富士経済が実施した、機能志向食品(健康食品、シリーズサプリメント)の国内市場調査によれば、「飲むだけの手軽なダイエット」を訴求した商品の売れ行きが好調だ。
それらの商品が経済活性の牽引役を担うことに異論はないが、一方で2018年だけでも「悪質なダイエット関連事業者」12社への行政処分が発表された(消費者庁「景品表示法関連報道発表資料」参照)点が懸念される。
発表こそされていないが、問題のある販売方法のダイエット業者は数多く存在する。その悪辣商法の一端を、一般投稿者の声からうかがい知ることができるのが、日本最大級のダイエット商品の口コミサイト「ダイエットカフェ」だ。同サイトを運営する代表の福田尚広氏が、その特性を以下のように説明する。
「当サイトは、ダイエット関連企業との癒着が一切ありません。企業などに忖度せず、評価の低い口コミでも掲載できるのが強みです。2018年12月現在、8000以上の商品に15万以上の口コミを掲載していますが、その多くは辛辣な内容です」
悪質ダイエット業者たちは、いったいどのような方法で売り上げを伸ばしているのか。福田代表は「実は、基本的な手口は概ね共通しています。我々は、通称“悪徳業者の三種の神器”と呼んでいます」と説明する。
(1)優良誤認:痩せる根拠がないのに痩身効果を謳う。イラストの女性が吹き出しで「飲むだけで体重が10kg減ります!」など、曖昧な言葉で推奨している。
(2)有利誤認:不正に安いと思わせる書き方をしている。「通常1万5000円→今だけ2000円!」など、通常金額の販売実績がないにもかかわらず、安価を強調する。
(3)ステマ:「宣伝」と気づかせない宣伝。「●● フォローする」「超美味しい」「痩せそう!」などの匿名/サクラ投稿のたぐいだ。
「『ダイエットカフェ』をスタートした2008年時点で “三種の神器”を駆使する企業は、すでに数多く存在していました。“三種の神器”は、もっとも普及した効果が保障される悪質なマーケティング方法だといえます」(福田代表)
●さらに巧妙化する悪質商法
“三種の神器“は近年、さらなる進化を遂げており、優良誤認や有利誤認で摘発されないよう、表現に磨きをかけたダイエット業者が続々と誕生している。
こうした悪質ダイエット業者は、新手の方法を編み出している。ここ数年、トレンドなのが次の3つだ。
まずは、「悪質な定期購入」。定期購入自体は、なんら問題のない販売方法だが、それに付随する次の手法が問題なのだ。
・定期購入だと気づきにくい売り方:「初回お試し300円!」などの表記例
・複数回受け取るまでは解約できない縛り:実際は4回まで解約できず、翌月からは5000円など。
・解約条件が異常に厳しい
定期購入をさせる際、これらの手法を組み合わせる。批判を避けるため、ウェブサイトには注意が記されているが、「見づらい」「気づきにくい」「理解しにくい」ようになっている。
次に「芸能人の勝手な利用」。
最後に「商品名変更」。最近は減少傾向にあるが、数年前に流行した手口だ。商品名Aの悪評が知れ渡ると、商品名Bで広告宣伝する。Bの悪評が広まると、さらに別名Cを名乗り宣伝販売を続ける――という具合だ。ひとつの悪徳商品で荒稼ぎする商法だ。
福田代表は「長年、悪質なダイエット業者の動向を観測してきましたが、彼らは悪質な手法を編み出すことに対して、とても“勤勉”です。新手の騙し方を生み出す企画力は、『よくこんな方法が思いついたな』と驚くほど」と、舌を巻く。
そして、「専門家顔負けに購入データを分析してPDCAサイクルを回し、さらに騙しのテクニックを洗練させしていくのです」と福田代表は警鐘を鳴らす。
新しい法律や規制は次々とつくられるが、悪質な業者も抜け道を探して模索しており、規制だけで取り締まることは不可能だ。購入者側がリテラシーを養い、「痩せる云々」などの心地よい謳い文句に釣られず、根拠薄弱な商品には慎重な態度で臨むことが、悪質ダイエット商品撲滅の近道かもしれない。
(文=福田尚広/株式会社T.M.Community 代表)