3月18日、レオパレス21の施工不良問題に関して、外部調査委員会から中間報告が公表された。違法建築となる界壁の不備や外壁等について、「全社的な開発・施工体制のずさん・脆弱さにとどまるのか、意図をもって組織的に行われていたかどうかであり、さらに調査が必要である」とまとめている。
「当時の社長のもとトップダウンで指示が出され」「組織的に行われていたことが疑われる」とも書いてあることから、多くのメディアでは「組織的に行われていた」と報じているが、よく報告書を読むと、まだそこまで断定はしていないようだ。ただ、恐らく確たる証拠が上がっていないため断定し切れないと考えられるので、“限りなく黒に近いグレー”であることは間違いない。通常の感覚で考えれば至極当然の報告内容で、「さもあらん」と言える内容だった。
また、3月26日に経済ドキュメンタリー番組『日経スペシャル ガイアの夜明け 時代を生きろ!闘い続ける人たち』(テレビ東京系)において、同社の問題に関する“第4弾”が放送された。
番組の主な内容としては、2001年以降に販売された同社の「ハイブリッド」というシリーズでも界壁の不備があると証言するオーナーの話題を中心に、同社の対応を疑問視する内容だった。あるハイブリッドシリーズのオーナーに対して、同社の一級建築士が当初は「国土交通省の認定があるので界壁は不要」という趣旨の説明をしていたという。建築の素人であるオーナーを騙したようにとれる説明だ。
この件に関しては、放送の翌日の3月27日に「スチールハウス工法(薄板軽量形鋼造)界壁上部の仕様について」という書面を同社が公表し、耐火性能、遮音性能とも国土交通大臣認定に基づく設計であり、問題はないと主張している。
しかし、そうなると、『ガイアの夜明け』の番組内で同社の建築士が「商品に対する無知で誤った説明をした」と釈明していることが問題となるのではないか。建築士は、建設前に、商品知識も不十分な状態でオーナーに説明したが、当初は知識がなかったので、誤った説明をした、すなわち、「国交省の認定があるというのは誤った説明」だと認めているわけだ。だが、同社は「国交相認定のある設計」だと主張しているのである。明らかな矛盾だ。
そして、同放送では、2月7日に公表した物件(1996~2001年に着工した物件)以外にも問題があるのではないかと疑問を投げかけている。やはり、前回記事『レオパレス、組織的に施工不良を主導し“犯罪的”…もっとも引越し困難な時期に退去要請』で筆者が指摘した通り、同社のほぼすべての建物に不備がある可能性が高いのではないか。
●レオパレスからレオパレスに移転した入居者は大丈夫か
また、2018年6月(同年5月の問題公表)以降の入居者の移転についても3月18日に公表されており、2月7日の施工不良問題公表以降では2月28日時点で、その施工不良を理由とする退室予約数は1337件(他のレオパレス物件へ移転631件、他社物件へ移転706件)となっている。追って、3月23日付で「当社管理物件の天井部施工不備が確認された物件に関するお住み替え状況について」も公表され、2月8日時点で住み替えの必要な方が4518人いた。そのうち、3月22日時点で住み替えが完了した方は1139人、住み替えが決定した方1513人、調整中が1866人となっているが、レオパレスへ移転したかは記載がない。
3月18日公表の数字と同22日公表の数字は重複しているものがあるので、正確な数字は今後の公表を待たないとわからないが、2月7日に同社が公表した際、早急に改修が必要な天井の補修工事を伴う641棟の7782人には退去を要請するとしていたので、まだ対象となる入居者の移転には、しばらく時間がかかることは間違いない。
ここでまた新たな問題として懸念されるのは、移転先が再度レオパレスとなった入居者だ。仮に、2月7日時点で問題があったとして、移転が進められた物件から、今回新たに施工不良の疑いが出てきたほかのレオパレスシリーズに移転した入居者がいたとすれば、その人は再度移転を迫られることもあり得る。他社の物件に移転したから良いというわけではないかもしれないが、少なくとも問題の多発している同社の物件に移転することは、こうした懸念が付きまとうことは否めない。
今回の問題で被害者となった入居者には、安心した住まいに移転してほしいと願うばかりである。
●85%のオーナーがレオパレスに「理解」の裏側
一方、3月14日には、オーナー説明会に関するレポートも同社から公表されている。ここで気になったのは、今回の施工不良問題に関するオーナーアンケートの集計結果だ。
ともあれ、このレポートを読んでいて思うことは、家賃保証(サブリース)や管理面でどうしてもオーナーは同社に頼らざるを得ないため、オーナーは概して同社寄りになっているということだ。同社の経営不振は、そのままオーナーの死活問題に直結する。従って、オーナーは同社寄りであることは仕方ないのかもしれない。しかし、入居者の不幸を考えると釈然としない。やはり、この問題の最大の被害者はオーナーではなく、入居者なのだと思う。この先、入居者にこれ以上の不都合が起こらないことを願うばかりだ。
外部調査委員会は、「5月下旬をめどに、本件不備の原因分析、再発防止策の提言及び関係する役員(退任した者を含む。)の責任についての検討結果をレオパレス21に報告する」としている。問題を最小限に食い止めようと、小出しに事実を認め、それ以外は大丈夫であるかのように隠蔽する、また自ら公表することがないという同社の体質は、もう治らないと考えるしかない。
組織的に行った不正であるなら、5月の外部調査委員会の報告次第では、同社への行政処分は免れないだろう。
(文=小林紘士/不動産ジャーナリスト)