2014年12月27日、東京・渋谷にあるセルリアンタワー東急。約60名の参加者で行われた忘年会は、O氏の婚約発表も兼ねて開催され、雨上がり決死隊宮迫博之ほか多数の芸能人が参加したこともあり、盛大な盛り上がりを見せた。

だが、このO氏は特殊詐欺グループの主犯格とされる人物で、同パーティにも参加していたグループメンバーら40人とともに翌年6月に逮捕されることになる。これが現在、大きな波紋を呼ぶことになったカラテカ・入江慎也による闇営業騒動である。

 筆者はこの騒動のきっかけになった、パーティの様子を映した動画をツイッターにアップした。「FRIDAY」(講談社)が報じたものと同じ動画を独自に入手していたのだ。さらに筆者は、これよりもさらに尺が長い、“もうひとつの動画”の存在を確認している。これが世に出ることになれば、宮迫にはさらに厳しい目が向けられるかもしれない。

 宮迫らが所属する吉本興業では、島田紳助引退騒動後、反社会的勢力からの接触などへの対策を強化してきた。営業先の素性や背景についても、芸人個人で判断するのは難しいことが多いゆえ、闇営業はやめて必ず事務所に報告し、事務所がその仕事の可否を判断するよう指導してきたはずだった。そうしないと、本人が意図せぬところで反社との接点ができかねない。今回は、まさにこの懸念が現実のものとなってしまったのだ。

 入江は六本木などで派手に飲み歩くうちに、アンダーグラウンド界隈の人種たちとの関係を構築した挙げ句、彼らへの闇営業を仲介した。「相手が犯罪集団であることを知らなかった」ということは免罪符にはならない。
事が起こってから「知らなかった」では社会的にも済まされないので、吉本は危機管理面からも「闇営業はするな」と芸人たちに厳しく通達していたのだ。

 禁を破った入江はその責任を取り、吉本との契約を解除されることになった。入江は解雇後、詐欺グループの忘年会とは知らず、「知り合いの広告代理店の方から、エステティックサロンの経営や健康食品の販売をしている会社」のパーティと聞かされていたと釈明している。だが、関係者らの証言によると、パーティを主催した側、つまり特殊詐欺グループらと入江の交流関係はパーティ以前から構築されていたようだ。入江も密接に交際するなかで、その言動や暮らしぶりから、相手がアングラ界隈の人間であることは認識できていたはずだという。

 そうした人間が開催したパーティに、宮迫やロンドンブーツ1号2号田村亮ら大物芸人が複数参加し、花束贈呈やネタ披露をしたのだが、これがノーギャラだったというのはありえないのではないか、というのが一般的な見方だ。事務所の大先輩であるダウンタウン松本人志さえ、番組内で「お金は出ていると思う」との見解を示している。しかも、宮迫に至ってはパーティでのサービスぶりが尋常ではない。冒頭でも示した動画で確認する限り、持ち歌を熱唱したのち、O氏の婚約者と思しき女性からのリクエストに応えて彼女をハグした挙げ句、こんなリップサービスまで行っている。

「『アメトーーク!』という番組をやっていますので、(今回婚約した)お二人を(番組観覧に)ご招待したいと思います」

 これを受けて入江は「スタジオに行ける日にちを教えていただければ、あとは僕が段取りしますんで」とまで語り、『アメトーーク!』観覧の話を具体化しようとする。

 いくら親しい後輩の入江からの頼みだからといって、見ず知らずの人たちのパーティでここまでしてあげるのは、常識的に考えると不自然だ。もし宮迫の言う通りノーギャラだとすると、仲介した入江に対して、相当な“借り”があったのではないかとしか思えない。
借りを返すために、縁もゆかりもないパーティに参加し、歌やトーク、さらに番組観覧の招待までサービスすることは、対価を得て営業することと本質的には変わらないともいえる。

 ちなみに、ギャラについては、宮迫に100万円、ほかの芸人に各30万円、仲介者の入江に10万円、それらをまとめて入江に渡したと証言している関係者もいるが、こればかりは実際のところわからない。それを裏付ける状況証拠もあるとのことだが、100%断定しうる決定的なものではないらしい。吉本は、入江が報酬を受け取ったことは認めているが、その金額は明らかにされていない。もし、ほかの芸人分も合わせた高額な報酬が入江に払われて、ほかの芸人がそれを受け取っていないとしたら、入江はそれを一人締めしたということなのか。

 それにしても、宮迫の脇は甘すぎる。その後、『アメトーーク!』への招待が実行されたかは不明だが、婚約した2人へのリップサービスだとしても、初対面で素性を知らないはずの人間に対して番組閲覧を約束するとは、公私混同の行き過ぎた越権行為とのそしりは免れないだろう。しかも男性は犯罪者だったわけだから、こうした言動が今後、さらなる誤解や疑惑を呼んだとしてもおかしくない。

 果たしてこの騒動、吉本による、入江の解雇及びそのほかの芸人への厳重注意だけで幕が閉じるのか。繰り返すが、吉本は島田紳助のケース以降、反社との付き合いに対して、厳しい態度で望んできたはずだ。そのための指導も芸人に対して行ってきた。しかし、今回のケースでは、芸人たちはそれを裏切った。
入江も宮迫も、本当のことをすべて話していると思えないなか、筆者が客観的に見ても、これで幕引きすることは不可能にしか感じないのだ。
(文=沖田臥竜/作家・元山口組二次団体幹部)

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