子どもの「将来就きたい職業」、20年前と比較したら興味深い現象が見えてきた

 少子化が進み、全国の新小学1年生はおよそ100万人。1950年代には250万人近くいたから、半分以下に減ってしまった。

 子ども人口も減り続け、2018年の15歳未満の「子ども人口」は1553万人。総人口に占める割合は12.3%。1950年の2943万人(35.4%)に比べて半分強(53%)という状況だ。

 そんな少子化時代の子どもたちは、何を考えているのだろうか。化学メーカーのクラレが毎年行っている「将来就きたい職業」アンケートで、子どもたちの意識の変遷を探ってみたい。

 アンケートは2019年4月に小学校1年生になった子ども4000人(男女2000人ずつ)と、その親4000人が対象。親へのアンケートは「将来(子どもに)就かせたい職業」となっている。

 まずは男の子。2019年のトップ10と、20年前・1999年のトップ10を比較してみた。
【2019年】
(1)スポーツ選手 20.1%
(2)警察官 14.2%
(3)運転士・運転手 8.8%
(4)消防・レスキュー隊 8.3%
(5)研究者 5.7%
(6)テレビ・アニメキャラクター 5.5%
(7)ケーキ屋・パン屋 3.8%
(8)医師 3.5%
(9)大工・職人 2.3%
(10)芸能人・歌手・モデル 2.0%

【1999年】
(1)スポーツ選手 22.7%
(2)運転士・運転手 8.8%
(3)警察官 7.1%
(4)おもちゃ屋 6.1%
(5)自営業 5.8%
(6)建築家 5.7%
(7)消防・レスキュー隊 5.0%
(8)ケーキ屋・パン屋 4.8%
(9)パイロット 4.0%
(10)医師 3.7%

「スポーツ選手」は1999年から21年連続で1位というからスゴイ。競技別では、サッカーが59.0%と圧倒的で昨年よりも4.1ポイント増加した。2位は野球で20.6%。昨年よりも3.5ポイント低下した。子どもたちの野球離れが指摘されているが、憧れの対象からも外れてきているようだ。

 男児が就きたい職業2位となった「警察官」も、根強い人気だ。1999年は3位で7.1%だったが、東日本大震災後の2012年から希望者が増え、2019年は14.2%。昨年から1.7ポイント上昇した。20年前と比べると倍増だ。

「運転士・運転手」「消防・レスキュー隊」も20年前からトップ10の常連だ。20年前にランクインしていなかった「研究者」は、昨年の6位から2019年は過去最高の5位にランクアップした。クラレは「昆虫博士や恐竜博士など具体的な回答も見られ、今夢中になっているものを研究したいという、子どもらしい知的好奇心が感じられる」と分析している。日本人研究者のノーベル賞の受賞も影響しているのだろうか。

 今どきの子どもらしいと思えるのが、2019年に12位になった「ユーチューバー」(1.8%)だ。2016年に初登場して以来、4年連続で順位を上げている。内閣府の「平成30年度 青少年のインターネット利用環境調査」によると、6歳児のインターネット利用率は66.3%もあるというから驚く。さらに6歳の利用内容をみると、86.1%がユーチューブなどの「動画視聴」となっている。そうしたネット環境が子どもたちの職業意識にも反映されているのだろう。

●女児のトップは20年連続で「ケーキ屋・パン屋」

 次に、女の子の就きたい職業ランキングトップ10を見てみよう。

【2019年】
(1)ケーキ屋・パン屋 26.7%
(2)芸能人・歌手・モデル 9.0%
(3)花屋 6.2%
(4)看護師 5.6%
(5)保育士 5.0%
(6)アイスクリーム屋 4.6%
(7)教員 4.4%
(8)医師 4.3%
(9)美容師 4.2%
(10)警察官 3.0%

【1999年】
(1)ケーキ屋・パン屋 22.9%
(2)花屋 20.7%
(3)看護師 13.0%
(4)教員 8.5%
(5)保育士 4.2%
(6)芸能人・歌手・モデル 3.3%
(7)医師 2.9%
(8)音楽講師 2.7%
(9)自営業 2.5%
(10)キャビンアテンダント 1.5%

 1位の「ケーキ屋・パン屋」は21年連続でトップ。20年前よりも3.8ポイント上昇している。「アイスクリーム屋」も過去最高の6位になり、スイーツ系の強さが際立つ。

「芸能人・歌手・モデル」は8年連続で2位を守る。「花屋」「看護師」は、20年前は「パン屋・ケーキ屋」とともにトップ3に入っていたが、「芸能人」に抜かれそれぞれ3位と4位に後退。

 1999年にトップ10に入っていた「音楽講師」「キャビンアテンダント」「自営業」は2019年は圏外に転落した。「自営業」は14位に踏みとどまっているが、「音楽講師」と「キャビンアテンダント」は20位にも入らなかった。歌やピアノの先生、キャビンアテンダントに憧れる女の子が激減しているのは意外だ。

 男児不動のトップである「スポーツ選手」は女児では12位(2.2%)。内訳を見ると、「体操・新体操」23.3%、「スケート(フィギュアなど)」20.9%、「サッカー」16.3%の順である。華やかな競技が上位だが、サッカーは女児にも人気があることがわかる。

●「親が就かせたい職業」は、男児は公務員、女児は看護師

 親の希望も調べている。男児、女児別のトップ5は次の通り。

【男児】
(1)公務員 18.0%
(2)スポーツ選手 9.5%
(3)会社員 8.9%
(4)医師 7.0%
(5)警察官 6.0%

【女児】
(1)看護師 18.9%
(2)公務員 12.4%
(3)薬剤師 8.7%
(4)医師 7.5%
(5)会社員 6.0%

 男児、女児共に堅い職業が多く、格差社会の中にあって堅実な生活を求める親の気持ちが反映されている。男児でトップの「公務員」は、ほぼ毎年1位になっている(2009年だけ2位)。3位の「会社員」と6位の「研究者」(5.2%)は、いずれも過去最高順位となった。

 女児は1位の「看護師」、3位の「薬剤師」、4位の「医師」と医療系が上位を独占。専門知識や資格を持って自分の力で生きていってほしいとの切実な願いが感じられる。

 20年前のアンケートに答えた子どもたちは、26~27歳だ。高校や大学を卒業して大半は社会に出て活躍しているのだろう。そのなかで、子どもの頃の夢をかなえられた若者はいったいどれだけいるのだろうか。そんな追跡調査もぜひ行ってほしいものである。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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