サッカーの祭典、FIFAワールドカップ(W杯)開幕が迫るなか、スペインの至宝ともいうべきアンドレス・イニエスタ選手が日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)1部のヴィッセル神戸へ完全移籍するというビッグニュースに、サッカー界が沸いている。
名門バルセロナの主将を務めた現役のスペイン代表は5月24日の来日会見で「自分のサッカーを見せるために来た。
3年契約で年俸は2500万ユーロ(約32億4700万円)と伝えられている。Jリーガーの平均年俸は2500万円前後といわれており、破格の待遇ぶりには驚くばかりだが、日本代表監督解任劇をめぐり後味の悪さが続く日本サッカー界の重い空気を吹き飛ばした。
W杯開幕に向けサッカー熱は盛り上がる一方だが、現在の日本のサッカー人口はどのくらいなのだろうか。選手の登録数や高校などの部員数などの個別データはあるが、全体像はなかなか捉えられない。
いろいろと探っていると、意外なところにヒントがあった。総務省統計局の「統計トピックス」が「統計からみたサッカーの状況」というレポートを公表していた。
統計のベースは2017年に公表した「平成28年社会生活基本調査 生活行動に関する結果」という調査だ。そのなかに、「スポーツ」の種類別行動者率というデータがある。10歳以上の人口に占める過去1年間に、該当するスポーツを行った人の割合だ。ここでいうスポーツには、プロ選手の活動や学校の体育授業は含まれないが、クラブ活動や部活動は含まれる。
スポーツ別の順位は次の通り。
(1)ウォーキング・軽い体操 41.3%
(2)器具を使ったトレーニング 14.7%
(3)ボウリング 12.7%
(4)ジョギング・マラソン 12.1%
(5)水泳 11.0%
(6)登山・ハイキング 10.0%
(7)つり 8.7%
(8)ゴルフ 7.9%
(9)サイクリング 7.9%
(10)野球 7.2%
(11)卓球 6.8%
(12)バドミントン 6.7%
(13)サッカー 6.0%
過去1年間にサッカーをした人は、野球や卓球よりも少ないことがわかる。
●サッカーは若者のスポーツ
サッカーの行動者率を年代別にみると、次のようになる。
【10~14歳】4位26.4%
【15~19歳】6位19.8%
【20~24歳】6位14.7%
【25~29歳】9位10.0%
【30~34歳】10位8.8%
【35歳以上】15位2.4%
サッカーの行動者率は、若い人ほど高く、社会人になると急激に落ち込み、会社で管理職になる頃には大半の人が離れてしまっていることがうかがえる。
よく比較される野球はどうか。サッカーと比べてみると、10代ではサッカーが上位だが、20代以降になると野球に逆転されてしまう。10代前半ではサッカー26.4%、野球24.0%と拮抗している。30代後半になると野球は10.0%とかろうじて2ケタをキープしているが、サッカーは8.4%に低下してしまう。50代前半では、野球4.4%に対しサッカーは1.7%。65歳以上では野球も1.1%にまで下がるが、サッカーはわずか0.3%となってしまう。
子どもたちには野球よりもサッカー人気が高く、学校や自治体などのグラウンドで駆け回っている姿が浮かんでくる。社会人になると草野球派がサッカーを上回ってくるのは、運動量の違いのためだろうか。グラウンド内を走り回り続けるサッカーと、攻守が分かれベンチにいる時間も多い野球とでは、運動量の差は歴然としている。
ただ、サッカー人口が減っていく背景はそれだけではない。30代の会社勤め時代に会社の同好会でサッカーをやっていた筆者自身の経験でいえば、サッカーをやりたくてもグラウンドを確保するのが大変だった。都内だけでなく埼玉まで遠征したこともあった。やがてチームは自然消滅した。近くに自由に使えるグラウンドがある環境だったら、もう少し継続できたのではないかと思う。
●サッカー行動者率が高い県は神奈川、千葉、静岡
サッカーの行動者率を都道府県別にみると、ベスト10は次の通り。
(1)神奈川県 8.0%
(2)千葉県 7.4%
(3)静岡県 6.8%
(4)埼玉県、東京都、愛知県、滋賀県 6.7%
(8)岡山県、沖縄県 6.5%
(10)栃木県 6.2%
Jリーグの有名チームが存在し、高校サッカーが盛んな首都圏や東海地区が上位になっている。
W杯ロシア大会で日本代表が活躍すれば、サッカー人気がさらに高まり、競技人口も増えていく可能性がある。社会人にも、サポーターやテレビ観戦派からプレーヤーに移行する動きが出てくるかもしれない。そのためには、身近にサッカーを楽しめる公共のグラウンドなど環境の整備や、地域住民として気楽に参加できるアマチュアクラブの存在など、受け皿づくりが必要になるのではないだろうか。
行動者率を基にサッカー人口を推計してみると、2016年10月1日現在の10歳以上人口は1億1666万7000人だから、行動者率6.0%だと約700万人ということになる。
総人口が減り続けるなか、サッカー人口は今後どうなっていくのだろうか。
(文=山田稔/ジャーナリスト)