結婚情報サイト運営のみんなのウェディングと不動産情報サイト運営のオウチーノが経営統合する。10月に株式移転方式で共同持ち株会社を設立する。
7月中旬の株式総会で承認を得た後、9月26日に両社は上場を廃止。10月1日付でくふうカンパニーを東証マザーズに上場する予定。オウチーノ株1株に対して持ち株会社の株式4.25株、みんなのウェディング1株に対し持ち株会社の株式1株をそれぞれ割り当てる。
仕掛けたのはベンチャー投資家の穐田誉輝氏。両社は穐田氏が2016年に買収した。穐田氏はオウチーノ株の55.91%、みんなのウェディング株の59.33%を保有する筆頭株主である。
●穐田氏は女優の菊川怜さんと結婚
穐田氏は芸能界で有名人だ。17年4月27日、女優の菊川怜さんと電撃結婚。その数年前に知人の紹介で出会い、17年に入り交際2~3カ月でのスピード婚だという。
ところが、同年5月10日発売の「週刊文春」(文藝春秋)と「週刊新潮」(新潮社)が、穐田氏の“女性遍歴”を暴露した。実はバツイチで、「前妻ではない2人の女性との間に3人の婚外子がいる」と報じた。
穐田氏は創業間もないベンチャー企業に資金を供給するエンジェル投資家である。出資して株主になるだけではなく、経営に携わる。そこがほかの個人投資家と決定的に違う。
穐田氏は青山学院大学経済学部卒業後、ベンチャーキャピタル大手の日本合同ファイナンス(現ジャフコ)を経て、ベンチャー投資を行うアイシーピーを設立。2000年に価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコムを買収し、01年に自身が2代目社長となる。03年に東証マザーズに上場し、05年に東証1部に昇格。その後、06年に3代目社長にバトンタッチした。カカクコムはグルメサイト「食べログ」でさらに大きく成長した。
穐田氏が次に投資したのは、料理レシピサイトのクックパッド。07年に社外取締役に就任。上場を指南し09年、東証マザーズに上場。
しかし、同社の創業者で4割強の株式を握る佐野陽光氏と多角化路線をめぐり対立。16年3月、定時株主総会後の取締役会で穐田氏は社長を解任された。同年8月、クックパッド株式を大量に売却して投資家に戻る。
2カ月後の同年10月、中古物件の住宅・不動産情報サイトを運営するオウチーノを買収。この買収には、クックパッドを辞めた4人の元執行役員も加わった。さらに同年12月、クックパッドの子会社である結婚式口コミサイト運営のみんなのウェディングを買収した。みんなのウェディングは穐田氏の既存の投資先で、同氏がクックパッド社長時代に買収して子会社にした経緯がある。
クックパッドの内紛は、穐田氏が多角化の象徴だったみんなのウェディングを手に入れ、佐野氏は料理レシピ事業に回帰するかたちで決着した。
●くふうカンパニーは複合メディアを目指す
株式市場では、穐田氏の投資先企業を“穐田銘柄”と呼ぶ。オウチーノとみんなのウェディングを経営統合して立ち上げる、くふうカンパニーで穐田氏は何をしたいのか。
両社とも業績不振だ。オウチーノの17年12月期の売上高は12.9億円で、最終損益は2.8億円の赤字。18年12月期は売上高16億円と、5期ぶりの黒字転換を計画している。
一方、みんなのウェディングの17年9月期の売上高は前期比8%減の15.6億円、純利益は同11%減の1.3億円。18年同期の売上高は17億円、純利益は1.4億円と、若干の増収増益を見込む。
だが、両社ともジリ貧傾向にある。ポータル系のメディアは競争激化で立ちゆかなくなってきたのだ。2000年代前半、ベンチャーブームに乗りウェブメディアが次々と誕生した。料理レシピのクックパッド、結婚式場のみんなのウェディング、中古物件のオウチーノなどは、その典型だ。だが、IT技術が進化し、さまざまなコンテンツ(天気予報、翻訳、辞書、経路探索)が追加され、インターネットはマルチ(複合)メディア時代へ移行した。
投資家として、さまざまな事業を見てきた穐田氏は、クックパッドで多角化によるマルチメディアへの転換を図ろうとしたが、料理レシピサイトへの回帰を主張する佐野氏の逆鱗に触れ、解任された。
穐田氏はクックパッドでやれなかったことをやろうとしているのではないのかと見る向きが多い。
(文=編集部)