画像提供/東京レインボープライド

多くの人が虹色の旗をはためかせ、「Happy Pride!」と声を上げながら渋谷、原宿を練り歩いた。虹色は、多様な性を象徴し、祝福の意を示す。

“性”と“生”の多様性を尊重し差別のない社会をめざす「東京レインボープライド2024」(以下、TRP2024)が2024年4月20日、21日に代々木公園で開催。2日間でのべ動員数27万人、21日に行われたパレードには約1万5000人が参加。また、LGBTQ+の人たちへの理解促進、社内外への啓発活動を行う企業や団体が大幅に増えたことを示すように、協賛団体数は過去最大の314にまで及んだ。

今年のテーマは「変わるまで、あきらめない」。イベントの様子や共同代表理事、企業へのインタビューを振り返り、変化しつつある社会と、私たちが向き合うべき課題を考える。

「変わるまで、あきらめない」に込めた想い

1994年に初めて日本でプライドパレードが開催されてから30年。長い歳月を経て圧倒的に変わったのはその認知度だが、未だに進まないのが法整備だ。

TRP2024の主催であり、共同代表理事の杉山文野さん山田なつみさんは本イベントのテーマ「変わるまで、あきらめない」がもつ意義をこう語る。

「『LGBTQ+』は今や一般常識と言えるほどにまで広がりました。しかし、婚姻の平等、差別禁止法、そしてトランスジェンダーの性別変更の要件緩和、この3つを成し遂げなければならない。私たちの生活を取り巻くルールが変わらない限り、当事者が置かれている状況は良くならないからです。TRP自体が法律を変えられるわけではないが、企業、団体、個人が協力し合うことで法律が変わるよう社会を醸成していくことはできます」(杉山さん)

「多くの人が協力してくれるイベントになりましたが、法律が変わるまで私たちはあきらめません。今年のテーマにはそういった意味を込めています」(山田さん)

画像提供/東京レインボープライド

過去最大の協賛団体数となった2024年。

企業の対応の変化を「社内の制度がかなり変わってきたのではないか。同性パートナーに対する制度福利厚生トランスジェンダーの従業員のサポートなどに取り組む企業が増えてきた印象がある」と杉山さんは見ている。

さらに、経済同友会が協賛に加わったことも非常に大きな変化、とコメント。支援の輪が広がっていることに期待を寄せた。

少しずつ社会は動きはじめているが、まだまだ課題は山積みだ。今までどのように歩んできて、今があるのか。これまでの努力を噛み締めながら次なるアクションを考えていく必要がある。

「私たちは活動のビジョンに場づくりを掲げています。ここに集まった一人ひとりに声を上げてほしい。それが社会変革につながっていくから」という山田さんに、杉山さんも大きく頷き、「本当に変わるまで諦めない。今をどう未来につなげるかをそれぞれが考えてほしい。そして一緒に行動を起こしていきたい」と訴えた。

社内に広がるALLYの意識

撮影/MASHING UP編集部

代々木公園のけやき並木には数えきれないほどの企業・団体のブースが並んだ。パナソニック コネクトのブースで目に入ったのが「ALLYからはじまる、ALLYからつながる」というメッセージパネル。ALLY(アライ)とは性的マイノリティ当事者を理解し支援する人を示し、最近では多くの企業でLGBTQ+施策として社内アライの呼びかけが行われている。

「現在、社内には250名ものALLYがいますが、1000人をめざし社内で啓発活動をしています。私たちは、周囲が支援の気持ちを目に見える形で表明することで、LGBTQ+当事者に“勇気”や“安心”を与えることができると信じています。そのメッセージと意思表明を多くの人に伝えたいと考え本企画を進めました」(パナソニック コネクト 人事総務本部 DEI推進室 池松奈穂さん)

本イベントのために特別に製作した「Let's note」のフォトブース。LGBTQ+のキーなどあらゆる箇所が虹色で彩られ、社内「ALLY」を表明するステッカーが貼られている。 撮影/MASHING UP

また会場には、同社と「ゆるスポーツ協会」が共同開発した新スポーツ「ピクトグラミー」体験スペースも。年齢・性別・運動神経を問わないゲームに子どもから大人まで楽しんでいた。

一人ひとりの個性が光るオフィスをめざして

デスクやパネルに所狭しと記されたメッセージ。「自分らしく幸せに!」など励ます言葉のほか、韓国語や英語で書かれたメッセージもあった。 撮影/MASHING UP編集部 撮影/MASHING UP編集部

続いて、総合人材サービスを提供するパーソルのブースを訪問すると、さまざまな色のメッセージで埋め尽くされたオフィスチェアとデスクが目に留まった。

来場者は「自分らしくはたらくために、変えたいこと、挑戦したいことは?」、「『らしく、楽しく、ほこらしく』あるために頑張っている方への応援メッセージはありますか?」の2つの質問への答えを記入する。

「『チャレンジ!~自分らしさでオフィスを彩ろう!~』をコンセプトに、『はたらく』を象徴するオフィスをカラフルなメッセージで彩るアクティビティです。

一人ひとりの個性が輝ける職場を表現しました。メッセージを一つひとつ読むと温かい言葉ばかりです」(パーソルホールディングス グループ人事本部 人材開発部DEI推進室 馬場美由紀さん)

経済同友会が推進するLGBTQ+への支援活動

経済同友会のブースにて。参加する企業経営者のLGBTQ+をはじめとする社会のDEIに関する思いや意思表明などを示したメッセージボード、DEI推進に関するこれまでの取り組みを紹介した。 画像提供/経済同友会

日本の企業経営者による経済団体である経済同友会はブースへの出展と経営者約60名でプライドパレードに初参加。TRP共同代表理事も、今年の大きな変化と注目する。代表幹事新浪剛史さんは、2023年4月に就任した際に、重点取り組み課題の1つとしてDEIを打ち立てた。

「6月には、569名のビジネスリーダーによる『多様性ある、公正で、包摂的な社会の実現への協働宣言』を発表しました。また『社会のDEI推進委員会』では、ジェンダー平等の実現や、外国人、性的少数者(LGBTQ+)、障がい者など、多様な個人が活躍し、公平性・包摂性のある社会に向けた政策提言、経営者・企業としての具体的な実践行動について検討してきました。そうした活動の一環として、今回参加しました」(経済同友会のコメントより)

プライドパレードで企業・団体・個人が一つに

パレードに参加する日本ロレアル。ブースではメイクアップ体験やフォトブース、リップを用いたメッセージ企画などビューティーブランドならではの体験型アクティビティを展開した。 撮影/MASHING UP編集部

TRP2024最終日には、会場のある渋谷から原宿をめぐるプライドパレードが行われた。日本全国、世界各国から集まった約1万5000人・60梯団が、虹色の旗や横断幕を掲げ音楽を流しながら行進した。

「すべての人が、らしく、楽しく、ほこらしく」。

生きられる社会をめざす多くの人のエネルギーと意思を肌で感じることができたTRP2024。一歩一歩だが変わりつつある日本。しかし、まだやるべきことがある。「変わるまで、あきらめない」一人ひとりがその意識を持つことで、待ち望む未来が見えてくるはずだ。

TOKYO RAINBOW PRIDE

※編集部より:内容の一部に誤りがございましたので訂正いたしました。(2024年5月23日11時00分)

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