4月4日、京都府舞鶴市で開かれた大相撲の春巡業「大相撲舞鶴場所」で、多々見良三市長が土俵上であいさつをしているときに突然、仰向けに倒れた。場内は騒然とし、関係者がうろたえるなか、観客のうちから数人の女性が応急処置に駆けつけた。
目撃者の証言やその時の様子を収めた映像を確認すると、多々見市長が倒れた際、何人かの関係者と思われる男性が土俵に上がって市長の周りを取り囲んでいる。そこへ一般の女性が駆けつけ、男性たちを掻き分けて心臓マッサージを始めた。さらにもう1人、女性が土俵へ上がり、市長の脈を測っているかのような素振りを見せた。
複数の報道では、これらの女性は医療関係者とされている。その後、土俵にはさらに2人ほどの医療関係者らしき女性が上がって多々見市長の様子を見にきている。だが、観客のうちから「女性が土俵に上がっていいのか」といった声が上がり、それに呼応するかたちで「女性の方は土俵から降りてください。男性がお上がりください」という場内アナウンスが流れた。
アナウンスを聞いた女性たちは一度土俵を下りようとしたが、やはり多々見市長の様子が気になったようで、踏みとどまって担架が駆けつけるまで処置にあたっていた。
確かに本来、土俵は女人禁制とされているが、今回は人命にかかわる緊急事態だ。インターネット上では「人の命と伝統のどっちが大切なのか」「これは歴史や礼節を重んじるとは言いません。ただ本来の目的を見失い、固定観念にとらわれているだけ」「優先順位というものがあるだろ」などと批判が続出した。
これを受けて日本相撲協会の公式サイトでは同日、八角信芳理事長が以下の謝罪文を掲載している。
「本日、京都府舞鶴市で行われた巡業中、多々見良三・舞鶴市長が倒れられました。市長のご無事を心よりお祈り申し上げます。とっさの応急措置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。応急措置のさなか、場内アナウンスを担当していた行司が『女性は土俵から降りてください』と複数回アナウンスを行いました。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます」
しかし、これに対しても「今度は若手行司のせいにするのか。とことん自分の責任にはしないのね」「数々の問題を起こしている中のトップである理事長は、なんで責任を取らないのか。一般企業なら辞めているレベル」「理事長のコメント発表が遅すぎる。自発的なものではないな」などと批判の声が噴出している。
また、そもそも土俵を女人禁制にしていることに対しても「さんざん女性客を集めようとしているくせにルールは男尊女卑」「女人禁制なスポーツが国技ってどうなんだろうね」「女人禁制そのものがおかしい。伝統だって悪しきものは廃止してくべき。
しかし一方で「伝統はそう簡単に変えるものではない」「今回の対応は良くなかったかもしれないが、伝統にまでケチつけるのはどうかと思う」といったように、擁護をする意見も少なくない。
今後の相撲協会の対応に注目だ。
(文=編集部)