ちょっとした仕事のように思う人も多いと思いますが、民放各局にとって、のんさんを地上波で起用するというのはとても画期的なことなのです」という。
「独立騒動を経て、レプロから民放各局には、暗黙の了解として、のんさんの起用に圧力がかけられています。テレビ局としてはレプロと関係を悪くしたくありません。なぜなら、レプロにはスポンサーの評判が高い新垣結衣さんや、最近の若手では中村蒼さん、長谷川京子さんといった人気タレントがたくさんいるからです。一方で、話題づくりもかねて、のんさんを起用した『鬼平』プロデューサーの意図もわかりますし、民放のなかでもレプロとは大きなしがらみのないテレ東だからできたともいえます。しかし、そのテレ東でさえもレギュラー起用にまでいたらないあたりは、レプロへ配慮しているともいえます」(民放テレビ局関係者)
のんは、3月15日から放送されている「LINEモバイル」のテレビCMにも起用された。CM起用は、タレントにとっての醍醐味といえる。CMはイメージが重要なため、スキャンダルの記憶が新しいタレントには、なかなか回ってくることのない仕事。これについて、前出の広告代理店関係者はこう語る。
「不倫騒動を起こしたベッキーさんのCM復帰も、声だけではありましたがLINEでした。ベッキーさんは当初、不倫をしている際のLINEのやり取りや、その後の会見でのウソがバレたことでイメージが失墜しました。しかし、その後さまざまな芸能人たちの“ゲス不倫”問題が次々と週刊誌のスクープ合戦によって暴かれると、世間の印象は、交際相手の口車に乗せられていたベッキーさんは『むしろ可愛そう』といった同情票が増え、ファンだけではなく芸能界の中からも応援する声が増えました。
この“応援されている状態”というのは、話題性だけではなく大きな企業PRにつながるとみられます。
のんや清水の突然の離脱によって、大きな負債を抱えたレプロ。同事務所の稼ぎ頭である新垣も、趣味は「マンガを読むこと」というほど内向的な性格で、10年ほど前には、あまりの多忙に悲鳴を上げて長期休暇を余儀なくされたこともあるため、無理をさせられない状況だという。スキャンダルの表面化は、タレント生命だけでなく、古い体質の芸能事務所の勢力を確実に弱めていっている。
(文=編集部)