「1ヶ月以上の性交渉がないカップルは、セックスレス」

『日本性科学会』というところがセックスレスをこう定義づけている。この「1ヶ月」をどうとらえるかは、個人によってさまざまだと思う。

「1ヶ月もご無沙汰だったら、そりゃあセックスレスよね。お気の毒に......」と思う人もいれば、「たった1ヶ月してないってだけでレスのレッテルを貼られちゃうの!?」と意外に感じる人もいるだろう。私は後者のほうで、「この定義によると、わたしとパートナーはレスカップルだわ」と結構ヒヤリとしてしまう。

ところが、この「レス状態」のなかには、キスや性的な触れ合い行為は含まれていないとのことで、そうなると話が異なる。わたしとパートナーは、普段から挨拶がわりにハグやキスをよくする。手もつなぐし、寝るときはぎゅっと抱き合うのが習慣だ(そのあと、パッと離れてそれぞれで寝るのだけど)。とにかく、スキンシップは習慣化されていて、キスやハグは毎日しているので、完璧なレス状態ではないのかもしれない。

それにしても1ヶ月って案外短い期間だな、と思う。だって女性には毎月訪れる「月のもの」があるし、それ以外だってお互い仕事していると疲れているしで、気がつけば「あれ......最近エッチしたのっていつだっけ」となっていることは案外多いのではないか。だからといって倦怠期というわけでもなく、パートナーとの仲は穏やかに順調。これでも1ヶ月「してない」のはセックスレスカップルとなっちゃうのだろうか。

義務から解き放たれたら、今度はその気が起こらない

じつはこの定義にとらわれすぎていた時期がわたしにあって、妙に「1ヶ月以内に」と義務化していたときがあった。

レスカップルにはなりたくない、いつまでも男と女の関係でいたい......と、特に「したい気分」でもないのに、レス定義から外れるためにがんばっていた。一度は彼に「もう1ヶ月近くしてない。1ヶ月に一回しかしないなんて、わたしを女として見てないのね」なんて、超面倒くさいことを言ってつめよったりもした。

以前この連載でも書いたけど、パートナーの浮気が発覚したあたりは、この面倒くさい問答が頻繁に続いた。

「1ヶ月に一回しかしてないなんてありえない。もっとしてるでしょ」と彼。

「いやいや、してない。それは、あなたがほかでしてるから、もっとしてる気持ちになってるだけで、わたしとは1ヶ月以上してない!」

「いや......そんなことは......ない。もごもご。もう二度と浮気はしないし、してないし」

なんて不毛なやりとりを延々としてしまい、結果的に「する雰囲気」なんてどこにも漂わなくなったり。そんなこんなでさらに1ヶ月が経ち「きーーー。わたしたちって完全にレスカップルじゃないか!」と妙に焦ったり。

ところが今年に入り、なぜか突然わたしのほうが「そんなの、どうでもいいですよ」という気持ちになってしまったのだ。

レスの定義とかもどうでもいいし、そもそも「エッチしたい」という気持ちにまったくならない。どちらかというと、面倒くさいし、いまさらなんだか恥ずかしいし、しなくていいならしたくない。そんな気分が続いている。

わたしはだいたい毎年1月、2月は気分が落ち込む。クリスマスから大晦日まではがぜん気持ちが高まり、お正月になるといったん落ち着いて穏やかになり、休みが明けて日常が戻ったあたりから、どんどんと気持ちが下降線をたどるのが常だ。

加えて年度末の繁忙期に突入し、ストレスは増す一方で、やたらとイライラして気分もどんどん落ち込む。毎年のことなので「この時期だからね~」と思っていたのだけど、今年はなんだか様子が違う。落ち込みがより深く、一向に回復の兆しがない。しかもまったく性欲みたいなのがわき上がらない。

「これって、いわゆる更年期の......」

女友だちに相談すると「そうかもね。わたしなんてもう4年前からその状態よ」と返ってきた。

「というよりも、夫とはもう10年以上レスだし。しばらくは『まだまだ女盛りだし、よそで恋人をつくって......』とも思ったりしていたけど、いまはよそでするのもいや。正直いって、その行為自体がオエッという感じ」。

オエッて......。でもいまはちょっとだけわかる気がする。やはりこの状態って更年期特有のものなのか。

ほかの友人は「いやいや、それってたぶんパートナーとは『家族』みたいになっちゃったからよ。ほかにそそられる人ができたら、ちゃんとムラムラするって」と言う。「実際、わたしがそうだから」だって。

わたしは現在のパートナーとは一生のお付き合いをするつもりなので、よそにムラムラするような人が現れないようにしたい。しかしなあ、パートナーはよそでムラムラしちゃってたからなあ。ちっ。

目には目を......をしてやりたい気もするが、でもそういう相手も現れないし、見つけようとも思わないし、なによりも彼のことを心から大事に思っている。

またほかの女友だちは「わたしも本音をいえば、夫とはセックスしたくない。というよりも、もともと夫のことがそんなに好きじゃない。でも夫婦としての役目があるから、割りきってる」と言う。

医者の夫を持つ彼女は、いわゆる「セレブ妻」で、毎日エステやネイルケア、フラワーアレンジメントやボランティア活動、子どものお弁当づくりと、「完璧な奥さま」「すてきなセレブ」ぶりを日々SNSに投稿しているのだが、「それも、役割のひとつ」と言うのだ。

「夫と結婚をしたのは、裕福な生活を送ることができると思ったから。実際にわたしが求めていた生活をすべて与えてくれる夫に心から感謝してる。SNSに投稿することも、『夫のおかげでこんな自由を謳歌してます』というアピールをして、彼の自尊心をくすぐってあげるためよ。でも夫に男としての魅力を感じたことなんて一度もない。夜なんて、毎回目を閉じて『早く終わらないかなあ』と思ってるもの。でも1ヶ月に1、2回の義務を果たせば、あとは好きなことしていられるから、どうってことない」

彼女の話を一緒に聞いていた精神科医の男友だちは、自分もドクターだからか、一瞬呆れた顔をしたが「うん、でも女性として上手だね。それに比べて、まこちゃんはへたくそ」と言われてしまった。

「へたくそって、どこが!」

「すぐ暴れたり家出するところとか、『ひとりのほうが楽!』と彼に怒ったかと思えば『1ヶ月してない!』とぷんすかしたり。女性はね、彼女(先の女友だち)みたいに男性を転がして、自分が望む方向に上手にひっぱっていける人が幸せになれるんだよ。これは男性にとっても幸せなことなんだ。つまり winwin の関係だよね。その点、まこちゃんは本当にへたくそ」

余計なお世話だ。でも女として自分でもへたくそに生きてるなとは自覚している。しかし1ヶ月レスでも仲良しなわたしたちと、「目を閉じて我慢して」まで仲良しなふりを続けるカップルとでは、どちらが幸せなんだろうとも思う。いや、幸せの定義もまた個人によって異なるから、どちらも本当に幸せなのだろうな。

とにかく「1ヶ月してなければレス」という定義にとらわれなくなったことが、いまは楽。このノンストレスが、ふたりの仲を優しいものにしているから、いまはよしとしようと思う。

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