LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない

 LIXILグループ(以下、LIXIL)では6月末の株主総会を前に、取締役候補案が2つ提案される事態となり、世の耳目を集めている。会社の指名委員会が選出した候補は8名なのに対し、昨年にCEOを実質解任された瀬戸欣哉氏は自身を含む8名の候補を提案している。言ってみれば、前者が与党、後者が野党的な立ち位置だ。

 私は、瀬戸氏を実質解任して自らがCEOに復帰した潮田洋一郎氏が行使していた「オーナーもどき」のクビキから、LIXILが解放されるためにも、瀬戸内閣が再組織されることが同社にとってはよいことだと考えている。

●2つの取締役候補案

 最初に発表されたのが、瀬戸氏を中核とする8名の取締役候補案。瀬戸氏は、取締役に重任されることにより、その後の取締役会で再び代表取締役CEOへ復帰することを目指している。

 瀬戸氏を含む8名は、会社からの指名推薦ではなく、株主提案として4月に発表された。LIXILの指名委員会はその後5月13日に、会社側の次期取締役候補としてこれも8名を発表した。ところが、そのなかで鈴木輝夫・元あずさ監査法人副理事長と鬼丸かおる・元最高裁判所判事の2人は、瀬戸氏らが株主提案で候補者とした人物だった。

 鈴木・鬼丸両氏は会社側からの指名プロセスに問題を感じたなどとして、「会社側の候補としては受けない」として株主提案側の候補となることを明言し、いってみれば旗幟を鮮明にした。

 すると、LIXIL指名委員会は新たに別の2人を候補として追加したのである。指名委員会のメンバーには社内取締役である菊地義信氏がいること、同氏が潮田氏と近いとされることからも、指名委員会の動きは瀬戸氏グループと対立、あるいは排斥するものとして受け止められている。

 一部報道では、2グループの対立が先鋭化していけば互いに相手候補を否認することも含む委任状闘争(プロキシーファイト)の可能性も指摘されていた。しかし、株主総会が迫っている現時点でその動きが始まっていないこと、本格的にプロキシーファイトをするには双方に多額の資金が必要なことから、その実現の目は少ないと私は見ている。会社側がそれを行えば、株主や社会からの非難を浴びることになるだろうから、抑制的にならざるを得ない。

 LIXILの定款では取締役の最大定数は16名なので、双方の候補全員が選出される事態もありうる。その場合は、株主総会後に初となる取締役会で代表取締役およびCEOが選出されることになるので、どちらのグループから選出されるか、大いに興味が持たれる。

 現状での候補者数が同数なので、瀬戸氏側が恐れているのは、会社側が(つまり指名委員会が)さらに候補者を追加することだ。ただし、私はそのような事態にはならないのではないかと見ている。そんなことになると株主総会での取締役選出手続きが紛糾してしまい、今回の成り行きがLIXILほどの大企業のガバナンス不在として、ますますクローズアップされてしまうからだ。

●逃亡と言われるか、潮田氏の唐突辞任

 瀬戸氏は「元」CEOである。同氏を実質解任したといわれる潮田氏が瀬戸氏の後任としてCEOに就任したのは、昨年11月のことだった。ところがその潮田氏は4月18日に至り、突然CEOを辞任することを発表した。

 背景には、昨秋の瀬戸氏解任をめぐるプロセスを問題視した欧米機関投資家などの大株主が3月20日、潮田CEO、山梨COOの取締役解任を議案とする臨時株主総会の招集を請求したことがある。潮田氏はその臨時株主総会が実現する前に自らCEOを退任し、取締役も6月の通常株主総会で重任しないと言明して、解任劇に幕を引いてしまったのだ。

 私は、潮田氏のこの出処進退を単に「潔いもの」だと見ていない。自らの経営責任にしっかり対峙しないで、公の席(株主総会)でのパブリックな討議に参加しようとしない、さらされようとしない、つまり経営者として後ろ向きな姿勢だと見ている。

 創業者の息子として、社内では独裁者的に振る舞ってきたのだろうか。誰からも指弾・意見されるようなこともなかったのだろう。それが欧米の機関投資家などが仕掛けてくるであろう直截な議論や難詰に直面する可能性が見えると、すぐさま辞任してしまうという経緯となった。

 私は、このような潮田氏の「経営者としての覚悟と責任」に大きな疑問を持つ。そして現在展開している次期CEO争奪戦は、すべて「潮田氏問題」に端を発していた、ということになる。

 経営者としての潮田氏の問題点を、大きく3つ指摘しておく。

●シンガポール居留で大企業の経営ができるのか

 潮田氏がシンガポールに移住したのは2015年と報じられている。その前年にLIXILの前身であるトステム社を創業した父、健次郎氏が死去している。健次郎氏の死亡に伴い、洋一郎氏の姉が相続税の申告漏れを指摘され、60億円強を追徴された。

 洋一郎氏が日本の税制に疑問を感じたことは自らも明言してきたことである。シンガポールは住民税がなく、所得税の最高税率は22%でしかない。日本人の富裕層が多く移住していることで知られる。

 しかし、日本の税制では「10年ルール」というのがあり、海外に10年以上居住を続けないと、その資産の相続税や贈与税の免除が適用されない、ということになっている。15年に移住した潮田氏は2025年まで日本に本格帰国できないはずだ。その間、日本に年間半年以上滞在すると、日本の居住者として本邦の課税適用の対象となってしまう。

 さて、年の半分までしか滞在できない日本で、年商1兆8000億円、従業員数6万人以上という大企業のCEO職の責任を果たせると、潮田氏は昨年11月にCEOに復帰したときに本当に考えていたのだろうか。経営者の「覚悟と責任」を潮田氏がどのように認識しているのか、機会があればぜひインタビューしたい。

●2世経営者の趣味の広がりが

 潮田氏は瀬戸氏の前には、日本GE会長だった藤森義明氏をCEOとして招聘し、これも短期かつ唐突に解任している。潮田氏は藤森氏を招請した2011年以降は、LIXILで指名委員会議長だったが、創業2代目として実質的にオーナーが意思を行使したのと同じようなことだった。

 経営に創業家が直接乗り出さなくとも関与を続ける形態はいくらでもある。問われるのはその関与モデルの是非ではなく、個々のケースでそれがうまく機能しているかである。

 潮田氏は資産家の子息として育ち、大変な趣味人となったことで知られる。それこそ東西の古典から茶道、建築にいたるまで文化への造詣が深く、フィランソロピー(文化への啓蒙、援助)活動も活発にやっている、文化スポンサー的な立場の人だ。関西ではこれを“大旦那”と呼ぶ。

 潮田氏のそんな側面と絡めて、同氏の経営への関与を“趣味人経営”と評する報道もあった。そう評されるとき、それは潮田氏の文化的趣味を“道楽・数寄(風流の道)”ととらえ、同氏のLIXIL経営への取り組みもしょせんは同氏の道楽の一つと断ずる見方だったであろう。

 確かに潮田氏は2012年に取締役会議長に上り詰め、いわば経営の第1線から距離を置いた。しかし、外部から藤森氏、瀬戸氏と続けてスター経営者を招聘して、自らはオーナーのごとく院政を敷いてきた。

 2氏を連続して更迭したことで、もう次にスター経営者を外部招聘できなくなったことから、昨年暮れに急遽自らがCEOに復帰しなければならなくなった。この時も、指名委員会の議長本人が自らをCEOに指名するという、利益相反的な行動をごり押ししてしまっている。正常なガバナンスとは言えない、やりたい放題のオーナーもどきだった。

 この時のトップ人事の不透明性を海外機関投資家から非難され、今春その是非を問う臨時株主総会の開催が決まると、潮田氏はさっさとCEOを辞任してしまった。そして、6月の定期株主総会での取締役辞任も表明して、臨時株主総会の開催をつぶしてしまう。

 ひとたび公の席で説明責任を果たさなければならない状態が発生すると、その責任をあっさり投げ出してしまった。まるで自分のほかの趣味と同様に軽く対応したその様は、「道楽経営」「海外居住者のパートタイム経営」などと謗られても仕方がないのではないか。

 次回記事では、潮田氏の3大問題の3点目を解説し、瀬戸氏のCEO復帰の正当性を指摘する。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

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