安倍政権内で二階俊博自民党幹事長(80)と麻生太郎副総理兼財務相(78)の主導権争いが激化している。
2人の確執が最高潮に達しているのは、3月21日に告示された統一地方選前半(4月7日投開票)に行われる福岡県知事選をめぐってだ。
小川氏はもともと自民党が担いだ知事だ。多選というわけでもないのに、なぜ落選濃厚の対抗馬を立て、推薦まで出したのかというと、麻生氏の強い意向があったから。
「麻生さんが安倍晋三総裁と甘利明選対委員長に直談判して、武内推薦を決めさせた。選挙の責任者であるはずの二階幹事長はその場に呼ばれず、頭越しの決定に不快感を持っている」(自民党関係者)
というのも、もともと二階派は福岡選出の武田良太衆院議員と鳩山二郎衆院議員が中心となって小川氏を支援していた。それがわかっていながら麻生氏は武内氏推薦をゴリ押ししたわけだ。
麻生氏の小川氏に対する“私怨”が強いとはいえ、暴走する麻生氏に対しては、二階派だけでなく福岡の自民党OBの山崎拓元副総裁や古賀誠元幹事長らも激怒し、小川氏支援に回っている。
●「敵の敵は味方」
ここまでモメる背景には、鳩山邦夫衆院議員が死去したことにともなって行われた3年前の2016年10月の福岡6区補欠選挙に伏線がある。
補選は、鳩山氏の次男で福岡県大川市長だった二郎氏が当選したが、対抗馬だったのが自民党国会議員秘書の蔵内謙氏。今回の知事選と同様、二階派の武田氏が推す二郎氏と、麻生氏が推す蔵内氏という対決の構図だったのだ。
「蔵内謙さんは福岡県政のドンとも呼ばれる自民党福岡県連会長の蔵内勇夫県議の長男。
一方の二階氏。3月に入って、来年に予定される東京都知事選で現職の小池百合子知事を「支持するのは当然」と発言したり、早々と「安倍4選」を口にして永田町を賑わせたが、いずれも安倍―麻生ラインへのあてこすりがあると見られている。
「二階さんは『選挙を仕切るのは幹事長のオレだ』と言いたいのですよ。そして4選については、自身の幹事長留任を求める狙いとともに、『安倍3選で流れをつくったのはオレだ、その恩を忘れたのか』という安倍さんへの皮肉もあるのではないか。実力者は麻生さんではなく二階さんだというのを党内外に見せつける意味もあるのでしょう」(前出の自民党関係者)
もっともこの2人。2月27日にそれぞれの側近をともなって、都内のホテルで会食している。いざとなれば、「敵の敵は味方」の論理で手を組むこともあるというわけだ。
傘寿の幹事長と喜寿を過ぎた副総理。“老害”政治家2人が日本の政治を牛耳る――。人材枯渇の情けない自民党。
(文=編集部)