あのバトルが一向に沈静化の様子をみせない――。
2日に行われた日本相撲協会の理事候補選挙で落選した貴乃花親方は7日、テレビ番組『独占緊急特報!! 貴乃花親方すべてを語る』(テレビ朝日系)に出演し、弟子の貴ノ岩に対する元横綱・日馬富士による暴行事件をめぐる、協会との“対立劇”について語った。
番組内で貴乃花親方は、貴ノ岩のけがについて協会が「相撲に支障はない。『重傷』という報道に驚いている」と発表したことについて「事実と異なっている」とし、「右側頭部骨折」と書かれた病院の診断書を公開した。また、調査委員会への協力を拒否したとして協会から理事を解任された件について、貴乃花親方は報告や説明のため約20通の文書を協会へ提出していたと説明。さらに、八角理事長(元横綱北勝海)から警察への被害届の取り下げを求められていたことを明かし、「当初から協会が発表することと、私が思っている真実と報告してきたこと、回答してきたことはあまりにも違いがある」と協会への批判を展開した。
「もし貴乃花親方の語った内容が事実であれば、協会が隠蔽工作を行っていたことになります。協会は公益財団法人として定款で『社会的理念と規範に則り、事業を公正かつ適正に運営』『社会的信頼の維持・向上に努める』と定めていますが、この定款に違反していることになり、このまま公益財団法人として認定されたままでよいのか、という議論も出てくるでしょう」(弁護士)
番組放送の翌日8日、協会は、事前の申請書類が提出されていないことや肖像権の侵害を理由に、両国国技館で行われた再発防止検討委員会の会見へのテレビ朝日の出席を禁止した。角界関係者は語る。
「貴乃花親方本人が協会とのやりとりを暴露し、さらにその模様が地上波で大々的に放送されたというのは、協会のみならず角界全体にとって衝撃的なことです。協会が“出禁”という手段に出たというのは、それだけ焦っているということの裏返しで、他局がこうした動きに追随することを牽制するのが目的でしょう。各局がこぞって協会内部の暴露合戦に走ってしまえば、協会としてはたまったものではないですからね。しかし、『協会が隠蔽している』と言われた以上、もし貴乃花親方の言い分に反論があるのであれば、会見なりを開いてしっかり反論すべきだし、公益財団法人である以上その義務がある。それをせず出禁という一方的に口を封じ込めるような方法に出れば、余計に世間から不信を抱かれるに決まっています。
こうした協会の隠蔽体質について、別の角界関係者は語る。
「協会が発行する相撲取材許可証を持っていないマスコミや記者は、協会や支度部屋、力士・親方などへの取材が認められておらず、協会に批判的な記事を書いた記者は許可証を取り上げられてしまいます。過去に東京相撲記者クラブ会友の杉山邦博氏が、テレビ番組でコメンテーターが協会に批判的なコメントをしたことにうなずいたとして取材許可証を没収されたことがあります。また、力士や親方がテレビ番組などに出演する際には、暗黙のルールとして事前に協会に了承を得る必要がありますが、今回、貴乃花親方は出演にあたって協会の許可を得ていません。
これまでこうした手段で報道をコントロールしてきた協会は、貴乃花親方とテレ朝が無断で放送を強行したということに相当な衝撃を受けています。出禁という方法を取ったというのは、同じような動きが広まりマスコミへの“抑え”が効かなくなることに戦々恐々としているからでしょう。いずれにせよ、協会の閉鎖性が一気に露呈したかたちになりました」
相撲協会は、この危機をどう乗り切るのか。
(文=編集部)