水曜ドラマ「恋はdeepに」より @日本テレビ

ここへきて綾野剛の出演作が立て続いています。

綾野剛本人も認めている通り、異例の作品発表ペースです。今までの綾野剛は特にドラマ作品では作品と作品のスパンを比較的長めに取って役作りに挑んできました。

デビュー直後は映画にしてもドラマにしてもキャリアを積むために作品数が多かったのですが、2010年代に入りメインキャスト、さらに主演を務めるようになると、ドラマへの出演スパンは1年~2年の時間を意図的に空けてきました。(映画はそれほどではありませんが…)。

そんな綾野剛が前のドラマ「MIU404」』からわずか半年で連ドラ「恋はDeepに」に出演します。しかも主演作としては初のラブコメです。

その一方で映画俳優としては2021年1月公開の『ヤクザと家族The Family』がロングランになっていることに続いて、主演映画『ホムンクルス』が4月2日に劇場公開。さらに、この『ホムンクルス』は4月22日からはNETFLIXで全世界配信されることが決定しました。

そこで、このタイミングで2003年の俳優デビュー以降いつまでも“見たことがあるが無い”“既視感がない”俳優・綾野剛を振り返っていきたいと思います。

デビューは仮面ライダーの怪人!!

挑戦の人 綾野剛の魅力|いつまでも「見たことがない」が続く


学生時代に陸上選手として活躍した後にモデル・バンド活動を経て2003年の「仮面ライダー555(ファイズ)」で俳優デビューします。

今や、若手俳優の登竜門となっている仮面ライダー。平成ライダーの第一弾「仮面ライダークウガ」の主演がオダギリジョーだったことから始まり、「仮面ライダー電王」の佐藤健、「仮面ライダーW」の菅田将暉、「仮面ライダードライブ」の竹内涼真などなど主演級ビッグネームが名前を連ねます。

「仮面ライダーフォーゼ」に至っては主役ライダーが福士蒼汰で2号ライダーが吉沢亮という並びでした。そんなわけで綾野剛も王道路線のスタートをきったのかと思いきや、なんと綾野剛は「555」の中盤にキーマンとして登場する怪人役。悪役としての登場でした。
しかし、独特の静謐な雰囲気を漂わせたキャラクターは大きな注目を浴び、その後のキャリア形成に進んでいきます。

翌年には映画デビューを飾り、以降大小の役どころで様々なキャラクターを演じてきて、その出演数はすでにドラマで30本以上、映画では60本以上にのぼります。

--{ドラマの綾野剛}--

ドラマの綾野剛

挑戦の人 綾野剛の魅力|いつまでも「見たことがない」が続く

TBSドラマ「MIU404」より ©TBS

トリッキーな役どころが多いイメージですが2010年代になると硬派な作品も増え2012年の朝の連続テレビ小説「カーネーション」、大河ドラマ「八重の桜」とNHK作品にも出演。

そして2013年にレギュラー放送後、2014年にはスペシャルドラマも放映された「最高の離婚」に出演。今年の年明けに映画館の盛り上げた『花束みたいな恋をした』の坂本裕二脚本のドラマ作品。ここで、瑛太(現永山瑛太)、尾野真千子、真木よう子と共演、真木よう子の夫役を務めました。ちなみに尾野真千子とは「Mother」「カーネーション」「最高の離婚」『ヤクザと家族The Family』と要所要所で共演しているという不思議な縁があります。

同年には新垣結衣の相手役を務めた野木亜紀子脚本作品「空飛ぶ広報室」があって、その後、2015年と1017年には主演を務めた「コウノドリ」が放映、ここで星野源と初共演しています。そして2020年にはその星野源とのダブル主演で野木亜紀子脚本作品の「MIU404」が放映され大ヒット。

「MIU404」は2018年の石原ひとみ主演作品「アンナチュラル」と同一の世界観の作品でもあり、米津玄師が「アンナチュラル」に続いて主題歌を担当するなどの話題性に事欠かなないドラマとなりました。綾野剛はここでもネアカで陽性な野生児キャラという今までにないを演じました。

2003年に仮面ライダーの怪人役からスタートして以降陰のある役、幕末の大名、自衛官、クールな警察官に悪徳警官、産婦人科医、野心的な投資家、さらにはフランケンシュタインの怪物などなど、綾野剛の演じてきたキャラクターはあまりにも幅が広く“見たことがあるが無い”俳優として独自の地位を築いると言えるでしょう。そのために憑依型とかカメレオン俳優などと表現されることもあります。

ドラマの最新作は大人の王道ラブコメ

挑戦の人 綾野剛の魅力|いつまでも「見たことがない」が続く

水曜ドラマ「恋はdeepに」より @日本テレビ

2021年の春ドラマは全体としてラブコメ作品が多く鈴木亮平×吉岡里帆の「レンアイ漫画家」、川口春奈×横浜流星の「着飾る恋には理由があって」、北川景子×永山瑛太の「リコカツ」などなど話題作が並んでいます。

そんな中で大人のラブコメであり、オリジナル脚本作品でもあるのが綾野剛×石原さとみの「恋はDeepに」です。

社会現状化した「おっさんずラブ」や、昨年多部未華子×大森南朋で大ヒットした「私の家政婦ナギサさん」をヒットさせた徳尾浩司が脚本を手掛ける「恋はDeepに」は海を愛する海洋学者、渚(なぎさ)海音(みお)(石原さとみ)とマリンリゾート開発を進める会社のツンデレ御曹司の蓮田倫太郎(綾野剛)との恋愛劇です。

共演には海音の良き相談役に今田美桜が出演するほか、「逃げ恥」の大谷亮平、「MIU404」の渡邊圭祐、橋本じゅんと思わず期待してしまう名前が並んでいます。

環境保護とリゾート開発という正反対の目的を持ち、本来なら対立する立場の二人が運命的な恋に落ちる一方で海音にはある秘密が…という展開で4月14日に第一話を迎えます。すでに公式インスタグラムのフォロワーが20万人を突破するなど注目度が高まっています。

「恋はDeepに」の見どころは?



「恋はDeepに」の企画が綾野剛のもとに届いたのは「MIU404」が終わったころのこと。

元々「(演技、役者としての)幅を拡げるために次は王道のラブコメを!!」と望んでいた半面「自分に王道ラブコメはどうなんだろう?」という気持ちもあったと綾野剛ですが、原作の無いオリジナル作品であり、39歳の綾野剛と34歳の石原さとみという年代での王道ラブストーリーと言うことに新たな可能性を感じことで、前作「MIU404」からわずか半年で主演することを決めました。

これまで意図的にドラマに関しては出演スパンを空けてきた綾野剛ですが、今回はラブコメのイメージがない自分がラブコメに挑むと言うことが、常に作品が作られ続けるラブコメというジャンルにおいても意外性のある、見たことがないラブコメになるのではと意気込んでいます。

また、石原さとみとの共演ということも、出演を決めて大きな要因の一つだったとも語っています。石原さとみとしても最近はお仕事系の「アンナチュラル」「アンサングシンンデレラ」などなどのドラマが多かったのでストレートなラブストーリーは久しぶりになります。「5→9~私に越したお坊さん~」以来でしょうか?そうなるとなんと5年半ぶりですね。

これまでも“ラブ”の要素がある作品には出演してきた綾野剛ですが、ここまでの王道ラブストーリー、キラキラした作品への出演は初めてのことで、今までに使ってこなかった脳の能力を使って苦労しているようです。

--{映画の綾野剛}--

映画の綾野剛

挑戦の人 綾野剛の魅力|いつまでも「見たことがない」が続く

(C)2021「ヤクザと家族 The Family」製作委員会

硬派でクールそれでいて内面的な揺らぎを持っている。
綾野剛の俳優の一面を捕らえた表現としてこの言葉はうまくあてはまるのではないでしょうか?

近年公開された『閉鎖病棟-それぞれ朝-』『楽園』『影裏』『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』そして今年公開の『ヤクザと家族 The Family』『ホムンクルス』とそのイメージの作品が続きます。

それぞれ、感情の起伏やボリュームが違うので全く違ったキャラクターですが、不思議と並べてみると、特に映画の綾野剛は不思議なラインでつながっているような感じを抱かせることもあります。

もちろん『新宿スワン』シリーズや『パンク侍、斬られて候』などのぶっ飛んで振り切ったギャグキャラクー(「MIU404」の伊吹も同系統のキャラクターでした)も忘れ難いのですが、やはりクールで硬派な外側と揺らぐ内側を併せ持つ綾野剛は見ていてワクワクさせてくれます。

今年・2021年の映画はロングランヒットになり批評面でも高い評価を得た『ヤクザと家族The Family』がありました。2020年11月に公開された『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』に続いて高い演技力と身体能力を併せ持った綾野剛の特性がいかんなく発揮されていて、時代に置いていかれていく男たちの悲哀を体現しました。

あまり目がいきませんが綾野剛の身体能力の高さはなかなかのものです『るろうに剣心』の緋村剣心=佐藤健VS外印=綾野剛の超高速バトルは今でも語り草で、公開当時は実際の殺陣を早送りしたのではないかと疑われた程です(メイキング映像をみると実際に生でやっていることが確認できます)。



『新宿スワン』や『武曲MUKOKU』『亜人』などのアクション作品も忘れ難いものがあります。

映画の最新作はカルトコミックスの映画化、NETFLIXでの世界配信も決定

挑戦の人 綾野剛の魅力|いつまでも「見たことがない」が続く

(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ
そんな綾野剛の映画最新作は山本英夫原作のカルトコミックを映画化した『ホムンクルス』。

すでに4月2日から劇場公開されていますが、4月22日よりNETFLIXで全世界配信が決定しています。『呪怨』シリーズの生みの親として国際的にも認知されている清水崇監督作品と言うことでも注目を浴びそうなタイトルですが、本作で綾野剛は禁断の手術(頭蓋骨に穴をあけるトレパネーション)を施されたがために見えないはずのもの=ホムンクルスが見えてしまう男を体当たりで演じています。

共演には成田凌、岸井ゆきの、石井杏奈、内野聖陽と実力とツボを押さえたキャストが並び濃密な異世界を形成しています。個人的には清水崇監督作品の中でのベストワン級に楽しんだ作品でした。

原作コミックはチェックできていないのですが原作ファンからもおおむね好評で、劇場もにぎわっているようです。原作がある種のカルト作品化していたので実写映像化の発表の際には賛否の声が入り混じりましたが、見事にその声を抑えきったことになります。

これまで作品が国際的に評価されてきたことはありましたが、“俳優・綾野剛”がスポットライトを浴びることは(意外な気もしますが)これまであまりありませんでした。

しかし、今回の『ホムンクルス』のNETFLIXで配信決定で世界中にいる2億人以上のNETFLIX会員の目の前に綾野剛という俳優が現れることになります。40歳、さらには俳優デビュー20年という節目を前に大きな飛躍に繋がるかもしれませんね。



主演映画では国際的なマーケット打って出る一方で、新作ドラマでは初挑戦のラブコメディに打って出る綾野剛。これまでの俳優人生の中でもターニングポイントになりそうな時期に差し掛かっていると言えるのではないでしょうか?

はっきり言ってこの春の綾野剛は見逃し厳禁です。

(文:村松健太郎)