大人の艶話を告白しあう、架空の『スナック艶』。

今回は、"夜のあのときの声"をテーマにおおいに盛り上がった夜のことを書こう。



貿易関係の会社を営む男性(47歳)は、俳優・竹野内豊似の独身貴族だ。結婚経験はないが、いつだって本命とそれ以外の女性たちが彼をとりまいている。「いつかは結婚したい」と思っている彼だが、「お気楽で自由な生活を手放してまで、一緒になりたいと思う女性にまだ出会っていない」のだそうだ。

彼は言う。「最近、若い子とつきあうのがきつい」と。その理由は"ジェネレーションギャップ"。「さすがに20歳くらい年が離れていると、彼女たちが口にする単語の意味すらわからない」と苦笑する。「その点、大人の女性はいいね。いろんな経験をしているから、僕みたいな自由人にもおおらかだし。それに夜のテクも断然、大人の女性のほうがすごい」

おお。40代女性にとって、光が差し込むようなトピックではないか。私は目を輝かせながら、彼の次の言葉を促した。
ところが......。

「でもねー、あのときの声があかん!」と一喝。あのときの声、つまり"喘ぎ声"のことでしょうか? おずおずと尋ねてみると......。

「そう、喘ぎ声! あれさー、女性ってなんか勘違いしてない? かわいい声出せばいいと思ってるでしょ。アニメ声やらグループアイドルみたいな『どこから声だしてんの?』みたいな声の女性、結構多いんだよ~」

服を脱ぐまではアダルトな声と喋り方だったのに、脱いだ途端「あーん♡」と急に鼻にかかった声になられると、「萎える」というのだ。

「えっと。あのときの声って、鼻にかかるような声になるもんだと思ってたんだけど、違うのかしら」と恐る恐る彼に問うてみたら、「それはAVの話でしょ。彼女たちは演技してるから、あんな声出してるわけで、リアルな大人の女性はあんな声を出しちゃいけないの!」と、ややご立腹。相当、大人の女性のあのときの声には、腹に据えかねるものがあるようだ。

「急にロリータみたいな声とか『いやん、やめて』とか、もうホント勘弁だから。ルックスと声のギャップにげんなりくるんだから!」

「あとさ、合体するたびに、ブギュッブギュッとか、アッアッアッとか、こちらの動きに会わせて変な声が出す人もいるんだけど、あれってなに。俺、その度に、ビニールプールに空気入れる装置みたいな気分になるんだけど」


その女性たちになりかわり、いや全40代女性になりかわり、お詫び申し上げる。

確かに、その場を盛り上げるために「声をはっていこー!」として、妙な声を出しているかもしれない。


しかし、では40代大人の女性のあのときの声は、どんなものが正解なのだろうか。


「理想は、"押さえようとしても押さえきれない快感"だね。声を出すまいと我慢するんだけど、思わず快感に溺れて声が漏れ出てしまう......それが大人の女性の良さだよ」と彼。たとえるならば、吐息のようなものが、一番そそられるという。

思えば、あのときの所作って、誰に教えてもらうわけでもないし、ほかの人たちと比較できるわけではないから、どうしても「覚えたてのころ」からなかなか脱出できない。むき出しになったら、若かりしころの記憶スイッチが自動的に入って、無意識のうちに、若かりしころの声色で演技しているのかもしれない。

しかし、盛り上げようとして声はった結果が、まさかビニールプールの空気入れ状態になっていようとは思わなんだ。身が引き締まった、ある真夏の夜の艶話だった。


イラスト/藤田佳奈美

あわせて読みたい

「今夜、抱いてやるよ」と上から目線のやぶさか野郎【スナック艶】

許すまじ、男の「あわよくば」事情【スナック艶】

男を一気に萎えさせる「真っ黒くろすけ女」とは【スナック艶】

この記事を気に入ったら、いいね!しよう。

Facebookで最新情報をお届けします。

編集部おすすめ