ここ数年、外資系ファストファッションの失速が著しい。アメリカ発のFOREVER 21は2017年10月、日本での初出店となった原宿店(2009年4月オープン)を閉店。

スウェーデン発のH&Mも昨年7月、旗艦店である銀座店(2008年8月オープン)を閉店しており、どちらの店舗も10年と続かなかったことになる。

 一方、国内ブランドすべてが好調かというと、そうではないだろう。たとえば、同じファーストリテイリング傘下にあるユニクロとGUでも、明暗が分かれている。

 昨年7月に発表された2018年8月期第3四半期決算では、ユニクロとGUともに増収増益となっていたが、国内事業の営業利益が前年同期比29.6%増の1200億円だったユニクロに対し、GUは同1.7%増の150億円。GUは2016年の同時期の決算で、前年同期比34.8%増の222億円という営業利益を記録していたから、その頃の躍進ぶりに比べると露骨に伸び悩んでいるのだ。

 ファストファッションとは、それだけ移り変わりの激しい業界だといえそうだが、今後2~3年の勢力図はどうなっていくと予想されるのか。タレントのスタイリングや、ファッションコラムの執筆などを中心に活躍している森田文菜氏に話を聞いた。

●ショッピングモールで国内ブランドと並んだら、外資系に勝ち目はない?

 まず森田氏は「外資系ブランドは厳しい状況にある」と、率直な印象を口にする。

「外資系のファストファッションが日本に進出してきた当初は、若い世代よりも、主にアラサーの人々が食いついていました。海外のハイファッションを安く手に入れられる、という点に魅力を感じていたのでしょう。

 しかし、そのアラサーの人々も、だんだん年齢が上がってきています。服を購入する際、『安く済ませてもいい服』と『高いお金を出してでも買う価値がある服』という判断基準が、個々人の中に出来上がっているのではないでしょうか。


 というのも、今のアラサーの人々は、若い頃から安いものに触れて育ってきたわけではありません。トレンド感が強すぎず、いつでも着られるような服は、ファストファッションではなく、ちゃんとしたブランドで入手しておきたいのだと思います。『安いものには理由がある』とまでは言わないにしても、外資系との品質の違いに気づいてしまった消費者が、国内ブランドに流れている部分はありそうですね」(森田氏)

 森田氏は「もちろん、単にファストファッションが飽きられているという理由も考えられる」と語るが、冒頭で触れたH&MやFOREVER 21といった外資系ブランドは、日本人の好みにどこまで対応できているのだろうか。

「H&Mは、攻め感のあるアイテムと、ベーシックなアイテムとの差が激しいブランドです。オシャレ感度が高い人には刺さるにせよ、万人ウケはしません。それと、昨年はアーデム、今年はモスキーノといった具合に、ハイブランドとのコラボレーションを実施するのもH&Mの特徴なのですが、その時期だけ店に客が飛び込んで、あとは大して混まないという印象もあります。

 FOREVER 21も、日本で受け入れられるのは難しいテイストのブランドでしょう。年上ではなく若者向けで、西海岸風やサーフ系に偏っており、夏に着る分にはよくても、冬になるとツラいという特性があるはずです。

 H&MやFOREVER 21の代表的な店舗が次々と閉店した話にもつながるのですが、昨今はファストファッションの路面店が減ってきており、ショッピングモールへの出店が目立ちます。路面店は敷地や家賃の問題がありますし、最近は『ショッピングモールに行けば、すべてが揃う』という“時短ショッピング”が人々の定番になってきていますからね。

 しかしショッピングモールでは、GLOBAL WORKやniko and...といった国内ブランドが、外資系とほぼ同じ値段でありながらも、高品質なアイテムを取り揃えています。そうなると、消費者が外資系ではなく国内ブランドを選ぶのは当たり前で、ファミリー層は特に顕著なのではないでしょうか」(同)

●ユニクロの天下はまだまだ続くも、外資系ではZARAが気を吐くか

 外資系ファストファッションのブームが過ぎ去り、苦境に立たされているのは、必然の結果だといえるのかもしれない。
続いて、国内ブランドの動向についても解説してもらった。

「やはりユニクロは良質な素材を使っていますし、若い世代から高齢者まで幅広い世代にウケる、ベーシックなアイテムがメイン。それと同時に、トレンドを意識したアイテムも取り入れていますから、今後も日本の“プチプラ”を支えていく存在になりそうです。ベーシック寄りのブランドですと、ほかには無印良品も優れていますね。

 一方でGUは、若い世代が顧客のほとんどを占めているのではないでしょうか。今まではアラサー・アラフォーの人々も興味を示していたものの、GUというブランドの認知度が上がれば上がるほど、同じ服を着る人たちが増えていきます。上の世代の人々は、街ですれ違う若者と服の柄が被るようなことがあると恥ずかしくなってしまいそうですし、それが理由でGU離れが進んでいるという可能性は考えられそうです。

 しまむらも、今年になってZOZOTOWNに出店したことが話題になりましたが、いまだにワンマイルウェアの域を出ておらず、本格的なお出かけ着にはなり得ないというイメージがあります。若い世代の人々は、しまむらといえども『安くてこれだけトレンドを取り入れていたら充分』と捉えるかもしれませんが、上の世代は抵抗感を抱くでしょう。もっとアッパー向けであったり、万人ウケしたりするアイテムをつくっていかないと、これ以上の広がりは難しそうです」(同)

 こういった事情を踏まえると、日本におけるファストファッション業界の未来はどうなっていきそうか。

「ユニクロはいうまでもなく、GUもなんだかんだで消えないと思います。ブランド同士で持ちつ持たれつというわけではないですが、ユニクロはベーシック、GUはトレンドライクという感じで棲み分けしていくのかもしれません。
カシミヤなどの高見えする服が欲しくなったら、少し値が張ってもユニクロで買えばいいですし、流行のものを安く揃えたいならGUに行けばいい。人々は両方の店舗をチェックして、価格と品質のコストパフォーマンスを考慮しながら買い物することになりそうですね。

 国内ブランドに対し、外資系はどんどん淘汰されていく気がするものの、スペイン発のZARAは生き残れるのではないでしょうか。これはGUにもいえることなのですが、ZARAは靴やバッグなどの小物に定評があり、女性に根強い人気を誇っています。突拍子もないアイテムもあるにせよ、ちゃんとベーシックなものも取り扱っていますので、『もう一歩先のオシャレがしたい』という一定数の人々の欲を満たしているのです。ユニクロほど一般ウケはしないにしても、ZARAに行けば、今の世界で流行っているアイテムが見つかるという安心感が得られるでしょう。

 なお、現在は若い世代から上の世代まで、スマートフォンで情報収集するのがスタンダードになってきています。若い世代は特にですが、コストパフォーマンスや時短ショッピングを重視する傾向にありますので、これからは店舗でじっくり服を選ぶというより、オシャレ感度の高い人がSNSなどでオススメしている商品をキャッチするというパターンが多くなりそうです」(同)

 これだけネットワークが発達した今、ファストファッションの各ブランドがこの先も存続していくためには、SNSを含むネットでのアプローチが必要不可欠なのだろう。

 また、GUは昨年11月、店舗には客が試着できるサンプル商品しか置かず、実際の売買はネットへと誘導する“試着専門店”を、東京・原宿にオープンした。各ブランドはネットの活用と並行し、“実店舗”をどのように機能させるべきかという試行錯誤にも、絶えず取り組んでいかなければならないようだ。
(文=A4studio)

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