モノだけでなく、住む場所、職業、はたまたパートナー選びまで、選択肢がたくさんあるのは自由で良いことのように見えます。

選択肢がありすぎると幸福度が下がる

一方で「選択肢がありすぎると人間はかえって不幸になる」という米国の心理学者バリー・シュワルツ氏の研究が、ここ10年ほどで定説になっているのをご存知の方も多いと思います。

溢れる選択肢の中で生きる現代の人たちは、何かを手にすると「これで良かったのかな」、「他にもっと良いものがあるはずだ」、「自分の選択は失敗だった」という考えが生まれ、現状に満足できず、幸福度が下がってしまう可能性も高いのです。

特に、ソーシャルメディアの発達により、ビジュアル付きで他人の日常や選択に毎日のようにさらされる今、友だちが手にしたモノと自分のモノを比較したり、何を選んでも何かを逃してしまうような不安は、増す一方となっています。

「最高」を求めて、落ち込んでしまう人々

どうせ選ぶなら、最高のものを。そう望むのは、ごく自然なことのように感じられます。ところが、シュワルツ氏の研究によると、

常に「手にし得る最高のものを選択しなければ」と考える人たちは、より高収入であるものの、自分の仕事に不満足で、鬱になりがちな傾向があることがわかっています。

The Atlantic」より翻訳引用

日常の選択に最高を求める人は、人生においても常にゴールを高く設定し、向上心が高く、努力も惜しまないのでしょう。ですが、たとえ高収入を得ても、自分よりも多く稼ぐ人は必ず存在し、仕事で成果を出しても、「もっとできる人はいる」、「以前ならこうではなかった」と自分と他人や過去の自分を比較し、決して満足できないという負のループに陥りがち。

では、「最高」の呪縛から逃れ、自分の選択に迷ったり、不安になったりしないためには、どうしたらいいのでしょうか。

「ほどほどに良い」が、幸せをもたらす

選択肢の中から「ほどほどに良い」モノを選ぶ人たちは、恒常的に、より幸せを感じています。(中略)新しいPCを買う前には、いつも「最高」を求めるタイプの友人に、どの機種を買ったか聞いてごらんなさい。そして、それを買えばいいのです。そのPCは、あなたにとって「最高」かといえば、おそらく違うでしょう。

でも、「ほどほどに良い」ものであることは、間違いないでしょう。決断するのに5週間かけるかわりに、5分で終了です。

The Atlantic」より翻訳引用

つまり、追求すれば他にもっと良いものがあるかもしれなくても、まあまあ良さそうなものを選ぶということ。それにより、決断のために費やす時間やストレスを減らし、何かを逃がしてしまっているのではないか、という不安から解放されるというわけです。

上記の例では、「最高」を求める人が時間をかけて下調べをし、選択したPCを自分も購入するのですから、悪いものであるはずがありません。ちょっとずるいような気もしますが、そうやって選択のストレスを軽減し、節約した時間を有意義に使った方が、人生がうまく行きそうです。この方法は、モノだけでなく、人生の選択のいろいろに応用できるとシュワルツ氏はアドバイスしています。

「最高」を疑おう

そうはいっても、それでは消極的すぎはしないか。「最高」を常に目指すからこそ、前進しようという気持ちも生まれるのでは、という意見もあるかもしれません。

では、「最高」とは何でしょうか。この多様化した時代の中、「最高」が語られる時はなぜか、すべての人や条件にあてはまるただひとつの価値、と私たちは考えてしまいがちです。そして、「最高」は、よく「最新」と置き換えが可能だったりもします。

溢れるモノの中、選択肢が増えすぎ、メディアや周囲から「あなたの持っているものは十分ではない」、「現状に満足してはいけない」というメッセージを受け続ける毎日の中、もっと楽に生きるためにも、「ほどほど」の威力を心に留めておきたいと思います。

The Atlantic

businesswoman drinking coffee via Shutterstock

(田上晶子)

■ あわせて読みたい
現場が困惑するほど売れているリップ。潜入取材してわかった人気の理由
働く女性のストレスを減らす「美部屋」をキープする方法
地肌のやわらかさがカギ。大人の美しさは髪で差がつく
ぐっすり眠れる「緑の寝室」
いい女になれる!とろけるルージュが人気爆発なワケ
編集部おすすめ