5月30日に開催された「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」のプロアマ戦で、プロゴルファーの片山晋呉が、一緒にプレーしたゲストに不愉快な思いをさせたとして、日本ゴルフツアー機構(JGTO)は処分を検討していると発表した。

 複数の報道や関係者の話では、プロアマ戦で片山は、ポケットに手を入れたままゲストと話をしたほか、本来はゲストのためにアドバイスをするなどもてなすべきところで、ゲストを放置して自身の練習をしていたため、ゲストは激怒して2ホール目の途中で帰ったという。



 今年1月にゴルフツアー選手会長に就任した石川遼は、「ファンサービスの向上」「チャリティ活動」などを事業計画に掲げ、特に“ゲストファースト”という指針を打ち出している。また、JGTOは「同伴アマチュアに不適切な対応、不快感を与えるような態度をしてはならない」との規定を設けている。

 JGTOの青木功会長は「今回の件は極めて深刻であると受け止めている。不快な思いをされたアマチュアの方、森ビル様をはじめ関係者の皆様方に深くお詫び申し上げます」とコメントを発表した。

 高校生の頃から片山を知るというプロゴルファーは、片山をこう評する。

「ゴルフがうまいだけの人物。ジュニアの頃からちやほやされてきたので、典型的な“お山の大将”です。ゴルファーたちからも嫌われるほど我が強いですね。おそらく、今回の件で彼を擁護する人はいなんじゃないでしょうか。遅かれ早かれ、いずれこのような問題を起こしていたと思います」

 これまで男子プロは、成績を上げることだけが求められ、ファンサービスやメディア対応はおろそかにされてきた。それでも、若い選手が活躍して注目度が高まったりすれば、メディアに取り上げられるため、スポンサーを獲得できていた。だが、近年はアイドル的選手も出てこず、海外で目立った成績を上げる選手も少なくなり、スポンサーは減少の一途をたどっている。


 スポンサーの減少に合わせて、男子のプロトーナメントも減少。そのため、JGTOはスポンサー獲得に力を入れてきた。多くの男子プロは片山選手ほどではないにしろ、サービス精神が乏しい傾向があり、ファンが増えず、テレビ中継が減り、そしてスポンサーが撤退していくという悪循環に陥っている。スポーツ紙記者は、その背景をこう語る。

「女子プロゴルフ協会(LPGA)は2000年頃からファンサービスに力を入れ始めた結果、最近はファンが増え、それに合わせてスポンサーも増えています。ファンサービスを義務付け、年に数回セミナーを開催するなど厳しく教育しています。さらに、この義務に違反したら高額な罰金を課せられます。

 一方、男子にこういった教育制度が導入されたのは数年前です。しかも、罰則もゆるいので、いまだにファンサービスに疎い選手が大半です。

 アメリカでツアーを回ると、ファンサービスやメディア対応は厳しく義務付けられます。そのため、アメリカを主戦場にツアーをまわり、マナーなどを学んだ経験を持つ青木功が会長、石川遼が選手会長になり、男子ツアーを盛り上げようということになったのです」

 まさに、ファンやスポンサーを獲得するための改革を推進している最中に、片山が問題を起こしたのだ。

「片山は以前から態度が悪いといわれていたため、お灸を据えるには絶好の機会だったといえます。
また、片山は永久シード権を持っているので、たとえば1年間の出場停止などの処分を課しても、すぐにツアーに復帰できます。そのため、JGTOとしては、躊躇なく制裁を加えられるという側面もあります。永久シード権を持っていない若い選手に出場停止処分を課して生活に困窮するようなことになれば、訴訟問題に発展するといった面倒な事態になりかねないですから」(前出・スポーツ紙記者)

 すでにJGTOは片山への事情聴取は済ませており、6月中には懲戒・制裁委員会を開催して処分を決定する方針という。JGTOの懲戒・制裁には、重い順に除名、出場停止、罰金、厳重注意などが規定されている。関係者の間では、半年から1年程度の出場停止と罰金が妥当との見方が上がっている。
(文=編集部)

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