米国政府が中国通信機器メーカー最大手の華為技術ファーウェイ)製品などを使っている企業と今後取引をしない方針を決定したことを受け、日本政府は今月、各省庁で使用する情報通信機器について、事実上ファーウェイなど中国通信機器メーカーを排除することを決定。基地局の通信機器でファーウェイ製品を使用しているソフトバンクも、順次他社製に置き換えると発表した。



 同様の動きは他国でも広がっており、苦境に立たされたファーウェイだが、そんな同社製スマートフォンに新たな“疑惑”が浮上している。その利用規約に次のように書かれており、ファーウェイはユーザー情報を抜き取り、海外へ転送しているのではないかと、インターネット上で話題を集めているのだ。

「6.1 当社のEMUIユーザー体験向上プログラムに参加して当社製品およびサービスの向上にご協力いただける場合、当社およびその関連会社/ライセンサは分析のためにユーザーの端末からデータを収集することができます」

「6.2 ユーザーの端末から収集された全てのデータは、ユーザーの居住国以外の国で処理されたり、ユーザーの居住国以外の国で当社およびその関連会社/ライセンサに転送される場合があります」

 果たして、この取り決めは、ユーザー情報保護などの観点から、問題があるといえるのか。もしくは特に問題ないのか。ITライターの山口健太氏はいう。

「ファーウェイがユーザー情報を収集することに、ユーザーが合意していることになりますが、収集の対象は端末設定データ、アプリケーション統計データ、エラーログデータと書かれています。

 この規約は、日本の個人情報保護法に則った記述になっていると考えられます。6.1項では『匿名加工情報』としてデータを匿名化して収集するとの記述があります。6.2項ではデータが海外に転送されることに触れていますが、これも個人情報保護法で定められた記述です」(山口氏)

●「国家情報法」の存在

 では、ファーウェイは、どのような目的でこの規約を定めているのだろうか。また、ユーザー情報を収集して、何をしているのだろうか。

「利用規約には、製品やサービスの向上に必要なデータを取得しているとの記述があります。一般的に、スマホの開発ではユーザーの同意に基づいて、どのような操作をしているか収集し、膨大なビッグデータを分析することが行われています。
たとえば多くのユーザーが押すことに失敗しているボタンがあれば、次のアップデートで押しやすく改善されているといった具合です」(同)

 山口氏によれば、同様の規約は他のスマホメーカーでも定められているという。

「他のスマホメーカーも、ユーザーの合意に基づいてさまざまな情報を収集しています。ファーウェイ特有の問題があるとすれば、同社が中国の企業であり、米中の安全保障政策やいわゆる“テクノロジー冷戦”に巻き込まれている感はあります。同社の日本法人は『事業を展開するすべての国や地域の政策や法制度を遵守している』と発表していますが、一方で中国では、国家の情報活動への協力を義務化した『国家情報法』が存在することが注目されています。

 同社も中国政府の命令には逆らえないのではないか、との不安はたしかにあるものの、各国の法令の範囲外で情報収集を行っているとの証拠が見つかれば、グローバルなビジネスは立ちゆかなくなります。何より、ファーウェイがシェアを伸ばしている欧州市場は、日本より情報保護に厳しく大きな反発が予想されます。現時点では、国家の安全保障に関わる人物でもない限り、一般の消費者が不安を覚える段階にはないと考えています

 また、ファーウェイ製の基地局を導入しているソフトバンクは、日本政府の方針に従ってファーウェイ製品を他社製品に置き換える方向で検討を進めていますが、スマホについては消費者の選択に任せるという意味で、口を出さないというのが政府方針のようです」(同)

 一般の個人が使用する限りにおいては、とりあえず心配はなさそうだ。
(文=編集部)

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