アニメには「記号」があります。『サザエさん』ワールドの素朴な作画の中では、“まつげが2本以上あると美人”というのが文法なのです。
もちろん「タイコさん」は2本あるので美人ママポジション決定です。参考までに主な登場人物のまつげランキング。1本が「アナゴさんの奥さん」、2本が「タイコさん」「リカちゃん」「リカちゃんのママ」「カオリちゃん」、かつての隣人「浜ミツコさん」、そしてS級、もとい3本は「浮江さん」(ちなみに番外は波平の同僚の岡島さん。男なのに2本まつげ。製作者の意図は不明)です。

⇒波野タイ子とは?(サザエさん)
http://www.charapedia.jp/character/info/17854/

【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。
ご注意下さい。】

■怒る時は怒るタイコさん

 おしとやかな美人ママの地位を確立している「タイコさん」ですが、怒る時は怒ります。ノリスケさんは、タイコさんが結婚してくれただけでも有り難さにひれ伏して毎日を送るべきです。然るに、彼はちゃらんぽらんに遊ぶ事が多く、タイコさんといえども、それが臨界点を突破すれば堪忍袋の緒が切れます。「イクラと実家に帰ります」と書き置きしていなくなりますが、そこはそれ。サザエさんが本格的にそんな昼ドラのような展開になるハズもなく、二人は磯野家におりノリスケの行状についてご注進に及ぶわけです。
そこに血相を変えた「ノリスケ」が来て、家出の原因が明かされ磯野家の面々に説教される・・・それが「タイコさん家出方程式」と言えます。

■イクラを叱るタイコさん

 おそらくタイコさんのセリフでもっとも多いのは「いけませんイクラ!」ではないでしょうか?しかし、それくらいで引き下がるイクラちゃんではありません。実は、タイコさんのこのセリフはイクラちゃんを止めるのではなく、「これからイクラのわがままが話しのモチーフになりますからね」と周囲(視聴者)にお知らせしているのです。

■サザエさんとの関係

 サザエさんとタイコさんはとても仲が良いです。これは、“サザエさん世界に根本的な揉め事などあり得ない”という法則に従ったものですが、それだけではないでしょう。おしとやかで落ち着いており、ノリスケの不始末すら完璧にフォローするタイコさんは、サザエさんの持っていない要素をたくさん持っています。
というより、二人で一つの完全な人間を形成していると言えるでしょう。しかし、完全な人間やおしとやかなタイコさんでは、戦う美少女モノで主人公はことさら不完全な存在であるのと同じく、決して主人公にはなりえないのです。少々穿った見方をすると、サザエさんがダース・ベイダーとすればタイコさんはアナキン・スカイウォーカー。二人は互いに“自身の持ち得ぬ半身”を見ており、それゆえに離れる事なく今日も磯野家で一緒にお茶を飲むのです。

【原稿作成時期の都合により、内容や表現が古い場合も御座いますがご了承下さい】

★記者:ルーデル(キャラペディア公式ライター)