今回ご紹介するのは、自然を想う気持ちと、服を着る喜び、どちらも大切にできる新ドレスレーベル。
サスティナブル(持続可能性)な体制を築くべく、変革が急務の課題となっているファッション業界の現状に触れながら、その流れのなかでなぜこのレーベルを立ち上げたのか、デザイナーの野口アヤさんにお尋ね。前後編に分けてご紹介します。
ファッションとサスティナブルの両立を目指して
「サロン ド バルコニー」の元ディレクター、野口アヤさんが、ドレスレーベル「アヤノグチアヤ」をデビューさせました。
ファーストコレクションで披露されたのは、優しい色味、着心地のよさそうな風合い、美しいシルエットをたずさえた、エレガントで柔らかな印象のドレスたち。ですがこの新レーベルは、「ファッションとサスティナブルを両立させたい、させねばならない」という、野口さんの強い信念の表れなのです。
写真左:オーガニックコットンで仕立てたドレスとビスチェ。サスティナブル化はファッション業界の急務
近年、サスティナブルの実現は、ファッション業界においてもっとも大きな課題とされています。
ファッション業界におけるサスティナブル化への動きは、実は2000年代から見受けられ、サスティナブル先進国であるアメリカの「パタゴニア」が自社の環境指標を公的に調査、その結果を発表し、改善を目指して活動をするなどしてきました。とはいえ、当時はまだ環境や人的資源に配慮されたファッションはメインストリームではなく。
注目を集めるきっかけとなったのは、2013年にバングラデシュで起きたラナ・プラザ崩壊事故。ファッションの下請け工場が入居していた同建物は、違法増築の危険勧告が出ていたにもかかわらず営業を続け、ミシンの振動でビルが崩壊。多くの死傷者を出すこととなり、アパレル産業の過酷な労働環境が世界に知られることとなったのです。
ですが、エレン・マッカーサー財団が2017年に発表した調査(※1)によれば、2000年以降、衣服の生産量は2倍に増えているのに対し、1着の服が廃棄されるまでに着用される回数は36%も減少している、だとか、1年間で生産される衣服を作るためのテキスタイルは87%がそのまま処分されているなど、改善の余地が大有りの実態は2010年代後半まで続行。
こうした現状に対し、ここ2年ほどの間に、多くのファッション企業が環境と社会に貢献する活動に向けて意欲的な姿勢へとシフトしはじめました。
ラグジュアリーブランドも例外ではなく、グッチなどを擁するケリンググループは、「Environmental Profit & Loss」と呼ばれる環境損益を評価するツールを用い、自社の持続可能性を調査しています(※2)。
これらの調査によって見えてきたのは、ファッションのサスティナブル化において重要視すべきは、地球に優しい資源を用いる、資源を過剰消費する素材を避ける、汚染を減らす努力といった原材料部分にある、ということ。
オーガニックコットンで仕立てたビスチェには、立体的な花モチーフのコサージュをたっぷりとオン。ギンガムチェックのドレスは裏地までオーガニックコットンで、心地よい肌触り。地球にも人にも優しいドレスレーベル
と、前談が少し長くなりました。アヤノグチアヤに戻りましょう。
こういったファッション業界の流れに、アヤノグチアヤのコンセプトはぴたりとハマっています。なぜなら野口さんがコンセプトに据えるのは、オーガニックな素材や、自然に分解され、リサイクルし続けられる素材を用いること。さらに、なるべく日本での生産を行うこと。これは日本の職人の高い技術を見直すことに加え、輸送時の二酸化炭素排出量源にもつながるのです。
ファーストコレクションでは、オーガニックコットンのナチュラルボタニカルダイ(日本古来の天然材料染め)やリネン素材のドレスに着物の帯を思わせるデザイン、ハンドメイドのアップサイクルアイテムをプラスした日常使いできるドレスを発表しました。
野口さんがサスティナブルの実現に向けて行動を始めた理由とは。明日、10月1日18時公開の後編へ続きます。
※1 A New Textiles Economy: Redesigning fashion's future
※2 https://www.kering.com/en/sustainability/environmental-profit-loss/what-is-an-ep-l/
アヤノグチアヤ
電話:03-6886-8048(シソン)