「エンターテインメント小説界の至宝」は、私が独断で作家・遠田潤子のキャッチコピーとして使用しているフレーズである(遠田作品のレビューではこれからもどんどん使っていこうと思ってます)。『銀花の蔵』は、その遠田さんの最新刊。
小学生の銀花には、絵を描くのが趣味のお父さんと家事の得意なお母さんがいる。それこそ絵に描いたような幸せな家族だ、母・美乃里の手癖が悪いことを除けば。別にお金を持っていないわけではないのに、お店のものや他人のものをふと盗んでしまうのだ。そのときは泣いて謝り二度としないと誓うのに、また同じことの繰り返し。銀花はこのことでとても苦労させられていたけれど、お母さんはかわいそうな人だから優しくしてあげなければいけないという大好きな父・尚孝の教えを守って暮らしていた。
まだ小学生の銀花がなんとか両親を支えていこうとしては壁にぶつかる姿には胸がふさがれるし、家族というもののあり方について考えさせられる。ほんとうは曲がったことが苦手で嘘のつけないタイプなのに、母の盗癖を必死で隠そうとしてますます深みにはまっていく。他にもいろいろなひずみを抱えたままなんとか続いていた生活は、ある事件をきっかけに二度と元に戻ることはなかった。しかし、銀花たちの苦難はこれで終わりではなかったのだ。
ひとつのできごとがさらなる事件のきっかけになってしまうことがある。誤解が誤解を呼んでしまったり、そんな気はなかったにもかかわらず誰かを傷つけてしまったり。
現実においても同じように、すべてを捨ててどこかへ逃げてしまうことも思いあまって自らの命を断ち切るようなこともできないまま、苦しみながら生きている人は多いのではないだろうか。でも、どうせ生きるなら少しでも前を向いて進んでいけるといい。そのためには結局、どんなにつらくても周囲の人々ときちんと関わっていくしかないのではないかと思う。たとえ99人に受け入れてもらえなくても、100人目の人には理解してもらえるかもしれない。もし100人目でもダメだったとしても、自分の信じるところに従って行動したことは自分を支える力になる。絶望の中から砂粒のようにわずかな希望を見出せる人間は強い。最後の最後で踏みとどまれる人間であれと、遠田作品から教えられた気がする。
"当主にだけ見える"という座敷童の正体や蔵に埋められていた白骨の謎、といったミステリー的な興味も真相がわかってみると、わき上がる感情にはやはりかなしみが勝るといえよう。謎が解けた爽快感よりも、さまざまなしがらみに翻弄された者たちの寂寥が胸に迫る。
(松井ゆかり)
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